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天王寺動物園アイファーのニホンイシガメを盛り立てろ

いきなりカメの尻で失礼します。でもいいよねカメの尻。

どこでも博物ふぇす開催期間中の上に先日千葉市動物公園を見てきたにもかかわらず、ここしばらく行けていない天王寺の記事です。

それはなぜか。天王寺動物園の両生爬虫類館「アイファー」の改装を目的としたクラウドファンディングが開催されていて、改装した後の展示を是非とも見たいからです。

うわ残り1ヶ月弱で18%だ。やばい。まあ達成しなくても寄付されるタイプですが。

改装されるのは日本の水辺の生き物の展示、まずはニホンイシガメからです。

アイファーは爬虫類や両生類を中心に充実した展示を行っている施設です。バラエティに富んだ生き物を良好な環境で、生息環境に沿った臨場感のあるレイアウトで展示しています。
しかしそれは国外や南西諸島の生き物の話で、国内の身近な生き物の展示は少し寂しいというのが課題だったのです。入館して最初のミシシッピワニやヨウスコウワニなどの部屋から地下の大部分の展示がある部屋を堪能して、最後のほうにまた1階の身近な生き物の部屋に上がってくると、どうしてもなんだかしんみりしてしまいます。

外国の珍しい生き物の展示を改修するのだったら(よほど好きな種類だったら別ですが)こうして記事を書くほど応援してはいなかったことでしょう。
ニホンイシガメは元々身近な生き物でしたが日本固有種でもあり、しかしあまりにもタフなミシシッピアカミミガメやカメの甲羅を攻略して捕食してしまうアライグマなどの侵略的外来種に押され、川の護岸工事などで生息環境も減って、地域ごとに姿を消しつつあるのです。
日本に元々当たり前にいた生き物の良さと大事さをもっと訴えかけていくべきだからこそ、こうしてクラウドファンディングが興り、私も応援しているというわけです。

というか本来ならすんなりと予算が割かれてしかるべきではあるのですが、関西の文化施設は冷遇されているので……。

それに私自身今動物園の中の屋内展示施設をきちんと振り返りたいので、記事を書くのにちょうどいい機会でもあるんですよね。

では、どんな施設か見ていきましょう。今回は2016年から2019年に撮影した写真を基に振り返りますので、種類や細かい設備に今と違うところがあるかもしれませんが、大枠では変わらないと思われますのでご了承いただければ。

アイファーは天王寺動物園の新世界ゲート(動物園前駅から入るほう)から入園して左にあり、緑と岩に囲まれて建物本体が隠されています。

アイファーという名前はInvertebrate(脊椎動物以外の動物)、Fish(魚類)、Amphibian(両生類)、Reptile(爬虫類)の頭文字、つまり動物園でももっぱら水槽や温室で取り扱う、哺乳類と鳥類以外の動物の施設という意味です。

入館すると最初に現れるのは生息地さながらの池でくつろぐミシシッピワニです。アイファーの館内は臨場感を重視した箇所が多く、それは園各所がある時期にいわゆるランドスケープイマージョン(飼育施設の内外を完璧に生息地そっくりに作り込むことを理想とする考えかた)に基づいて改装されたためです。

いっぽうヨウスコウワニは半屋外で日の光を浴びています。ワニにしては珍しく熱帯や亜熱帯ではなく温帯に暮らしているので、冬でなければ大阪の屋外で過ごせるんですね。

IFARのIに当たる昆虫などはいないことが多いですが、Fの魚は爬虫類や両生類と並べると統一感のあるアフリカハイギョ(プロトプテルス・エチオピクス)がいますし……、

Aの両生類もこのナガレヒキガエルなど様々なものがいます。

しかし今回はニホンイシガメのクラファンが本題ですから、ここからはカメと、それからアイファーの良いところを示すためにオオトカゲについても見てみましょう。

大きなリクガメの姿が目を引きます。大きいほうはアルダブラゾウガメ。小さいほうはホウシャガメですが、ホウシャガメは密輸されて税関で押収された個体(とその子孫)なのだそうです。こうした違法に輸入・飼育されて押収された個体を各地の動物園が引き受けていて、違法個体を入手しないようにという啓発を行っています。

インドセタカガメのように水からあまり出ないカメもいます。

大きな水槽で暮らす立派なカミツキガメもいますし、一時期は水族館でもないのにウミガメがいたことがあったくらい水中のカメには強いほうです。

オオトカゲについては設備の違いと共通点を見てみましょう。

アオホソオオトカゲは樹上性です。やや身軽な体付きで指も長いです。

同じオオトカゲでもミズオオトカゲは水中を好むので、アオホソと同じ木のレイアウトだけでなく水が張ってあります。どちらのオオトカゲでも後ろがペンキ塗りっぱなしではなくジャングルの背景になっていますね。

ナイルオオトカゲは砂地で過ごす時間が長く木の上ではあまり活発でないようで、木の本数は控えめです。

オーストラリアの幅広い地域に住んでいるグールドオオトカゲは砂の上でも木や岩の上でも過ごすようで、このようなレイアウトに。今度は開けた風景の背景です。

リクガメや水生カメ、ウミガメと種類ごとに色々なところに住んでいるカメはもちろん、一見どれもよく似ているように見える(実際「科」より小さい「属」という単位のグループに全て含まれます)オオトカゲでも、それぞれの生息環境が異なっていて、飼育環境だけでなく展示の見せ方も種類に合わせていることがよく分かると思います。

それでは、これら主要な展示動物達のいる最初の部屋や地下の部屋を過ぎて最後の部屋、ニホンイシガメなど身近な地域の生き物の部屋はどんな様子でしょう。

どういうわけか、河原が背景に描かれているにしては薄暗いのですよね。いつもこうというわけではないですが……。
池の造りもちょっと実際の野外の水辺とはずいぶん違っています。真ん中にいるのはチュウシャクシギという鳥です。(IFARの……Bだ!)

オオサンショウウオは持ち前の迫力を見せてくれています。西日本独自の生き物なので大阪にいるのは意義深いですね。

しかしニホンイシガメもさっきのカメ達やオオトカゲ達と同じかそれ以上に充実した展示になってくれたら……!?

考えてみればニホンイシガメは割と園館によって展示の良さに差が出る種類です。簡単な池でミシシッピアカミミガメ(侵略的外来種)やクサガメ(侵略性は薄いもののニホンイシガメに影響のありそうな外来種)と一緒に素っ気なく展示しているところもあれば、川を作り込んで様々な姿を見せているところもあります。

あべのハルカスが園内からも見える天王寺動物園、お客さんの多くは「大都会大阪と自然の水辺には何の関係もない」という認識かもしれません。しかし大阪を中心に自然関係の活動をしている団体はたくさんあり、年一回大阪市立自然史博物館で開かれる自然史フェスティバルを見てみると大阪近辺にいかに豊かな世界があるかが分かります。

そんな大阪だからこそ、日本の水辺を代表する生き物としてニホンイシガメの展示を充実させてほしいものです。今回この記事を書いていてそれを改めて強く思いました。思いましたので、

改めてクラファンへのリンクを貼り直しちゃいます。ほらほらこちらですよ。ぜひよろしくお願いします。

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