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3人を生きる-アナタの知らない三つ子の話- vol.7 競争心と個性

 中学はとても小さかった。私の学年は3年に上がった時点で57人しかいない小規模校だった。クラスは2クラスだけ。
 1年と2年は他の2人のそれぞれと同じクラスになり、3年は自分一人だった。
 入学当初、周りは三つ子という存在を珍しく思っては、事あるごとに比較した。勿論、悪意などない。単純に差が目に入るのだ。
 1年の時は、三女と同じクラスだった。三女は、3人の中で最も明るい性格のムードメーカーで、いつも周りを笑わせていたように思う。足も速く、毎度陸上大会では短距離走選手として参加していた気がする。そして、私が勉強に力を入れる横で絵ばかりを描いていた。
 その時、三女にとって、勉強は関係ないことを知った。勉強ができるか云々ではなく、自分の中にある個性を発揮しているように思えた。

 そう思うと、なぜか、胸がざわついた。

 2年に上がると、今度は次女と同じクラスになった。私は生徒会に立候補し、生徒会副会長として、そして、当時入部していた女子バスケットボール部の副部長として過ごすようになった。生徒会と部活、そして、未だに順位に執着していた勉強に明け暮れる中、次女は、至極マイペースであった。私は上に立つような人間ではない、と言って少々面倒な雑用をしたり、同じバスケ部では、頑張り過ぎず、怠け過ぎずで練習に励んでいた。三女と同じく勉強よりも読書をしたり、絵を描いたりという記憶がある。他人に必要以上に干渉せず、我が道を行くという感じの印象が強かった。
 周りがどうとかは関係なく、自分自身がそもそもどうなのか、無駄に周りと比べず、自分自身が納得できるような過ごし方を送っていたように思える。

 彼女たちにとって、三つ子内での競争などどうでもいいことなのだ、と思っているように感じた。
 私だけが必死になって、一番になろうと誰も登らぬ頂上のない山を登っていた。
 次第に今まで執着していた競争が馬鹿らしく思えた。
 そう思い始めた頃には、3年の受験期に入っていた。特に何かに長けているわけでもなかった私は、普通科進学校から選択していた。しかし、競争が馬鹿らしくなった私は勉強に対する意欲が以前より薄れ、進学校は進学校でも所謂「なんちゃって進学校」ならいいのに、とどこを志望するか決めかねていた。
 そんな中、友人に誘われて行ったある高校の入学体験会をきっかけに、私はその高校を志望するようになった。
 今思えば、それは嘘話じゃないかと思えるが、その高校を志望した最もの理由は「個性の伸長」を謳う校訓に惹かれた、というものであった。
 多分、2人が「私」というものを持っているような気がして、羨ましかったんだと思う。

 偶然にも、3人それぞれが別々で選択して、最終的に親に提示した志望校は同じ高校だった。そして、3人が余ることなく、その高校に合格した。

 この時、私の中ではもう、競争心は薄れ、周りとの闘いよりも己との闘いに明け暮れていた。
 しかし、競争心が剥がれ落ちた胸の中で新たな感情が顔を出し始めていた。

#エッセイ #記録 #日記 #三つ子 #3人を生きる  

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