![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88644344/rectangle_large_type_2_a599a6cbb2a71f801f24c50c906ba2b8.jpeg?width=1200)
Photo by
hd_py
阿辻哲次「昔と同じ味やなぁ」父が涙声になった煙草
著名人が父親との思い出を回顧します。今回の語り手は、阿辻哲次さん(京都大学名誉教授・漢字文化研究所所長)です。
大前門という煙草
父はかつて小さな商社に勤めており、一時期は中国東北地方のハルピンに住んでいたことがあるらしい。
酒好きの父は晩酌で機嫌がよくなると、おさない兄と私に、中国での思い出を楽しげに話したものだった。話の中に「中国語」のフレーズや単語がいくつもまじるので、私は無邪気にも「おとうちゃんは中国語がペラペラだ」と信じて疑わなかったが、後に大学で中国語を勉強して、それがとんでもない「中国語」であると知った。
父は戦後に活版印刷業を営み、私は子どものころ、活字という形をとった漢字に囲まれていた。漢字の研究を志すようになったのはその影響である、とある本に書いたことがあるが、しかしそれよりもっと前から、父の目をフィルターとした中国との接触があったことも、進路を決めるきっかけのひとつかと今は考える。
ここから先は
562字
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54742002/profile_a2d1bc9047964b0b316ead227fc29140.png?fit=bounds&format=jpeg&quality=85&width=330)
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju
文藝春秋digital
¥900 / 月
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…