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【考察⑤】~センバツ甲子園の選考理由~
1月26日、今春のセンバツ甲子園大会の出場校32校が決まりました。
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2022年の選考で、東海地区(2校)で、前年の東海大会準優勝の聖隷クリストファー高(静岡)が漏れ、同大会4強の大垣日大高(岐阜)が選出された一件があり、センバツ甲子園の選考は、全国的に物議を醸しました。
春のセンバツは、勝ち抜いた都道府県の代表校が出場する夏の選手権大会とは大きく異なり、選考委員会に“選抜”してもらわなければいけません。
今回は、そのセンバツ甲子園の選考理由を私なりに考察してみようと思います。
まず最初に確認として、出場校の選考基準は以下のようになっています。
<出場校選考基準>
(1)大会開催年度高校野球大会参加者資格規定に適合したもの。
(2)日本学生野球憲章の精神に違反しないもの。
(3)校風、品位、技能とも高校野球にふさわしいもので、各都道府県高校野球連盟から推薦された候補校の中から地域的な面も加味して選出する。
(4)技能についてはその年度の新チーム結成後よりアウトオブシーズンに入るまでの試合成績ならびに実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらずその試合内容などを参考とする。
(5)本大会はあくまで予選をもたないことを特色する。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない。
投手を中心とした守備の重要性
まず、今回の選考も、東海地区で聖隷クリストファー高のときのような“逆転現象”が起こりました。
東海は選出順がポイントになった。愛知同士の決勝となり、優勝した豊川をトップで選ぶのは当然としても、2番目が4強止まりの宇治山田商(三重)だったのには驚いた。これは豊川との試合ぶりで、宇治山田商が9回2死までリードしていて互角の内容だったのに対し、愛工大名電は、4回までに8点を失ってからの追い上げで、同じ1点差でも試合内容に差があるとした。投手力や守備力でも宇治山田商が上回るとされ、2校枠であれば一昨年のような波乱につながったかもしれない。
選考委員会では「豊川高校を相手にした時の比較というところを注視した時に、検討させてもらった」と説明があった。愛工大名電は決勝で7-8、宇治山田商は5-6と豊川に1点差で敗戦。ただ、同委員会は「宇治山田商は9回までリードするなど終始互角の戦いを繰り広げた。投手力がいいですし、投手力と守備力を評価した上でそういう順番というところです」と選考理由を明かした。
今年から東海地区は3校出場できるようになったため、一昨年のような波乱にはなりませんでしたが、2校目が東海大会4強の学校、3校目が東海大会準優勝校と順番が逆転しました。
選考理由は、記事を読んでわかる通り、
「投手力と守備力を評価した上でそういう順番というところ」
と述べられています。
また、試合展開や試合の流れも重要だとわかります。
「(優勝校の)豊川との試合ぶりで、宇治山田商が9回2死までリードしていて互角の内容だったのに対し、愛工大名電は、4回までに8点を失ってからの追い上げで、同じ1点差でも試合内容に差がある」
とあるように、“7-8”とか“5-6”といった最終的な試合の結果を見て判断されるわけではなく、試合展開や試合の流れ、試合の内容まで深く見られているとわかると思います。
東海地区ではなく、別の地区を見てみても同じような評価が見られます。
6校が選抜される関東地区に関する以下の記事をご覧ください。
“最後の1枠”には中央学院が入った
第96回選抜高校野球大会の出場校が続々発表された。
3月18日に開幕する第96回選抜高校野球大会の出場校を決める選考委員会が26日、大阪市で行われ、6枠の「関東・東京」は作新学院、山梨学院、常総学院、健大高崎、関東第一、中央学院が選出された。
昨年の関東大会4強の作新学院、山梨学院、常総学院、健大高崎と東京大会優勝の関東第一の選出は確定的で、残る1枠は、関東大会8強の桐光学園や中央学院、東京大会準優勝の創価などの争いと見られていた。
関東の枠で中央学院が選出された理由について、宝馨会長は「初戦の白鴎大足利戦には10-2でコールド勝ち。準々決勝では健大高崎に3-4で敗れましたが、相手エースの佐藤投手から11安打を放ち、一時逆転する健闘も見せた。小柄な選手が多いミート力とパンチ力があり、しぶとい打者が揃っている。エースの蔵並投手も粘り強さを発揮。打力と投手力を含めた総合力が充実している」と話した。
中央学院と創価の比較については「創価高校については大変打力のあるチームだが、関東一高に負けたので、関東の5校目との比較で中央学院、創価高校のどちらかと、議論されたところ、投手力は中央学院が層が厚い、攻撃については創価が強打のチームだが決勝戦は5安打に抑え込まれ、総合力では中央学院が上回った」と説明した。
最終枠の選抜で、中央学院高と創価高を比較した際に、
「打力と投手力を含めた総合力が充実している」
「投手力は中央学院が層が厚い、攻撃については創価が強打のチームだが決勝戦は5安打に抑え込まれ、総合力では中央学院が上回った」
というように、“投手力”が高い評価を受けています。
このことは昔からそうだとは思いますが、選抜されるには、高い投手力・投手層の厚さ・堅い守備力を兼ね備えた総合力の高いチームである必要があるということを改めて感じさせられました。
21世紀枠の選考
次に、21世紀枠の選考について、見てみようと思います。
ご存じない方のために、21世紀枠の説明を載せておきます。
21世紀枠は、その名の通り、2001年に採用された。困難な練習環境を克服したり、地域貢献活動に取り組んだりと、特色ある部活動を行っている学校が対象とされ、原則として秋季都道府県大会で16強以上(加盟129校以上の地方大会は32強以上)に入ったチームから選ばれる。主に野球の戦績と実力を基に、北海道から九州まで全国8地区に振り分けられた出場枠の中に入るとされて選出されたチームとは、色合いが異なる出場校だ。
ちなみに、21世紀枠の選考基準は以下のようになっています。
<21世紀枠の選考基準>
①秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟校が129校以上の場合はベスト32以上)が対象。
②推薦例のいずれかに当てはまる学校。
▽少数部員、施設面のハンディなど
困難な環境の克服
▽学業と部活動の両立
▽数年間にわたり試合成績が良好ながら、
強豪校に惜敗するなどして
出場機会に恵まれていない
▽創意工夫した練習で成果を上げている
▽部外を含めた活動が他の生徒や地域に
良い影響を与えていること
など
21世紀枠の出場校は、今春の大会より、これまでの3校から2校へと減ることになりました。
私学の台頭で夏の選手権大会を勝ち抜くのが困難な都道府県の公立高校にとっては絶好のチャンスでもある21世紀枠も、かなり狭き門になりつつあります。
そんな21世紀枠で今春の大会に選抜されたのが別海高(北海道)と田辺高(和歌山)です。
まずは、21世紀枠の出場だとしても、甲子園で互角に戦うだけの実力が必要だということです。
次の記事をご覧ください。
「実力」にも言及された21世紀枠
ただ今回は、「実力」を重視して選んだのではないかというのが率直な感想だ。別海は北海道大会4強で、優勝した北海と8回まで1点差の接戦を演じた。田辺は県大会で市和歌山、智弁和歌山を連破し、近畿大会でも京都国際とタイブレークの熱戦だった。寶委員長も「『21世紀枠はほとんど勝てないじゃないか』という批判がある中、実力校としての評価が田辺にはあった」と話し、今後は話題性よりも実力を重視した選考に傾いていくような気がする。この枠には「出尽くした感」があり、減枠もいたしかたないように感じていたが、今回に関しては3校のままだったらとの思いが強く、千載一遇のチャンスを逃した名門進学校が気の毒でならない。
この記事を読んだところからも、大会の最終結果や試合結果だけではなく、試合展開や試合の内容まで深く見られていることがわかると思います。
また、他の面を見てみると、別海高は、最低気温-23℃にもなる厳冬のオホーツク海に面した酪農の町にあり、冬場はビニールハウスを活用した練習場でトレーニングに励む厳しい環境下で取り組んでいて、部員数も19人、そのうち選手は16人と少ないです。
一方の田辺高は1898年創部の伝統校であり、部員数が22人(選手18人)と少なく、地域清掃や寺の大掃除に10年以上参加していたり、学童チームへの野球教室を行っていたりと、地域に根差した活動をしています。
選考理由の中には「スクールカウンセラーと提携して選手との対話を重視し、一人一人を細やかにフォローする取り組み」が、伝統校にありながらこれからの時代にマッチしているというのもありました。
各地区代表の最終選考に残った9校のうち、上記の2校が選抜されたわけですが、選考に漏れた7校の中には、県大会を勝ち抜いて各地区大会にまで出場した学校や、創立120年を超える超伝統校、東大合格者を多数出すような地域の超進学校もありました。
その年に最終選考にどんな学校が残るのかによって変わってくるところはありますが、21世紀枠ができた当初の頃と比べ、近年では“実力(大会結果)”・“進学校”・“伝統校”・“話題性”・“地域貢献”・“困難な環境”などのトピックをより多く満たしているような学校でないと選抜されないようになってきたと感じます。
「進学校で準優勝しました」「伝統校で4強に入りました」といっただけでは選抜されないような時代になった気がします。
攻守交代
選考理由の中には、非常に興味深い内容も含まれていました。
それは「攻守交代」です。
以下の記事をご覧ください。
まずは、東北地区で選抜された学法石川高の記事です。
【学法石川の選出理由について・選考委員のコメント】東北大会で決勝に進んだ2チームをまず選出し、準決勝に進出した2チームから最後の1校を選びました。福島県大会3位で出場しましたが、宮城県・秋田県の1位校2校を破っての準決勝進出が高く評価されました。左腕エースの佐藤投手、捕手もつとめる大栄選手も完投できる目処が立ち、大きな収穫となりました。攻撃力は少ないチャンスを確実に得点につなげる粘りのある打線で、小技を絡めた機動力野球もできます。また、攻守交代のキビキビとした動きは好印象です。投手力、打撃力を総合的に判断し、決勝に進んだ2校につぐ力を持つとして、3校目に選ばれました。
選ばれた理由の一つが、秋の東北大会での攻守交代の際のキビキビとした動きということでしたが、意識していた部分だったんでしょうか?
「特に意識はしていなかったが、練習中は切り替えの部分を大切にしようということで常にやってきましたので、そのまま自然に出たかなと思います」
そして、次に近畿地区で選出された京都国際高の記事です。
第96回選抜高校野球大会の選考委員会が26日に大阪市内で行われ、日本高野連の宝馨会長が近畿地区選出の京都国際の〝キビキビ攻守交代〟を称賛した。
近畿大会で4強入りし、3年ぶり2度目の出場となる京都国際に宝会長は「投手力もよく、堅守もある。接戦にも強いのが持ち味」とした上で「特筆すべきこととして、攻守交代に要する時間がもっとも短い。特に近畿大会でのキビキビぶりが目にとまった。キビキビ、ハツラツプレーは高校野球の原点でもある。他校にも奨励したい気持ちもあります。近畿大会で選考委員の方が実際に計ったら、50秒を切る。1分以上かかる場合も多いのに、素早い攻守交代をしてくれていた」と選考理由の1つに上げた。
グラウンドでの全力疾走を心掛けるチームは多いが、目を見張る京都国際のキビキビぶり。同会長は「他校も見習ってほしい」と呼び掛けた。
健大高崎高が昨年選抜された際にも、
出場校決定の知らせは、今年から電話ではなく、インターネット中継での発表となった。「エースの小玉投手は気迫あふれる投球。速い攻守交代などのきびきびした動きも印象的だ」などと同校が紹介されると、加藤陽彦校長が野球部グラウンドに赴いて決定を伝えた。選手たちは表情を引き締めて一報を聞いた後、笑顔でグラウンドを走った。
とあります。
これらの昨年や今年の選考理由の中に「攻守交代のキビキビとした動き」が選考理由に含まれていることが、非常に興味深いです。
春夏ともに甲子園大会は、コールドゲームなしで9イニング行う試合を毎日3~4試合と繰り返していきます。
大会役員の方は期間中は早朝から夜遅くまで業務を続けていくわけですし、報道関係者も次の日の朝には記事を出さなければならない。
そういった運営上の理由もあると思います。
もちろん“選抜されるため”というのを目的にキビキビとした動き・行動をするのは教育の立場からしていかがなものか、と思います。
21世紀枠の選考基準にもあるような“部外の活動”や“地域への貢献”もそうです。
球児たちは“選抜されるため”という目的が一番という考えではなく、日頃から“自身の人間的な成長のため”に行動していくことが最も大切です。
学法石川高の主将のコメントにあるように、日頃から当たり前のようにやっていることが「そのまま自然に出た」というのが理想です。
ですが、目標の甲子園の出場校を選抜されている方々がそういったところまで評価しているということを知っておくことも大切だと思います。
さいごに
以上のように今春の大会を中心に選考理由を考察してきましたが、今回の内容を簡単にまとめると、
○ 投手を中心とした守備力、総合力が必要である。
○ 大会の最終的な結果や試合結果だけではなく、試合展開や流れ、試合の内容自体も重要になってくる。
○ 21世紀枠では選考していただくにふさわしいだけのトピックがより多く必要である。
○ キビキビとした行動・攻守交代も選考の重要な決め手の一つである。
といったところでしょうか。
選考には、高校野球は長きにわたって“地域に根差した”ものとして定着してきているということや、「高校野球200年構想」といった連盟や主催者側の意向も強くあると思います。
また繰り返しになりますが、毎日数試合をコールドゲームなしで進めていく運営上の理由もあると思います。
そして、今春から新基準の低反発バットへ完全に移行となります。
より、投手を中心とした守備力、総合力が求められる大会になるでしょう。
本日、大会の組み合わせ抽選会が行われ、初戦の対戦相手が決まりました。
今回の投稿の内容や新基準バット完全移行後初の大会であることも踏まえ、どのような大会になるのか、今春のセンバツ甲子園を楽しみにしています。
そして、また来年の選考もどうなるのか、来年度の秋季大会がまた楽しみです。
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センバツ甲子園
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