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哲学対話をワークショップ化する企み レポ

 はじめに


 今年の5月から3か月、私は青学の社会人大学に通い、ワークショップデザインというものを学びました。
 その結果、私が今まで参加、または主催したことのある哲学対話は、ワークショップデザイン的には、とってもざっくりしたプログラムである。ということがわかりました。
 そもそも、哲学対話の定義がはっきりしておらず、主催者の意向によって哲学対話の目的や手法が異なるので、もしかしたら、ざっくりしていない哲学対話の場も既にあるのかもしれませんし、大きな問いかけをすることが哲学対話の醍醐味だというご意見もあると思います。
 さて、ここで言う「ざっくりしたプログラムってどんなこと?」をご説明します。ほとんどの哲学対話では、対話するテーマを決めて話し始めますが、たいがいは「では、〇〇とは何だろうか、についてご意見ある方いらっしゃいますか」という大きな問いかけではじまります。それから1時間弱位(時間は私の主催する場において。場によって、それぞれ時間は異なると思います)の対話が始まります。対話の中で、自分の経験の振り返りや、テーマとなっている言葉の定義などを考え、思い浮かんだことを発言していく形です。だんだんと経験を思い出し、だんだんと考えが整理されてきて、発言に繋がったり、他者の意見に違和感を覚えたりします。この、大きな問いかけからだんだんと考えを整理していくことが哲学対話の醍醐味だというご意見もあると思います。
 でも、この流れは、なんだかとっても不親切で、足場かけがないな、と思うのです。普段から哲学対話に親しんでいる方は、大きな問いかけでも違和感なく楽しめるかもしれませんが、初めて参加する方や、多くの人(5人くらいだとしても)の前で自分の考えを言うことに抵抗のある方には、急に問いかけられて戸惑う、ということがあるのではないか、と思っています。また、主催者の立場からは、テーマが決まっている場合に事前に自分の考えを整理して参加している方と、そうでない方とでは、テーマに対する深度が異なるので、そのギャップを埋めたいという気持ちもあります。

 そこで、今回、「哲学対話をワークショップ化する企て」を実験的に行ってみました。私の学んだワークショップデザインの足場かけの要素を加え、哲学対話をスモールステップに分けることで、参加者が発言しやすくなったり、考えが深まったりするのではないかという仮説を立て、プログラムデザインしてみました。

今回考えた仮説検証プログラム

【テーマ「どうして人は応援するのか」 参加者10名 所要時間3時間】
(1)導入・自己紹介
(2)個人ワーク 自分の応援経験をワークシートに書く
(3)隣の人と、ペアで自分の応援経験をシェア
(4)お互いに今聞いた話を全員に他己紹介
休憩
(5)対話の問いだし、問い決め(全員で)
(6)対話の説明
(7)対話(全員で)
(8)個人ワーク 振り返りシート・持ち帰り用カードの記入
(9)対話の感想を全員にシェア
休憩
(10)個人ワーク プログラムについて、良かった点・イマイチだった点を色分けしてふせんに記入し、ホワイトボードに貼る
(11)ホワイトボードに貼ったふせんを場面ごとに全員で振り返り
(12)アンケート記入と全体の感想を全員にシェア


検証の結果、明らかになったこと

(1)対話の時間が短いと、考えが深まらない
 当たり前のことですが、対話の時間を十分に取らないと、お互いの考えが深まりません。今回のプログラムでは、対話の時間は30分でした。対話の前の問い出しに時間がかかったことと、対話のあとも振り返りの時間があるため、メインの対話に充てる時間が短くなってしまいました。このことは、参加者からのふせんでも改善点として複数の方が挙げていました。次回は50分は取りたいと思っています。
(2)最初に個人ワークとして、自分の経験を振り返り、ペアで共有し、さらにお互いを紹介し合うワークは概ね好評
 自分の経験を振り返ることは、入り口としていい。というご意見や、他己紹介がよかったというご意見をいただきました。
(3)メイン対話のあとの個人ワークでの振り返りシートの記入と、持ち帰りカードの記入は概ね好評
 振り返りシートの項目が細かくて、難しかったというご意見はありましたが、私は、自分の気持ちや考えが整理するツールとして振り返りシートは有用だと思っているので、次回も使いたいと思っています。持ち帰りカードは、「今日の発見は〇〇だ!」ということをカードに書いて持ち帰り、家でも思い出してもらおうという意図で今回お配りしました。
(4)ふせんに書くのは良い
 ふせんの方が意見が書きやすいという声がありました。また、問い出しの時にふせんを活用するといいのでは、というアイデアもいただきました。次回の問い出しの際に取り入れたいと思います。

検証結果を踏まえて、次回は?

次回は、今回の結果を活かして、対話の時間を長く取りつつも、個人ワークのワークシート記入やふせんワークも引き続き活用していく予定です。
予想より早く終わった場面や、時間がかかった場面が明らかになったので時間を組みなおして、3時間くらいでまた企てる予定です。

今回ご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました!

今回は、そもそもの目的である「対話が深まり、自己理解や他者理解が進んで学びや発見がある」という状態には至らなかったので、次回はその状態に近づけるよう、準備してまいります!

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