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インボイス保存について その1 出張旅費特例

出張旅費特例とは

インボイス制度上、原則課税の仕入税額控除はインボイスの保管が義務付けられているため、公共交通機関の利用料等保存義務が無いものを除き、インボイスの保管が必須です。
が、出張旅費については、「会社が従業員に対して支払う以上、個人事業主では無い従業員がインボイスを発行出来ないためインボイス保管が不可能」という事情があり、インボイスの保管が不要になります。
該当する国税庁HPの質疑応答事例が下記ファイルです。

出張旅費特例を使うための手順

  1. 旅費規程を作る

  2. 規程に沿って出張旅費申請書類を作る

  3. 申請に従って従業員に旅費を支払う

旅費規程の必要性について

厳密に言えば必要が無いので、「どこにもそんなものが必要だなんて書いてないじゃないか」というのであれば作らなくて良いです。
だが、あえて「必要です」と言う理由は、上記質疑応答事例の回答にある、「「その旅行に通常必要であると認められる部分」については、所得税基本通達9-3に基づき判定します」にあり、この所得税法基本通達では、通常必要であるかどうかの判定基準として、

  1. その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。

  2. その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

を勘案するとしています。
なので、「適正なバランスが保たれている基準」「一般的に支給している金額に照らして相当」だと説明がしやすいという点と、タクシー代のような立替払いと区別しにくいものの精算について説明がしやすい点で、規程があった方が良いです。

出張旅費申請書類の記載事項

こちらは作成と保管が必須です。
記載事項も決まっていますので、下記の項目を明記してください。

  1. 支払先名称

  2. 支払年月日(※クレジット利用の場合は利用年月日)

  3. 内容(※「(株)○○訪問のため」のような)

  4. 金額(※税込金額のみ記載で良いです)

なお、申請書のタイトルは「出張旅費申請」として下さい。
国税庁質疑応答事例に「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れである旨(「出張旅費」「宿泊費」など)を記載する必要があります」とあるので、出張旅費と明記したうえで保管が必須です。

その他注意事項

  • 従業員が立て替えて実費精算する場合とは別なので混同しないように気を付けてください。立替の実費精算の場合はインボイスが必要になってしまいます。

  • 旅費規程において「実費相当額を支給する」として支給するのはあくまで旅費として支給しているのであって立替払いではないので、インボイス無しで問題無いです。

  • 例えば法人カードを使用してガソリン代を支払うようなケースは、質疑応答事例の回答要旨注書きの「役務提供先に直接支払うもの」に該当してしまうので、インボイスが必要になります。

  • 消費税法施行規則15条の4第2項で、「役員と使用人(中略)に対して支給する」とあるので、個人事業主本人の場合は該当しません。

  • 中小企業だと経営者が出張旅費精算書を作成しないことが多いと思いますが、作成しないとインボイス保管必須になります。

  • あくまで役員・使用人に対する支給が前提なので、取引先に支払う旅費の精算は該当しません。





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