エースコンバットシリーズ。

少なくとも私のゲーム人生の中では龍が如くシリーズ、小島監督シリーズと並んでリアルタイムでプレイしてなおかつ愛着深いシリーズがエースコンバットシリーズです。

・はじめに。『ストレンジリアル』とは?

エースコンバットシリーズのキーワードともいえるのが『ストレンジリアル』という世界観です。ストレンジリアルというのは全く架空の地球で国家や大陸などすべてがパラレルの創作されたもので、ここまでは異世界のパラレルワールドですが、ここに地理や国家の歴史など緻密な要素がきっちりと練り込まれており、緯度や経度、兵器の立地の意義や作戦時間の意味など、すべてにちゃんと意味づけがされているまさに『リアル』な架空世界です。エースコンバット世界はほとんどの場合このストレンジリアル世界にて物語が進行します。そのため現実の国は一部シリーズを除くと出てくることはありません。唯一現実に存在する戦闘機のみがリアルと共有されています。

その前提を踏まえた上でシリーズを振り返ってみましょう。

・エースコンバット1(1995)

幼少期、PS1を入手した自分がプレイしたゲームの1つがエースコンバット1でした。いわゆるフライトシミュレータでいえば、パイロットになろうや、サイドワインダーシリーズもあったのですが、エースコンバットシリーズは操作性のリアリティよりも快適さに身を置いていてフライトシューティングゲームといった具合でした。当時はストレンジリアルの設定も練られておらず、今でいう所のユージア大陸で起きたクーデターというだけの前情報でスカーフェイス隊として戦うことになりました。

今回の鳥枠(大型ボス)は名前はありませんが巨大な空中要塞で、ラスボスを務めます。のちのエースコンバットZEROのフレスベルグ(XB-O)に似た見た目をしていますがベルカから技術が出たとかそういう情報も今のところ聴いていません。

・エースコンバット2(1997)

1の要素を進化させ、今でも名作と名高いソフトです。エースコンバットシリーズの04以降のシリーズにおける音楽を担当されている小林啓樹さんは、このエースコンバット2の音楽に影響を受けた結果シリーズの音楽を担当されるに至ったそうです。実際本作は音楽面がとても目立っており、ジャンルを問わないフュージョンからロック、エスニック、どんなジャンルもありで、当時のPSの音楽の中でも制限された容量の中からよくぞこれほどの楽曲がたくさん排出されたと思うほどでした。グラフィックも進化し、テクスチャなども細やかに、そして最終任務でのメガリスに似た要塞や、AIライバル部隊であるZ.O.E部隊が最後はのちのADF-01『ファルケン』で敵対してくるなど、のちの世界観と繋がってくる部分があります。

今回の鳥枠は先にも述べましたメガリスに似た要塞です。

・エースコンバット3(1999)

先のZ.O.Eのファルケンに影響を受けたのか、時代を跳躍して未来の物語としてアニメーションなどを盛り込みシナリオ重視・マルチエンディングシステムを導入したのがSF路線のエースコンバット3です。今となっては肯定的な評価が多いですが当時は困惑している人が多かった気がします。また、シリーズでもかなりの長尺の物語です。戦闘機も架空機がメインとなりFALKENで使用されていたコフィンシステムなどがほぼ一般的に普及されていたり、HUDの表示なんかも近未来的でした。

今回の鳥枠はX-49『ナイトレーベン』でしょう。見た目は羽に隙間を開けたブーメランみたいな見た目で不思議な形をするというか、そこに挟まる勇敢なパイロットがいたりするのですが、まあともあれ、近未来を舞台にしたゲームならではのデザインと機動性でした。

・エースコンバット04(2001)

PS2での初のエースコンバットであり、ここから5、ZEROと三部作が復刻不可能な今でも高い人気を誇るタイトルです。また、この作品から本格的にストレンジリアルを意識した作風となります。というのも、本作は前世紀末に世界の各地に『ユリシーズ』と呼ばれる小隕石が各地に落下し、各国のパワーバランスが崩壊したことによる損害が大きかった国と小さかった国の貧富の差などが戦争の火種になったりするからです。本作に出てくるレールガン機構『ストーンヘンジ』はもともと隕石撃破のために作られていたり、のちのシリーズでも6のラストステージである超大型レールガン『シャンデリア』も同様に隕石を撃破するための構造物が兵器転用された例です。本作以降特にヒロイズム的なまさにエースと呼ばれる主人公が祭り上げられていき、エースの体験ができるようになります。まさにその皮切り役であった04の主人公である『メビウス1』がそうです。最初は無名のパイロットですが戦勝するたびエースへとなりあがっていき、敵からすれば悪魔同然の存在として恐れられていきます。孤高のエースとして未だメビウス1をシリーズ最強格とする意見も多いですね。

今回の鳥枠はレールガンシステム『ストーンヘンジ』要塞『メガリス』です。

・エースコンバット5(2004)

恐らくファン人気が最も高く、3以来日本語音声が復刻した作品です。何より主人公ブレイズをはじめとするウォードッグ/ラーズグリーズ隊の活躍と大国同士の戦争と暗躍するベルカの影など、策謀巡らせた戦い、人間ドラマが大きく引き立てストーリーとシューティングを両立したPS2でも革命的なソフトとなりました。この作品から特にシネマティックなオープニング・PVが作られるようにもなりましたね。特徴的なのはこの作品は1人のエースを描くのではなく、部隊で1つのエースというところです。メビウス1であれば『リボン付き』がきたらもうだめだ!位のテンションですが、5ではラーズグリーズが来た!もうだめだ!という感じで4人1組で仲間も失いながらの主人公たちですが、隊員同士強い絆を感じさせます。ストーリーはやがて暗躍するベルカの影へとむけられていきますが、序盤オーシアに潜入していた8492飛行隊ことグラーバク、およびオヴニル飛行隊も魅力的な敵と尖った機体センスでいいですよね。ミッション数も多く全27ミッションと過去最長です。また本腰に入るのがミッション19以降と、ウォードッグの期間が長いです。また、7で軌道エレベーターを作り、その後死亡するハーリング大統領はここで初出となります。

今回の鳥枠は、SLBM散弾ミサイル発出潜水艦『シンファクシ』2番艦『リムファクシ』、高高度航空機『アークバード』、攻撃衛星『SOLG』となります。


・エースコンバットZERO(2006)

男ならZEROだよなあ!!(迫真)

そういいたくなるほどアツい物語が、5の環太平洋戦争から15年前。問題になったベルカ戦争を舞台としたZEROです。舞台設定は1995年です。抒情的だった5に比べると淡々としており、特に主人公サイファーはブレイズのように仲間とともに戦うタイプではなくメビウスとも違い、1匹オオカミ的で謎多き主人公として語られます。また、今作は円卓と呼ばれる空域で数々のベルカ軍エース部隊との決戦があります。皆さんが好きな部隊はどれでしたか?私はゴルト隊とシュヴァルツェ隊のような大編成部隊でした。戦闘機のチョイスもベルクートとMig-31というのもいいですよね。

ですが何といっても相棒だったラリーことPixyの離反と、最後の搭乗機体(ADFX-02)モルガンとの歴史に語られない相棒同士の一騎打ちのMISSION18『ZERO』は同名BGMも相まって最高の敵、戦闘、BGM、カット、名言連発とも言われます。特に最後の戦闘はECM防御のため、騎士のように正面からのみでヘッドオンでしかミサイルが当たらない仕様です。レーザーすら曲がる強力なECM、長時間使用されるTLS、広範囲散弾ミサイルと、ラスボスに相応しい戦闘機と相手であります。

ちなみにモルガンのデザインはADF-01「FALKEN」の試作機ということもあり、エンテ型でありながらも搭乗空間・キャノピーにコフィンシステム(3などを参照のこと)は使われておらず、現代戦闘機と未来的要素が合体した、95年という時代背景にマッチした戦闘機で、MGS3のシャゴホッドが派手にミサイル発射機構を外付けしているように、レーザーサイト(ゾイサイト)を無骨にも背面に外付け、ポリ窒素散弾ミサイル(MPBM)、ECM防御を備えているのですが、デザインもエスコン最高級の1機だと思って、プラモを買いました。コトブキ屋さんからエスコン7カラーとピクシーカラーが発売中ですが、塗装はされていないようなものなので力量が試されます。

今回の鳥枠はレーザー兵器『エクスカリバー』、空中要塞XB-0『フレスベルグ』、そしてADFX-02『モルガン』でしょう。

・エースコンバットX(2006)

PSP時代に颯爽と登場したシリーズ作です。設定上3の次に未来設定であるのと、ポータブルならではの要素が多く、短尺ながらストーリーも分かりやすく、PSP全盛期の作品ということもあり評価は高いです。また、未来設定ということで架空機のオンパレードで、2以来の登場となるXFA-27、相対するADF-01をはじめ、その派生型の戦闘機や様々な特性を持った戦闘機が登場しました。

今回の鳥枠は空中要塞『グレイプニル』、都市型要塞『グリスウォール』、そして架空機体『フェンリア』でしょう。

・エースコンバット6(2007)

賛否分かれた作品です。XBOX360専売でこのために箱を買った人も多いのではないでしょうか。これ以降、ナンバリングタイトルは7に至るまで約12年ほどかかります。イメージ的には大軍対大軍という感じでとにかく物量戦です。敵の数も味方の数も異様に多く、戦場のマップも広大になりました。また当時の次世代機グラフィックだけあって美麗なテクスチャや戦闘機描写で、意外と今見ても見劣りしません。今回はそれまで形だけだったAIの味方支援がかなり強力で支援要請だけで敵を一掃できるまであります。また、機銃の威力が前にも後にも最強です。ミサイルよりレティクルが広く、当たるとすぐ敵が爆散してくれます。

本作の問題点となったのはストーリー面の弱さで、およそ04ーZEROまでに顕著だったストーリーの濃さやキャラクターの濃さがあまりなく、キーワードの『天使とダンスだ』も軽々とつかわれて印象が薄いです。ストーリー尺自体はZEROとほぼ変わりなく18ミッション程度なのですが、ストーリーにキャラ付けを必要以上につけた結果、逆に分散してしまい薄さに繋がったのかもしれません。事前期待値が高すぎたというのもあるでしょう。

ただし、戦闘の造形や架空機体の造形などは非常によく、パステルナークが搭乗する機体『CFA-44』は今も人気の機体ですし、アイガイオンのニンバスにみられる広範囲空中散弾爆弾戦法はストーンヘンジ+シンファクシのような感じで、のちの鳥枠が踏襲していることも多いです。

今回の鳥枠は空中要塞『アイガイオン』と随伴機『ギュゲス』『コットス』、CFA-44『ノスフェラト』、超大型レールガン『シャンデリア』です。

・エースコンバットAH~インフィニティ

ここは正直シリーズと考えていないです。番外編、個人的には暗黒期の12年と思うほどで、評価が軒並低いことは周知のことでしょう。まず問題だったのはAHでの過剰な破壊描写のストレスと主人公が明確に描かれていること、6から引き続いてストーリー性の弱さから、空のCoDと呼ばれるほどになってしまいました。以降シリーズでもそうなのですが、売りにしていたストレンジリアルの世界を手放して現実世界の空戦をすることとなります。多くのエースコンバットファンは現実世界での空戦を望んでおらず、ストレンジリアルで飛ぶことを望んでいたはずです。その為、仮にストーンヘンジやアイガイオン、アヴァロンダムのようなものが復刻しても現実世界にあるのでは意味がないのです。インフィニティではマルチプレイがメインとなりソーシャルゲーム的でストーリーが添え物となりました。リアリティと爽快感のある空戦を楽しみつつ、シナリオライティングの筆致も楽しむのが本シリーズの特徴であっただけにすべての弱点を晒してしまった期間といえます。

・エースコンバット7(2019)

長らく不調の続いた10年代の終わりにACESから発売された念願の新ナンバリングタイトルで、Unreal Engineで描画された新たな空で戦うことになります。DLCでは超大型潜水母艦アリコーンを撃破するという3段階任務があり高難易度です。まずは本編をやってからの方が良いと思いますね。

さて、今回のテーマは『人工知能』『無人機(UAV)』対人類という大きな構図です。初戦から対UAV戦闘が繰り広げられます。テクノロジー進化とインフラへの定着の結果、人類は便利さを手に入れましたがいつのまにかテクノロジーが人間を追い越してしまう、ついにはテクノロジーが人を支配するかもしれない、いわゆる2045年問題、シンギュラリティ的な問題とぶつかります。というのも、実際今米軍などが使用する攻撃機はMQ-9リーパーに代表されるように無人機です。主力はF/A-18などですが、段々とその比率は無人機と電子戦機に費やされています。古きトップガンのようなドッグファイト時代は終わりを迎えつつあるのです。噂によればトップガン2はAI戦という同一テーマを扱っているともいわれますが、まだ未公開なので...早くみたい。

エンディングテーマ『Pensees』はパンジーあるいは『思考』を意味する哲学用語の仏語です。正確な訳文は出ていないようですがネイティブの歌詞ではなく日本人がおそらく書いたであろう歌詞だそうです。オペラ調で快適な歌ですが、AIという頭脳、そして軌道エレベーターがバベルの塔のごとく天を分かつ時代の罰なのか、過去の時代を飛ぶ亡国の主ミハイとその卓越した飛行データを学習したADF-11Fシリーズの自己増殖が最終的な敵となります。エースコンバットZEROでは1対1の一騎打ち、5ではSOLGという旧時代の衛星兵器でしたが、ついに未来世代の兵器との対決となるのです。ちなみに本作はオーシアとエルジア間の戦争とベルカ人科学者の暗躍なのですが、ユージア大陸が舞台になるだけに、1基だけ残っていたストーンヘンジなどを再利用するに至りますし、アーセナルバード2機による防空網と本体が持つバリア・攻撃機構はこれまでの鳥シリーズの集合体ともいえます。容量増加に伴ってか、1戦が長く、具体的には任務中のミッションアップデートの回数が多いので、意外と時間食いなので座してやるには楽しいゲームですね。惜しむらくは僚機の印象が薄いことでしょうか。一応囚人部隊で構成はされているのですが、実質相棒のカウント以外は外輪の存在で、AWACSも5のサンダーヘッドのように個性的でなく、ころころ変わるのであまり存在感がないこと、ストーリー面では04で悲惨な戦争を知っているはずのコゼットがあまりに夢見がちな所は少し引っ掛かりました。

・アリコーン編(DLC)について。

幕間の物語になるようですが、テクニック的には応用編です。全3部のDLCストーリーで、超大型潜水艦アリコーンの叛逆やミミック隊のオーシアとの内通などもありながら、高難易度に設定されたエース向けの内容になっています。かなりシビアな条件下で戦う場面が多く、最高何度でクリアした人はどれほどいるのか気になります。またアリコーン艦長のトーレス艦長の狂人具合が振り切れていてすさまじいです。安元さんの演技も相まってその怒気や虐殺への思考が恐ろしいものになっています。アリコーンも超兵器の1つでレールガン二門と電磁バリアを備えており、レールガン射出範囲がオーレッド圏内になった時点で1分以内に核発射を行おうとするなど時間がとにかくないステージです。それまでの2ステージも終末誘導UAVの精度があがった長距離攻撃を仕掛けてきたりしてかなり厄介です。

ちなみにDLCストーリームービー中に『トーレスをシンギュラリティとするか、トリガーをシンギュラリティとするか』という二択に、当初コンピュータは膨大な演算時間を要しましたが、これは本戦争で活躍する英雄であるトリガーとかつて9割の潜水艦乗員を救った英雄であるトーレス、同じ『英雄』という立場の対比であり、どちらを解とすればより良い結果となるのかというもので、アリコーン戦前まではおそらく50パーセントで割れていたようです。それがアリコーンに勝利したことで演算が変わり『トリガーがシンギュラリティとなり、『トリガーについていけば生き残れる』』という締め句に繋がります。

今作の鳥枠は『アーセナルバード』2機、X-02S『ストライクワイバーン』、ADFX-11F『フギン』『ムニン』の2機、およびDLCの大型潜水艦『アリコーン』でしょう。

エースコンバット7の評価はこれも賛否両論とはなりましたが、着氷や雷雨の弊害をはじめ新しい空の体験を提供してくれたことや、ACES曰く『ハーリングの鏡(見るものによって事象が変化する比喩)』として、未回収の要素もいくつかあります。本来物語が展開を読者に投げるというのは好きではないのですが、それほど差しさわりのあるものではないレベルなので問題は無いかと思います。その上では、暗黒期を乗り越えたエースコンバットシリーズとして正しく評価できると思います。

・今後のエースコンバットはどうなるのだろう

実は難しい問題にぶち当たったと思っています。というのもエースコンバットのストレンジリアル世界線では既に7以降の未来として『X』と『3』が出ており、あらかじめ未来が決まっており、プリクエル(前日譚)は『ZERO』が担っていますのでほとんど歴史が埋まってきているのです。そして現時点で空が抱える問題はまさに7の無人機問題で頭打ちになっており、この問題を人間の勝利に解を託したストーリーとして完結したので、これ以上論議することはないはずです。また、リアル世界舞台のエースコンバットは失敗すると既にACESチームは学んでいるはずです。ストレンジリアルを舞台にしたまま、エースコンバットシリーズは25周年を迎えた次に、シリーズはどんな道を行くのでしょうか。楽しみですね。

ご拝読感謝致します。では。


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