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3人を生きる-アナタの知らない三つ子の話- vol.14 「私」を認める
試験終了後も、2人に対する冷たい態度は変わらなかった。だんだん、これはいけないだろうと思う気持ちが強くなっていったが、態度を変えることができなかった。
せっかく、手を離すことができたのに。せっかく、自分のやりたいことに手を伸ばせたはずなのに。
どうして、まだ、こんなにも、三つ子というものから目が離せないでいるんだ。
推薦試験が終わって、またいつものように学校に行き、センター試験の対策をする日常が始まってから、2人が私の教室に来ることが少しだけ増えた。
嬉しいはずなのに、私はいつも不愛想で、鬱陶しそうに2人をあしらっていた。本当は好きなのに、素直になれないヘタレな不良のようだった。
きっと、周りが無意識に三つ子という一括りにすることに不快感を覚えていて、クラスメイトにぶつけられないその感情を2人にぶつけてしまっていたんだと思う。
いや、それだけじゃない。まだ、「私」が三つ子に飲み込まれそうな気がして、怖かったんだ。
――嗚呼、そうか。
私は納得した。私は、「私」に納得できていないんだ。
私の思う「私」に到達していないのだ。
だから、自信が持てなくて、輝いて見える2人に打ち消されそうで怖かったんだ。
推薦試験は無事合格した。
試験が終われば、私は残るセンター試験(進学先が決まっていても、私のクラスはセンター試験を受けなければならなかった。所謂、記念受験である。)の対策などせずに、ひたすら自室に籠り始めた。
私が納得する「私」に辿り着くために。
あと少しの三つ子が同じ屋根の下で過ごす間に、私は、私が2人と対等であると思うようになりたかった。
ある日はペンを持ち、小さなノートに自分の脳内を書き殴り、ある日は、ビーズや金属らを繋ぎ合わせた。
なりたい「私」になるように。
納得できる「私」になるように。
「私」に自信が持てるように。
垂れ流しっぱなしだった靄を払拭できるように。
私は、小さな自室の中、ちっぽけな照明の明かりに照らされて、動き始めた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 自分の記録やこんなことがあったかもしれない物語をこれからもどんどん紡いでいきます。 サポートも嬉しいですが、アナタの「スキ」が励みになります:)