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50代で歯列矯正を決意するまで

私は2024年7月から歯列矯正を開始しました。現時点の年齢は54歳。
私自身歯列矯正を決めるまでに随分と悩み、あれこれ調べたのですがそれなりの年齢になってからの患者自身による体験記というのは見つからず、情報収集に難儀していました。さらに、私は趣味でサックスを吹いており、歯列矯正によってどんな影響があるのかについてもなかなか情報を見つけることができませんでした。

50代という年齢とサックス吹きという属性での体験にはきっと何か発見がありそうだということで、体験記としてまとめていこうと思います。これから歯列矯正をしようかどうしようか悩んでいる中高年の方、サックス吹きの方のお役に立てることができれば幸いです。
そして、自分自身に対する観察日記の感覚でこの記録を楽しみながら書いていきたいと思っています。

この記事に関するご注意

この記事では、インビザラインという歯列矯正方法に関する患者個人の感想をシェアすることを目的としています。同じ年齢層の方や同じような悩みを持つ方皆さんに私と同じ効果が期待できるとは限りませんし、同じリスクがあるとは限りません。また、医療に関しては素人ですので、できるだけ調べたりしながら書いていくつもりではいますが情報に誤りがある可能性もあります。あくまでも参考情報として見ていただき、重要な判断をされる場合は信頼のおける歯医者さんへの適切なご相談をお願いいたします。

また、この記事では特定の歯医者さんの名前は出しません。前述した通り個人の感想を述べる場であり、特定の歯医者さんの口コミとして良くも悪くも利用されることを避けたいという思いがあります。そうしたスタンスだから、良いことも悪いことも包み隠さず書けるというメリットもあります。特定の歯医者さんに言及しないからと言って、インビザラインを取り扱う歯医者さん全般に対して言及しているわけではありませんのでご注意ください。

私と歯医者さんの関係

私は物心ついてからというもの歯医者さんが大嫌いでした。(歯医者さんすみません…。)
なぜなら、私の幼児期は親が当時あまり歯科衛生に頓着している余裕がなく、気付いた時には虫歯だらけ、歯医者さんに行くと大人の力で押さえつけられながら恐怖の時間を過ごす…という体験をしているうちに、歯医者さんに対するトラウマのようなもの(歯科恐怖症というのがあるそうです)が植え付けられてしまったからです。

虫歯の治療がひと段落したと思ったら、今度は乳歯が抜けずに奥に永久歯が生えてしまいました。この時も乳歯を歯医者さんで抜いたのですが、さらに恐怖体験が一つ増えました。私は顎が小さいのに永久歯が大きいという状態で、乳歯が抜けなかったこともあり特に上の前歯はがたがたになってしまいました。

もちろん、学校での歯科検診などでは矯正をするように勧められます。しかし、当時は親に経済的な余裕はなく、妹の方が深刻な状態だったため、私は時々虫歯の治療でいやいや歯医者さんに行くものの、歯科矯正をすることなく小学校時代を過ごしました。中学校に入ってからブラスバンド部に入ってサックスを始めるのですが、その頃親から「そろそろ矯正してみる?」と言われたことはあるものの、始めてまだおぼつかないサックスのアンブシュア(サックスを吹く時の口の形)が崩れることを恐れて、矯正はしませんでした。

甘いものがもともとあまり好きではないこともあり、虫歯による痛みの自覚がなかったので中学校以降虫歯で歯医者さんに行くことはなくなりました。その後大人になって親知らずが生えて痛みが出るようになり、かなり久しぶりに歯医者さんに通うことになります。確か20代後半くらいの頃に親知らずを1本抜き、30代後半で残りの親知らずを抜いたのですが、最後に通院した歯医者さんでは虫歯治療と歯石の除去を勧められたものの、歯科恐怖症でもあることを相談したためか保険適用外の非常に高額な治療費を提示され、歯石の除去はせずに行かなくなってしまいました。(ちなみに、この歯医者さんは痛くない治療を謳っていましたが、麻酔はものすごく痛かった…。)

この時に治療した虫歯はかぶせものが1週間程度で取れてしまい、この歯医者さんの対応・技術に不信感を強く持ってしまいました。高額な治療を勧められることを恐れて、かぶせものを直してもらいに行くことをためらってしまったため、結局かぶせものがとれたままその後20年近く過ごすことになります。歯列矯正はしたいけれど歯医者さんを信用できず、行きたくないという葛藤を抱えたまま40代も過ぎていきました。

50代で歯列矯正を始めようと決意する

歯列矯正については常に頭の片隅にあるという状況でした。ただ、私の場合顎に対して歯が大きいので、矯正するためには最低でも(親知らず以外に)4本は抜かなければならないだろうと以前相談した歯医者さんで言われていました。年齢が進むにつれて、いずれ自然に歯が抜ける可能性があるのにわざわざ健康な歯を抜くということに矛盾を感じるようになってもいました。

職業柄ネットのニュースや広告は自然と目に入ってくるので、「マウスピース矯正」というジャンルが定着しつつあることを知っていました。そして、抜かずに矯正できる場合が昔よりも増えているということも情報として入ってきていました。それでもなかなか矯正に踏み切れないでいたのは、矯正によってサックスが一時的にでも吹けなくなるのではないか?ということです。歯並びが変わるとマウスピースにかかる力のポイントや口の中の構造が変わるため、吹けたとしても音質が変わったり、今までできていたことができなくなる恐れがあったのです。

ただ、50代に入ってから仕事も落ち着き、趣味のサックスをもっと吹きたいという思いがあってこれまでよりも練習の回数を増やしたところ、新しい技術が身についてきたせいか「アンブシュアが変わっても対応できる」という自信がつきました。というか、曲やジャンルによってアンブシュアを変え、音質を変えるようなことを、すでにある程度柔軟にできるようになっていました。また、アンブシュアが変わってきたことに加えて長年サックスを吹いてきた影響からか、歯並びも昔とは同じではなくなってきているのを感じていました。

以前は前歯2本でマウスピースを支えていたため、マウスピースにはその部分が少しずつ削れて2本の前歯の跡が残っていたのですが、ここ数年は前歯が完全に浮くようになってしまい、前歯の奥にある歯1本だけで支える形になってしまいました。そのため、ちょっと体制が崩れるとがくっと歯が外れてリードを傷つけてしまいそうになることが増えました。このままではいずれサックスが吹けなくなってしまうかもしれないという危機感を感じたこと、これが歯列矯正をしようと決意する契機になりました。

歯列矯正をする歯医者さんを選ぶ

インビザラインに期待を持つ

歯医者さんに行く前はネット上の情報だけで歯列矯正のいろいろな種類について検討していました。マウスピース矯正にもいろいろな種類があるのですが、安さや手軽さ、治療終了までの期間の短さを売りにしているところ、デメリットの情報を出さずメリットばかり謳っているところはやめようと思っていました。

私が今回の歯列矯正に対して優先するのは以下の3点でした。

  • 歯を抜かないこと(最優先)

  • お金や時間、手間がかかっても良いから最大限リスクを抑えるための提案、処置をしてもらえること

  • 車で通いやすい場所にあること

インビザラインを取り扱う歯医者さんのブログなどを見ると、しっかりとメリットもデメリットも述べられていて、情報量も多いと感じました。マウスピース矯正の中でもシェアが非常に多いということもあるのでしょう。インビザラインの認定制度やその制度の中で賞をもらったというような広告もよく見かけるのですが、その点にはあまり心が動かされませんでした。信用を測る一つの目安にはなるかもしれませんが、単に営業上手なんだな…という印象も持ちました。

最優先項目である歯を抜かないは、とにかく行って治療方針を伺ってみないと何とも言えないため、情報量の多さと車で通いやすい場所にあるという点からインビザラインを専門としている歯医者さんを選んで行くことにしました。2024年3月にほぼ1か月待ちでカウンセリングの予約が取れたので、最初のアクションは2024年2月頃だったのだと思います。

初回カウンセリングで契約と支払い

治療をするかしないかを決めるためには、治療方針を聞く必要があります。このあたりがインビザラインの難しい点でもあるのですが、治療方針を決め、マウスピースを設計するための歯のスキャンは最初の1回のみが想定されていて、その後虫歯の治療などで歯の形が変わってしまうと再スキャンが必要になり追加で料金がかかってきます。しかも最初のスキャンをするためには治療の契約が必要です。契約するかどうかを決めるのに詳細な治療方針を聞かずに決めなければならないというのがまず第1関門になる気がします。かなり大きな金額になるので、そこの判断が難しいです。

これは、歯医者さん側の言い分もあると思いますし、そもそもインビザラインというアメリカ企業製プロダクトの性質もあるのだと思います。治療方針を決めるためには歯医者さん側が相当な労力(検査結果を見てプランを立てる)を使いますし、矯正が完全に終了するまでの長期間にわたる責任を負うので、スケジュールの都合もあるでしょう。治療を希望するたくさんの患者さんが控えているということもあると思います。治療方針を決めた後で「やっぱりやめる」となると困るというのは理解できます。しかも、歯科矯正は虫歯のように「今すぐ治療しなければ痛くて仕方がない」というような緊急性がないため、治療方針が意に添わなければ比較的あっさり「やっぱりやめる」となってしまうように思います。

後述しますが、特にマウスピースでの歯列矯正において歯医者さんと患者との関係性は、その他の病気やケガ、歯科の治療よりも患者自身が治療に働きかける割合が圧倒的に多くなるという点で違いがあります。それを考えた時、生半可な覚悟では治療を受けられない、その覚悟を示すのがこのタイミングでの契約なのではないかと理解しました。多額のお金を支払ったのだから、積極的に治療に取り組み、歯医者さんの助けを借りながら自分自身で治していくのがインビザラインでの矯正だと思います。このあたりの問題の整理と、自分の心との折り合いの付け方が重要なポイントだったと思います。

ということで、カウンセリングは契約担当の方による時系列的な治療の流れやメリット・デメリットの説明、料金プランの説明、こちらからの質問に対しての回答などという流れで行われました。どの患者さんに対しても同じような説明をする場面では、基本的に動画視聴でした。この辺りは好き嫌いが分かれそうな気もしますが、私は説明者による説明のムラもなく効率的で良いやり方だし、こうした工夫と努力によって妥当な料金設定になっていると考えました。

この時点でいつスキャンをするかについても相談に乗っていただけます。スキャンは契約後に行うことになります。例えば、虫歯や歯周病があってすぐにスキャンをしない方が良さそうな場合は、まず別の歯医者さんで治療をしてから契約してくださいと言われます。私の場合、別の歯医者さんに行く前に矯正治療をするかどうかを決めたいという希望があり、スキャンが無駄になる可能性はあってもまず契約を済ませて歯を抜かずに治療ができるかどうかを調べることになりました。

契約書にはいくつか種類があり、この日はまず大雑把な治療方針(歯を抜かない、大雑把な治療期間)への同意と料金の一括払いをしています。その場で料金を支払ったので、その日のうちにスキャンをしてもらうことができました。綿密な治療計画はまだ先になりますが、スキャンの結果歯を抜かないという方向にこの時点では変更がありませんでした。

院内でのセカンドオピニオン

全ての患者さんの治療方針を決定する代表医師とは別の医師がセカンドオピニオンのような形で治療に関するリスクの説明をしてくれました。この時、歯を抜かなくても治療できるという契約担当の方の説明に対して、「治療が進んだ時このままでは歯周病によって歯が抜けてしまうリスクがあるので、インプラントになる可能性がある」と説明されました。それに対して患者に何を求めているのか(治療しない判断?インプラントになってもいいという了承?)がよくわからなかったので質問したのですが、契約担当の方が「再度治療方針のすり合わせをする」ということでリスクを説明した医師と共に中座しました。

このやり取りが一番この歯医者さんの中でもやっとした場面だったのですが、結局契約担当の方が戻ってきた時には「さっきの医師が話したことは気にしなくて良い。最初に話した通り歯周病をコントロールしながら歯を抜かずに治療できる。」というような感じになっていました。もしかすると契約が取れなくなるのでは?と思って焦ったのかもしれません。こちらとしてはリスクはリスクとして話をしてもらえた方が良いのですが、リスクを話す時に患者に何を決めてほしいのか、そしてそれを決断するための指標となるリスクがどの程度のものなのかについて(リスクの程度がわからないならわからないということも含めて)きちんと説明が欲しかったと思いました。

結果として契約担当の方と相談し、歯周病のコントロールも兼ねて歯列矯正と歯のクリーニングをセットで行ってもらう方向にしました。また、ある程度時間をかけて慎重に歯を動かしていく方向でプランを組みました。先ほどの医師の言葉が気にならないわけはないのですが、歯周病で歯が抜けるかもしれない可能性がどのくらいあるのかという点は恐らく「やってみないとわからない」なのでしょう。

大雑把な治療プランに合意はしたものの、この時点ではまだ正式な治療計画はできておらず、治療への完全な合意はまだ先になります。次の記事では治療計画を待つ間の歯のクリーニングのことから書いていきたいと思います。

自己管理に対する覚悟が重要

口腔ケアのこと

私の場合初回の通院で歯列矯正を始める決断と契約を済ませましたが、改めて生半可な気持ちで契約をしてはならないと感じました。契約するまでにたくさんの説明を受けたのですが、結局歯列矯正は歯医者さんだけでできるものではなく、むしろ患者側の管理の方がとても重要です。毎日の口腔ケアがどのくらいしっかりとできるのか、ここに全てがかかっています。

ワイヤーで矯正をする場合は容易に外したりできない分、口腔ケアを患者ががんばってもなかなか清潔に保ちづらいというデメリットがありますが、その分歯医者さんにはかなり定期的に通って診てもらうことになるでしょう。インビザラインの場合、マウスピースを外して直接歯を磨けるメリットはあるものの、歯全体を長時間プラスチックで覆うためその中に細菌が繁殖しやすくなるというデメリットがあります。そこのところをしっかり理解して、口腔ケアを自分自身でどのくらいできるのか、歯医者さんに手伝ってもらうのはどの部分なのかを決めていくことが重要だと思いました。

私の場合、もともと歯周病が進んでいたということもあり、追加で料金を支払って口腔ケアの部分も診ていただくことにしました。自由診療になるので高額ですが、マウスピースを付け始めてからの診療機会が極端に少ない(後述します)ため、この辺りは万全を期したいと考えました。

歯医者さんとのコミュニケーションのこと

契約を済ませた後は、基本的に歯医者さんとのやり取りはアプリ経由になります。インビザラインを専門としている歯医者さん皆さんがこのようなスタイルなのかは不明ですが、私が選んだ歯医者さんはLINEや専用のアプリを使って連絡を取り合ったり、治療の進捗を患者の側から画像で報告することが前提です。特に50代以上の患者さんでこのあたりが不安になる方が多いかもしれません。

私は職業柄こうしたコミュニケーションに全く抵抗がないのですが、インビザライン自体アメリカの企業が開発したものということもあり、特に歯医者さんと患者とのコミュニケーションの効率化には力が入れられていると感じました。このあたりも、実際に矯正に入ってから詳しく書きたいと思います。

まとめ

今回の記事では、私が歯列矯正を決意するまでの経緯と、歯医者さんを選んだ時のエピソード、契約や支払いのプロセスについてお伝えしました。
インビザラインでの歯列矯正を選ぶ時、特に50代以上の方にとって重要なことは以下の2つです。

  1. 歯医者さん任せにせず徹底した自己管理をする覚悟ができるか

  2. 非対面でのコミュニケーション、特にコミュニケーションツールの利用に抵抗がないか

特に1についてごまかさずにリスクも含めてしっかりと説明してくれる歯医者さんは信用できると言えます。この記事を読んで歯列矯正を検討される皆さんが、良い歯医者さんに出会えるよう祈っています。
次回記事もぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

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