1月26日、今春のセンバツ甲子園大会の出場校32校が決まりました。
2022年の選考で、東海地区(2校)で、前年の東海大会準優勝の聖隷クリストファー高(静岡)が漏れ、同大会4強の大垣日大高(岐阜)が選出された一件があり、センバツ甲子園の選考は、全国的に物議を醸しました。
春のセンバツは、勝ち抜いた都道府県の代表校が出場する夏の選手権大会とは大きく異なり、選考委員会に“選抜”してもらわなければいけません。
今回は、そのセンバツ甲子園の選考理由を私なりに考察してみようと思います。
まず最初に確認として、出場校の選考基準は以下のようになっています。
投手を中心とした守備の重要性
まず、今回の選考も、東海地区で聖隷クリストファー高のときのような“逆転現象”が起こりました。
今年から東海地区は3校出場できるようになったため、一昨年のような波乱にはなりませんでしたが、2校目が東海大会4強の学校、3校目が東海大会準優勝校と順番が逆転しました。
選考理由は、記事を読んでわかる通り、
と述べられています。
また、試合展開や試合の流れも重要だとわかります。
とあるように、“7-8”とか“5-6”といった最終的な試合の結果を見て判断されるわけではなく、試合展開や試合の流れ、試合の内容まで深く見られているとわかると思います。
東海地区ではなく、別の地区を見てみても同じような評価が見られます。
6校が選抜される関東地区に関する以下の記事をご覧ください。
最終枠の選抜で、中央学院高と創価高を比較した際に、
というように、“投手力”が高い評価を受けています。
このことは昔からそうだとは思いますが、選抜されるには、高い投手力・投手層の厚さ・堅い守備力を兼ね備えた総合力の高いチームである必要があるということを改めて感じさせられました。
21世紀枠の選考
次に、21世紀枠の選考について、見てみようと思います。
ご存じない方のために、21世紀枠の説明を載せておきます。
ちなみに、21世紀枠の選考基準は以下のようになっています。
21世紀枠の出場校は、今春の大会より、これまでの3校から2校へと減ることになりました。
私学の台頭で夏の選手権大会を勝ち抜くのが困難な都道府県の公立高校にとっては絶好のチャンスでもある21世紀枠も、かなり狭き門になりつつあります。
そんな21世紀枠で今春の大会に選抜されたのが別海高(北海道)と田辺高(和歌山)です。
まずは、21世紀枠の出場だとしても、甲子園で互角に戦うだけの実力が必要だということです。
次の記事をご覧ください。
この記事を読んだところからも、大会の最終結果や試合結果だけではなく、試合展開や試合の内容まで深く見られていることがわかると思います。
また、他の面を見てみると、別海高は、最低気温-23℃にもなる厳冬のオホーツク海に面した酪農の町にあり、冬場はビニールハウスを活用した練習場でトレーニングに励む厳しい環境下で取り組んでいて、部員数も19人、そのうち選手は16人と少ないです。
一方の田辺高は1898年創部の伝統校であり、部員数が22人(選手18人)と少なく、地域清掃や寺の大掃除に10年以上参加していたり、学童チームへの野球教室を行っていたりと、地域に根差した活動をしています。
選考理由の中には「スクールカウンセラーと提携して選手との対話を重視し、一人一人を細やかにフォローする取り組み」が、伝統校にありながらこれからの時代にマッチしているというのもありました。
各地区代表の最終選考に残った9校のうち、上記の2校が選抜されたわけですが、選考に漏れた7校の中には、県大会を勝ち抜いて各地区大会にまで出場した学校や、創立120年を超える超伝統校、東大合格者を多数出すような地域の超進学校もありました。
その年に最終選考にどんな学校が残るのかによって変わってくるところはありますが、21世紀枠ができた当初の頃と比べ、近年では“実力(大会結果)”・“進学校”・“伝統校”・“話題性”・“地域貢献”・“困難な環境”などのトピックをより多く満たしているような学校でないと選抜されないようになってきたと感じます。
「進学校で準優勝しました」「伝統校で4強に入りました」といっただけでは選抜されないような時代になった気がします。
攻守交代
選考理由の中には、非常に興味深い内容も含まれていました。
それは「攻守交代」です。
以下の記事をご覧ください。
まずは、東北地区で選抜された学法石川高の記事です。
そして、次に近畿地区で選出された京都国際高の記事です。
健大高崎高が昨年選抜された際にも、
とあります。
これらの昨年や今年の選考理由の中に「攻守交代のキビキビとした動き」が選考理由に含まれていることが、非常に興味深いです。
春夏ともに甲子園大会は、コールドゲームなしで9イニング行う試合を毎日3~4試合と繰り返していきます。
大会役員の方は期間中は早朝から夜遅くまで業務を続けていくわけですし、報道関係者も次の日の朝には記事を出さなければならない。
そういった運営上の理由もあると思います。
もちろん“選抜されるため”というのを目的にキビキビとした動き・行動をするのは教育の立場からしていかがなものか、と思います。
21世紀枠の選考基準にもあるような“部外の活動”や“地域への貢献”もそうです。
球児たちは“選抜されるため”という目的が一番という考えではなく、日頃から“自身の人間的な成長のため”に行動していくことが最も大切です。
学法石川高の主将のコメントにあるように、日頃から当たり前のようにやっていることが「そのまま自然に出た」というのが理想です。
ですが、目標の甲子園の出場校を選抜されている方々がそういったところまで評価しているということを知っておくことも大切だと思います。
さいごに
以上のように今春の大会を中心に選考理由を考察してきましたが、今回の内容を簡単にまとめると、
○ 投手を中心とした守備力、総合力が必要である。
○ 大会の最終的な結果や試合結果だけではなく、試合展開や流れ、試合の内容自体も重要になってくる。
○ 21世紀枠では選考していただくにふさわしいだけのトピックがより多く必要である。
○ キビキビとした行動・攻守交代も選考の重要な決め手の一つである。
といったところでしょうか。
選考には、高校野球は長きにわたって“地域に根差した”ものとして定着してきているということや、「高校野球200年構想」といった連盟や主催者側の意向も強くあると思います。
また繰り返しになりますが、毎日数試合をコールドゲームなしで進めていく運営上の理由もあると思います。
そして、今春から新基準の低反発バットへ完全に移行となります。
より、投手を中心とした守備力、総合力が求められる大会になるでしょう。
本日、大会の組み合わせ抽選会が行われ、初戦の対戦相手が決まりました。
今回の投稿の内容や新基準バット完全移行後初の大会であることも踏まえ、どのような大会になるのか、今春のセンバツ甲子園を楽しみにしています。
そして、また来年の選考もどうなるのか、来年度の秋季大会がまた楽しみです。