遠州鉄道のトラブルから学ぶ「残高不足」の対応法

ご無沙汰してます。

最近気になるお話。

降車時にICカードの残高不足が発覚した子どもに謝罪を強要し、その後、その子どもは炎天下の中、徒歩で2時間かけて帰ったとのこと。

これについて個人的に思うことがあるので、今回はこれについて書いていこうと思います。

そもそも誰が悪いのか?

結論から先に出すと「どちらにも非がある」。
子ども(というより親御さん)と運転手、どちらも悪いところがあった。
でもビジネス的に不適切なのが遠州鉄道の運転手だった、というだけで。

運転手さんの「不適切接客」

運転手さんの不適切な点はイレギュラー対応のやり方。
体格が自分より小さく、年齢も若い子どもの顎を上げて(力を行使して)謝罪させたのが間違いだった。
学校の先生だったら不適切指導体罰と言われるものですね。

客が乗務員に威圧的な行為をするのはカスハラだけど、こういう不適切接客は何というのだろう。
便宜上ここでは逆カスハラという形にしておこう。

おそらくここから子どもが2時間かけて歩いて帰る羽目になったのはこの逆カスハラで萎縮してバスに乗れなくなったのでは?と推測する。

事件が起こりうる背景

後払い方式のデメリット

公共交通機関の中でも先払い・後払いがあるが、大半のバスは後払い方式のものが多い。
バスのメリットといえば、電車より目的地の近くまで旅客を運べるということである。
特に体力がなく、車を運転する能力のない(もしくは返納している)子どもやお年寄りにはうってつけの交通手段だ。
尤も一部の長距離バスや都会にある均一運賃の区間などは先払いをしているところもあるだろうが、地方であるとほぼ後払い方式だ。

この後払い方式のデメリットは残高不足が起こり得ることである。
特にバスはICカードへのチャージや札の両替が千円札のみとかいう誰得仕様である。

そこに残高不足でしたがお金持ってませんというトラブルが起きるのは必然的であるだろう。

大人ならまだしも、小学生が日頃から千円札を持ち歩いているということはまず考えにくい。東京圏、関西圏の電車で学校や塾に通ってる小学生でもあまり居ないのではないか。
ましては静岡県となれば…おそらく小学生が千円札を持ち歩いてる可能性は非常に低いだろう。

オートチャージがあるじゃないかという声もあるだろうが、子ども用のICカードをオートチャージにすることはデメリットしかない

オートチャージのデメリット

Suicaなどの交通系ICは、先にお金をチャージしておいてから、タッチすることでチャージした金額から支払いが完了するというシステムである。
要するにカード一枚が小さなお財布になっているということである。

その「小さなお財布」にお金がちゃんと入っているように(=残高が不足しないように)銀行口座やクレジットから自動的にチャージできるようにしましょうね、というシステムがオートチャージである。
大人が使うぶんには残高不足に悩まされないという最高のメリットを享受できる至高のシステムである。

だが、これを子どもに使わせるのは非常に危険だと私は考える。
金銭教育上良くないのもそうだが、私は発達上オートチャージは「使わせられない」と考える。

子どもの発達を考えるにおいて、「見えないお金」への認識が未熟であるからだ。

特に子どもは見えないものに対する認識が不足している。
「親のカードでオンラインゲームに多額の課金をしてしまう」「電子マネーをピッとすればお金はいらないと発言する」…このような勘違いは見えないものへの認識ができないがために起こるトラブルである。

子どもの頃に現金を使っていた大人からしたらそんなわけ無いじゃん!と思うかもしれないが、現金を見る機会の少ない子どもはお金が減る、カードで買えるものは限られているという感覚が想像できないというのもありうる話である。

そんな金銭感覚が未熟な子どもにオートチャージなんか怖くて使わせられない
まずは見えるお金(=現金)を用いて金銭教育をしっかりすべきである。
そこから世の中には見えないお金があってね、という話に持っていって、電子マネーやクレジットカードの教育をしていくべきである。
そこまでしてから初めて交通系ICカードを持たせるべきである。

残高不足への適切な接客は?

これを踏まえて、運転手はどう対応すべきだったか。
子ども側の背景は以下の通りであると想定する。

・ICカードの残高が不足している
・お金は持っていない

そういうお客に会った場合、どう対策すべきなのか?

大人の場合は、千円チャージして終了。
お札がない、もしくは大きいお札しかないなら今度払ってねで終わる。
認知症っぽい高齢者なら警察に通報というのも選択肢に入る。

子どもならどうするか?

周りの乗客なり運転手なりが機転を利かせてその場で立て替えるのが最適解なのかもしれない。
だが今は乗客がそれをやると声掛け案件とか言われるご時世だ。
運転手側で身銭を切ってしてもいいのではないか?
ましては子ども相手なら「お金を払っておくから、今度親御さんと返しにきてね」「乗換はどこまで行くの?そこまでのお金も貸すよ」くらいできないのか?

…と提案した私はここで疑問に思う。

この考えはあまりにも図々しいのではないか。

子どもだからって優しさを出すのが許されるのかと。
前はやってくれたじゃん!というクソ親が出てくるのではないか。
子どもの残高不足は、故意や過失を問わずして親が責任を持って払うべきではないだろうか。

私からの「提案」

まず、大人子ども問わずバスの運賃を今度払ってねでなあなあにするのはもうやめないか。
なあなあにされると罪悪感を感じるし、バス会社側も踏み倒されるリスクがあるだろう。

引換券みたいな感じで残高不足証明書を作って、金額を運転手側で書いて、客には住所氏名を書いてもらう。
乗り換えが必要なら乗り換え前に書いた証明書の金額に加算する。
記名式のICカードは券番を控えて営業所で個人情報を照合する。
控えは運転手側で持っておいて、●ヶ月後まで来なかったら警察に通報するで良いのではないか。

それくらいすれば、バスの運賃を踏み倒されるリスクも減るのではないだろうか。
バスもだけれど、交通機関はあくまでも私企業。私企業なら、営利を目的として当たり前なのだ。
営利に反する客は不要だし、交通機関で言えば営利を貪る赤字路線は不要なのである。

…だからといって、不適切接客をしていいという理由にはならないが。

親御さんの適切な対応は?

そしてここで忘れてはならないのは保護者の責任である。
確かに運転手の接客は不適切だった。不適切な接客に萎縮して炎天下の中2時間歩いた子どもの肉体的、精神的ダメージも甚大なものである。

ただ、ここで責任を追及すべきなのは、遠鉄バスの運転手だけではない。
小学生にICカードを持たせておいて残高確認を怠った保護者にもある。

定期を持っているとはいえ、残高が全く減らないとは限らない乗り過ごし期限切れで残高が減るリスクはある。
もしくは熱中症対策で自販機でお茶やジュースを買えるように少し多めに入れておくというのも1つの手である。

そして、今はスマホでICカードの利用状況を確認できる。
なんで小学生にICカードを渡しておいて全く利用状況を確認していなかったのか。
定期的に残高の確認をしておけば、もっと早く残高不足を知ることができたのではないか。
「監視しろ」とは言わない。子どもの利用状況をある程度把握して、この金額の引かれ方不自然だな、とかアンテナを張ることはできなかったのか?

残高不足を親が把握しておけば、子どもが残高不足を運転手に詰められることも、萎縮して炎天下の中2時間も歩くこともなかったのではないか?

運転手だけではなくて保護者にも責任はある。
ただし、子どもに罪はない。
これが私の結論である。

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