「さなコン2」ファイナリスト全感想

第2回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト、略称「さなコン2」の選考結果が8月15日に発表されました。

https://www.fanbox.cc/@sfwj/posts/4232820

前回にも増して、カオスな(失礼!)、SFとしか言いようのない、そして間違いなくハイレベルの作品がみっしり。堪能しました! 入賞されたayaさん、かなこさん、nekosanさん、ながはまさん、レニィさん、おめでとうございます! 傍目から見てもちょっと気の遠くなるような激務を完走された、「さなコン2」の中の人の皆様、ありがとうございました!

こういうのもっと読みたい、ファイナリストはもっと讃えられてしかるべき、と感じられたので、「一人後夜祭」も兼ね、最終候補作全作品の感想をアップします。各作品に付けさせていただいた感想を束ねたものです。およそ客観性のある代物ではありませんので、何卒ご容赦のほどを。
一次通過作品や、惜しくも選に漏れた作品とも、すばらしい作品との出会いがいくつもありました。力不足で感想をまとめるに至っていませんが、こちらもいつか、何とかしたいな。

【最終候補作感想】

マラカス 環(わ)
宇宙的破局が増幅する、ヒリヒリするような強烈な感情。こうなるしかなかったのだろうふたり。彩度の高い描写に心を揺さぶられました!

かなこ 忘れ形見と葬送
ヒトが裁かれる話は多いけれど、裁いた側には何が起きるのか。いぬ改めねこ、の素朴な語りが胸に迫ります。いぬもねこも、こんな風にヒトのことを思ってくれているといいな。

木口まこと 春分の月
ハードSF的抒情、を強く感じました。ディープな奇想と生活感。なんというか、風通しのいい感じ。ラストシーンが素晴らしかったです!

燕雀 世界史の晩火
世界の物語と、語られる世界。ガジェットを一切使わない、ストイックで重厚なシミュレーション世界仮説の物語。リスボンの雰囲気がすばらしい。ボルヘスが読んでみたくなりました。

サクラクロニクル Wasted Days
避け得ない破局を前に、ひときわ輝く「二人」の思い。失われるからこそ得られる心の成就。だが、……いや、だからこそ!
二大AIに問う。これは「例外事象」ではないか? いま一つの奇跡を適用すべき時ではないのか。
贅言失礼しました。切ない、愛おしい物語でした。AIの愛って、いいですよね。

ながはま ニッパー、答えは聴こえたかい
擬人化を徹底的に排して緻密に描かれるからこそ浮かび上がる、人類の命運を託された機械知性たちの健気さ、一途さ。ご主人が目覚めることはもうないのに。「犬SF」の名品として讃えたいと思います。タイトルが効いていました。

燕雀 最期のすし
「銀河団文明」という言葉が出てきたところでなんだか無性に楽しくなり、igavpa!のニギリの描写に圧倒されました。なぜに五芒星。心に染みるところもあり、しかし読み終わってみると何もかもが変(すごく誉めてます!)。とっても愉快でした。ありがとうございました!

四宮ずかん モモちゃん
ヒトとしか思えない外見とメンタリティを持つ、しかし自らを人類とは思っていない謎の語り手。そして、無垢なようでいてひとたび悪意を向けられると凄まじい攻撃性で応じる、復元された超常の子供たち。一見ゆるいタイトルも、読み終わってみると恐ろしい。鮮やかに、爽やかに怖いお話でした。

レニィ 
余命の限りを地球環境再生に燃やすオリーブの切ない願い、そして、その思いを引き継ぐ翔吾の意地と意志が眩しい。鳩とオリーブは平和の象徴だといいます。夏にこのお話を読めてよかった。ありがとうございました。

さく 奥様の食卓
信頼できない語り手、二転三転する現実。そして、「あらすじ」さえもが……!
円環構造が小気味良い。炎暑に相応しい、少なからず怖いお話でした。やはりここは万年筆、ですよね。

嶌田あき 移眠の子
細かな考証をガッチリ固めてから繰り出される大技。まさかこう来るとは、と虚を突かれました! この課題文にして、この「ぽかぽか」さ。若さ尊し。

森村カエ 灼熱の赤い花
悪夢のような、有り得ない事態。それがやがて日常となり、しかし失われた事物の疼きは決して消えることがない。この感覚は確かに知っている、そんなことを思いました。弱いからこそ強い、真莉の揺るぎない「正しさ」が印象深かったです。

デルヘッジ 人類最後の孤独
抑制的だがツボを押さえた設定で描かれる、究極の孤独。課題文の真正面の解釈に唸りました。ルシアの生涯は、幸福だったのだろうか?

魚崎 依知子 まばゆい地獄
意表を突く結末も見事なのですが、異常な事態と最大限のコントラストをなす健全中庸な常識人、に見えて、実は鋭い主人公の存在感がすばらしかったです!

十三不塔 移眠の夏
切ない、やるせない話のはずなのに、非常に透明度の高い、何かが見渡せたような感覚が残りました。少年とサルーの旅は、どこに、何にたどり着いたのか。しばらく考えてみたいと思います。ありがとうございました。

うぉーけん  I'm Nobody! Who are you?
端整な文章がブーストする異様な世界。酸鼻を極める汚穢に重ね合わされた繊細な美、蛆と蝿が織りなす集合知のシンギュラリティ。最後まで目を離させない迫力がありました!

DMV 睡眠買取員
最初はひっそり、やがてどっぷり。侵略者もまた犠牲者であった、というMLM的地獄絵図、サブスクリプションの極限に戦慄しました! 気をつけよう、ホント。

雨露山鳥 或世界誕生
炭素繊維を紡ぐクモ、クマムシの量子もつれ、知恵熱ならぬ知恵冷却! 実に素晴らしい。凄まじいスケールの奇想と、淡々とした語り口のミスマッチの妙、それがラストで熱く弾ける。うん。知性体たるもの、こうでなくっちゃね!

珠宮フジ子 わたしのお母さん
世界五分前仮説にからめた壮大な奇想と、確かな手触りを備えた主人公の生涯の、とてつもないギャップ。一見無茶な、しかし、すっと腑に落ちる結末。世界という不条理に全力で抗う主人公に強く共感しました。

遠野しま 奇想天外/起草転概
さらっと語られる無茶苦茶な未来史がすばらしい。ほんわかブラックな語りを堪能しました。そして物語は出発点へ。なんだかフレドリック・ブラウンが読みたくなってきました。

冬寂ましろ 寝ているうちにそこへ着いてたってこと、あるでしょ?
もっちんとあーちゃんの瑞々しい交流と、人類超進化のビジョン。その二つが、しっくりと、まるでそうなるのが当たり前であるかのように融合し、螺旋状に階層を駆けのぼる。凄いものを見た、という強い感覚が残りました……。

aya 化けタヌキは眠らない
人を喰った冒頭から、人外たちの暗躍、清美の奮闘、と、全編これ愉快。生き生きとした清美の語りが最高でした! いざという時のために、タヌキには親切にしようと思います。

nekosan 武林秘史 如夢令
武侠ヒロインの危機を皮切りに、悪の魔人、集合無意識の達人、外なる神、果ては「第五世代」まで! 熱血伝奇、マルチバース、かつ「物語についての物語」。なんと贅沢な。幕切れも余韻が深い。堪能しました!

【付記】
いま一度、この素敵なイベントに参加されたすべての方、および、運営してくださった日本SF作家クラブの皆様に感謝します。これからの一年、世界がますますSFでありますように。


<リンク集>
【さなコン2公式】
・一次選考通過リスト
https://www.fanbox.cc/@sfwj/posts/3970177

・二次選考通過リスト
https://www.fanbox.cc/@sfwj/posts/4090629

・総評
https://www.fanbox.cc/@sfwj/posts/4232844

・一次および二次フィードバックコメントシート
https://www.fanbox.cc/@sfwj/posts/4232850


【トーヤさんの最終候補作メモ】
https://twitter.com/tooya39319792/status/1551079180502151169?s=21

【サクラクロニクルさんの「さなコン2の感想」シリーズ】
https://note.com/sakura_chronicle/m/m3cf647fb3801

【辻井豊さんの「読んだ作品リスト」】
https://twitter.com/yutakatsujii/status/1556571649163804674?s=12

以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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