人からもらった情報を、ありがたがって記事化するな:ソーシャルメディアラボの記事作り

私は2015年9月から、ずっと「ソーシャルメディアラボ」の運営に携わってきた。

この記事では現在新卒2年目の私が、編集者として会社内外で学んだことを振り返ってみる。

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同年12月にサイトをリニューアルし、メディアミッションを見直し、カスタマージャーニーを改めて敷いた。

ソーシャルメディアに触れることになった企業の広報担当者さん、マーケターさんをどうやったら助けられるのか。当時は暗中模索だった。


▲入社式の時にも、編集業務のことを喋っていた


”人から貰った情報を、ありがたがって記事化してるんじゃダメだ”

後述するが、これはお世話になっている方から頂いた叱咤激励の言葉である。


■■検索ニーズと付加価値を考える


カスタマージャーニーを作ったことで「アテ」ができた。後はコンテンツだった。

直属上司の大久保さんはコンテンツマーケやSEOについて、当時大学生でくそ生意気な私に、丁寧に分かりやすく教えてくださった。

SEOを少しずつ覚えた私。手始めに、運用を検討中の企業担当者の方が、上司に効果説得するために必要なデータ記事を作った。

検索語で言えば、「SNS 利用者」とか「SNS 効果」とか「SNS 使い分け」とかだ。

私が大学4年生の時には、二人の大学3年生をインターンに迎えた。

そこで私は大久保さんから教わったばかりの知識を偉そうに共有して、皆で記事作りに励んだ。

作図が得意な外部アシスタントさんに助けられ、面倒臭いけど絶対に知りたい人がいそうな記事を量産していた。

ステップは、単純だった。

・関連語取得ツールやキーワードプランナーで検索語を確認する
・ラボとして出すべきか、どういう記事なら役に立つか検討する
・文章や図、イラストを実際にアウトプットする

たとえば「LINE 投稿 時間」という語の検索ボリュームが一定あったとき。

担当者の方は同業界や周辺業界アカウントの投稿時間の平均とか、おおよそ目安となるデータが見たいだろうと思った。

そこで、LINEアプリを開いて、ジャンル別に表示されていた企業すべてを一覧化して、数か月定点観測した投稿時間の結果をまとめることにした。

たしかに定点観測と作図、記事執筆は、全部で相当なコストだった。

しかし結果として、「SNSに困る企業担当者のためのお役立ち情報をくれる」というブランディングは少なからずできたと思っているし、お問い合わせも来るようになった。


■■現場の「知りたい」を全部記事にする

弊社はSNSコンサルティングを提供している。そのため、コンサルタントがクライアント企業の担当者さんの悩みと向き合っている。

そこで「先方の担当者さんから、こういう悩みが来た」とか。営業のメンバーから「初めての提案で、こういう数字を出してもらえると刺さりそう」とか。

現場のニーズがネタになると分かった。

そこでFacebookグループとChatworkに、質問部屋や気になるニュース共有部屋を作った。社内の編集者として、皆から話を拾ってコンテンツ化するようになった。

・現場で働くメンバーの声を聴く機会を設ける
・それを持ち帰り、検索語をチェックしながら記事骨子を作る
・記事や資料ができたらメンバーに送る (→クライアントに届く)

これを愚直に続けたことで、「またその質問?」というやり取りのコストが激減した。

メンバー内で記事や資料のURLをぶん投げて、「ここ見ればおk」というコミュニケーションが出てくるようになった。

▲Q&A記事のなかには、コンサルの疑問から生まれたものが多い


■■自分も現場に出て、頭と手を動かす決意

ブランディングにも、お問い合わせ数増加にも、社内の知識向上にも貢献した。

自分たちだけでは書けない情報を収集するために、媒体社やツールベンダーさんとの取材も行き、下手くそなりに熟せるようになった。

同メディアの編集長に抜擢された社会人2年目の春。私は天狗になっていたのかもしれない。

ご縁があって、他社の執行役員の方とランチをご一緒させていただいていたときだった。

「人から貰った情報を、ありがたがって記事化してるんじゃダメだ。」
「事例探しなんて本質的ではない。再現性あるとは言えない。」
「本当に君がマーケターなら自分で試して、自分のロジックで説明できるようにしろよ。」

おしっこが漏れそうになった。本当に甘かったと猛省した。

編集部にいれば、市場全体の検索ニーズに注目するし、関節的にはコンサルタント(現場、目の前の顧客)から情報を仕入れられると思い込んでいた。

「私は現場に出て、自分の頭で考えたことあったっけ。」

世の中のコンサルタントの人が、クライアントの予算と期待効果のせめぎあいの中で、泥沼の社内折衝を行うためのロジックを練り上げては跳ねのけられ、検討に検討を重ねて、やっとできあがった結晶。

そんな事例の表面だけをなぞって、自分はSNS情報のメディア運営者なんて名乗ってていいのか。

言い返す言葉もなかった私は、情けなくなった。

同時に、そろそろ自分もクライアントの前に出て、現場の空気を吸って来なきゃだめだと痛感した。私は翌月から、コンサルタントを兼業することになった。

今は提案した(しようとしている)企画を抽象化して記事化したり、実際に案件で成功した施策を弊社の媒体でもテストしてその結果を記事にしようと色々もがいている。


■■最後に:マーケティングに紋切型の答えはない

方向性が逸れることを覚悟して、書きたいことがある。

企業のSNSマーケティングのコンサルタントになって、数か月がたった。

私はとある革製品メーカーのInstagramの運用を担当した。間には某大手代理店が入っていて、弊社は下請けだった。

短い間のスポット発注だったが、ブランディング目的で運用依頼があった。クリエイティブを代理店と一緒に作り、弊社が投稿代行して、広告を打ったりした。

案件自体は無事に終わった。私はそのブランドに興味が沸いたので、実費を切って工場見学ツアーに参加することに。

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…驚いた。

狭い工場に何十人もの職人さんがいて、大量の工程を製品が通過している。

形が出来上がった製品を、通常業務を終わった営業さんが手磨きして箱に詰めて発送する。

そのメーカーは製品に外国産の上質な革を使っていて原価も高いに違いない。また、あれだけ職人とマシンが間に入ればコストもかかってくる。広告宣伝費を出すのも絶対に厳しい。

「こんな中で、私たちに仕事を発注してくれていたんだ……」

そこのInstagram運用は、残念ながら投稿頻度が落ちて、エンゲージメントも下がっていた。

工場見学後に、私はご担当者に話をしに行った。

「やって頂けていた時は助かったけど、やっぱり自分たちじゃ手が回らなくってね。続かないね。」と寂しそうに笑っていた。

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当たり前だけど、大事だと思ったこと。

SNSのマーケティングコンサルタントはクライアント企業にSNSの提案をするとき、マーケティング視点で、もっと言えば経営視点で、戦略を考えて提示しなきゃだめなのだ。

そこにSNSの先行事例とか、「SNSを使うことが前提となった近視眼的な施策」の話は本質的ではない。

たとえば中長期的なブランディングが目的なら、ご発注いただいた金額でデジタルカメラを買ってもらい、私がスタッフの方に投稿フォーマットを用意してレクチャーを行ったり、

検索流入を見込めて、資産になりやすいホームページのコンテンツを仕込んだりした方が、短期的な運用代行よりもパフォーマンス出せたんじゃないか。

代理店から頂いた仕事でありハンドリングできない部分ではあったが、あの時のことを考えると非常にもやもやする。

私はメディアの編集職から入ったけど、コンサルタントとして現場に出て分かったことが、わずかな期間でも既にごろごろある。

サポートしてくれた方、いつでも靴を磨かれに来てください。