爆速レポート!恐竜博2019
物販の待機列の長さゆえ。
人によってはいきなり目玉が来たことになるでしょう。デイノニクスのホロタイプの足がいきなり神々しく現れます。爪の形も見放題ですよ。
手のほうもあります。
デイノニクスに追われるテノントサウルス、あんまり国内で見る機会ないですね。デイノニクスとテノントサウルスの産状が群れによる狩りの痕跡でなかったとしても、恐竜が群れで狩りをするという発想をもたらしたのは意義深いです。
躍動的なデイノニクスも良いですが、テノントサウルスも図鑑の常連の割にあまり見かけないですね。けっこうがっしりしています。
ここで一旦デイノケイルスが、例の腕のみ現れます。期待が高まりますね。
始祖鳥(ロンドン標本のレプリカです。ベルリン標本である私の兄貴分の似姿ですね)、恐竜の子育てについて再考を促したマイアサウラ、初めて非鳥類型恐竜で羽毛の痕跡が認められたシノサウロプテリクスなど、恐竜研究のマイルストーンが並びます。
ニワトリ骨格は股関節を見ましょう。
デイノケイルスが様々な恐竜に似た特徴を兼ね備えていることが紹介されます。サウロロフスなどのハドロサウルス類のような幅広いクチバシと蹄状の爪、スピノサウルスのような長い顎、竜脚類のような軽量化された脊椎を持っていることが標本とともに示されます。
そして……
ついに対面です。デイノケイルスの復元骨格です。
昔の図鑑では鎧竜のサイカニアを付け狙う大型肉食恐竜という仮の姿で現れたデイノケイルスが、ついに予想とはるかに異なる復元骨格となって我々の眼前に現れたのです。
あの恐ろしい腕が体を持って目の前に!
しかし反対側にまわると、竜脚類やハドロサウルス類を思わせる穏やかな顔付き。
全く、なんともおかしな、しかし美しい恐竜であることが明らかになったものです。
頭骨です。まるでハドロサウルス類のようなクチバシを持ちながらデンタルバッテリーどころか歯そのものがなく、また咀嚼筋が収まるべき眼窩の後ろのスペースがごく小さいことが見て取れます。
脛骨です。オルニトミモサウルス類にあるまじき骨太さです。
脊椎です。さっきの竜脚類のものとよく似ていて、また棘突起が長いですね。
足です。しっかり蹄状ですね。
胃内容物です。中央に見える小さな二重丸は魚の椎骨です。基本的に植物を食べていたとされますが魚も食べていたということで、クマのような雑食動物ということになりそうですね。しかし丸呑みできないほど大きな動物は食べなかったことでしょう。
このように、デイノケイルスの様々な特徴がたくさん読み取れます。つい数年前までは夢でしかなかったことですね!
モンゴルの手の大きい恐竜といえばテリジノサウルス類もいますが、これは未記載の2本指のものです。
「ロミオとジュリエット」ことカーンのペアです。血道弓の特徴から左がオス(ロミオ)と考えられています。
エナンティオルニス類の卵です。卵が小さいという爬虫類的な特徴を残していたようです。
モンゴルの足跡の研究を紹介するコーナーを過ぎると国内のコーナー、むかわ竜の登場です!
実物化石と、それに忠実に組んだ復元骨格を並べるという、非常に真面目な展示です。保存度が最大のポイントであるむかわ竜の展示にふさわしいですね。非常に見事な骨格です!
第6〜12胴椎の棘突起が前傾しているのが特徴ですが見分けられるでしょうか。前肢の筋肉と関係があるのかもしれません。
脛骨の断面です。むかわ竜が成熟していることを示す重要な標本です。
展示は恐竜以外の中生代の動物に及びます。北海道の首長竜、ホベツアラキリュウのリバイス版の復元骨格と前肢、椎骨です。東京で見る機会があるとは意外でした。
尾鰭が小さく夜行性とされる変わったモササウルス類、フォスフォロサウルスです。
和歌山の鳥屋城山のモササウルス類です!フタバスズキリュウに匹敵するほどの保存度で、今後注目されるはずです。私にとっては思い入れある化石との再会でもあります。
バラバラになった頭骨の立体的な展示が面白いですね。
特徴である長い前肢の鰭です。
産状の再現です。和歌山の高校でクリーニング作業が進められていたときに見学したときのことが思い出されます。
恐竜博の常、話題は絶滅に移ります。これは隕石衝突地点を中心とした各地のK-Pg境界の標本です。
隕石衝突から1000年以内のガーの仲間です。
隕石衝突前と後の同じ種のカメです。カメはあまり影響を受けなかったようです。ワニや哺乳類、植物には影響があったことも示されます。
プテラノドンと同郷の海鳥イクチオルニスです。
白亜紀にすでに飛べなくなっていた鳥パタゴプテリクスです。
恐竜絶滅後に大型化したディアトリマことガストルニスです。この真っ直ぐなクチバシ、やはり植物食だったのでしょう。
鳴管の見付かっている鳥ヴェガヴィスです。恐竜世界のディティールが解明されていくことが示唆され、展示は終わります。
振り返ってみると恐竜研究の進展にテーマが絞られ、国立科学博物館らしい真面目で丁寧な恐竜博だったといえそうです!
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