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文豪の始祖鳥、叶えられなかった夢がどうなったかを語る

twitterの新しい表示が本格的に見づらくてこりゃあtwitter公式からしたらこういうのをあっさり受け入れるくらい主体性なくだらだら見続けるだけのユーザーばかり残るのがお好みなんでしょうなあと思わざるを得ない今日この頃いかがお過ごしでしょうか。私はマジでこっちを本拠地にしたいと思っております。

そのtwitter経由で本日、小学生も大学生も将来の夢とか望みとかがすっかりなくなってしまっているというツイートを別口から複数目にしてしまいました。

「若者が夢を持つのはいいことだ」というのを通り越して「そんなに夢のない人達に自分が暮らすことになる将来の日本を任せるのは恐ろしい」という感覚さえ抱いております。

でも、でもじゃあですよ。自分はそんなに夢に満ち溢れた学生時代を送ってたんかいそしてそれを叶えたんかいということを振り返るとですね。

そうするともう、若い人達に偉そうなこと言ってすみませんでしたと……言わざるを得ないほど「若い頃の夢が打ち砕かれて」いるわけで……。

とはいえ、今の私が夢や希望と無縁の暮らしをしているわけでは全然ないのは、noteを書き始めて間もないとはいえ過去の投稿から明らかでしょう。いぇーい私こそけっこうな人数のかたに作品をお読みいただける中堅で盤石な同人作家。

改めて若い頃自分の夢が何「だと思って」いて、それがどうなって、今夢とかそういうのがあるのかどうかというのを振り返りたいと思います。珍しく私のこれまでの実生活がむき出しになり、もしかしたら身バレするかもしらんリスクがあるのですが、なんだか今それをやる意欲があります。

夢を叶えられなかったという話

小学生~中学生の頃。ざっくり言って「発明家」が夢でした。

それも具体的には「誰もが気軽に空を飛べる機械を発明して普及させること」が夢だったのです。

当時、そういう飛行装置を考案して図面に起こしたりイラストにしたり、なんなら本当に飛べるかどうか計算を行ったりしておりました。

航空工学の理論を独学で学んだり、実際に空を飛んでいる小型の装置(特に小さい飛行機や、エンジン付きハンググライダーなど)のことを調べたりして、これなら実現できるという裏付けを得て自信を持っておりました。

物理的・工学的な自信を持っていた癖にですよ。

「こういうものを作りたいんだ」と人に語ったり、そういう飛行装置に近いところにいる人に近寄っていったり、という行動は取らず、ただ「飛行機の設計士になりたい」とかいう微妙にオブラートに包んだ物言いをしていただけだったのです。

大言壮語なのを自覚して自分の夢を押し込めておったのです。

そんなんで具体的な物体が作れるかボケェ。

でまあ、航空工学が学べる学校(特に制度等は秘す)のことを耳にしまして、ここに通わずしてなんとするかと思い、とにかく小中学校時代はそれだけを目標にやっておりました。

当時数学で良い点が取れず(数学的なセンスがないわけではなくただただ「中学校の数学」というゲームのルールが飲み込めなかったようです)、例の学校に受かるには数学は絶対重要と聞いていたのでそれはもう焦りに焦り、なんとか理科のほうでカバーするなどして、合格を勝ち取るに至ったのですが。

やはり自分の夢が大言壮語なのを自覚して、具体的な行動に結び付けることをしなかったものですから。

航空工学をしっかりと身に着けてから挑戦しようなどという臆病な心構えでは、「世間一般のいわゆる航空産業」の流れに組み込まれていく一方でした。

気が付けば故郷から遠く離れた町で、元の夢である「誰でも気軽に空を飛ぶことができる装置」とはすごい大雑把なジャンルでしかくくられない、自分の理想からは程遠い薄らデカいプロダクトの書類仕事みたいなことをする羽目に。

周りにはその巨大プロダクトこそが人類の、そして自分達の夢であり、誰もが認める価値のあるものだと考えている、私には到底ついていけないような人達ばかりです。っていうかブラック企業です。

精神に深刻な不調をきたし、せめて愛する故郷にだけは戻ろうと一念発起して転職に成功し今に至る、というのが私の現在の社会生活のバックグラウンドです。

この経緯を「夢を見間違えた」と自分の中では呼んでおります。発明家になるには、無鉄砲さが足りなかったのであろうと思います。

別の種を撒き始めた話

以前から私のことをご存知のかたには、以上の「将来の夢」にピンとくるものがあるかもしれません。

かつてサイトで連載していたスポ魂航空SFラブロマンス「デニムスカイ」のことです。

これこそ「誰でも気軽に空を飛ぶことができる装置」が普及した世界のお話。実現はできなくても表現することは止められなかったんですね。

まあこれも「原子1つひとつを取り扱ってものを作ることができる3Dプリンター」「巨大タワーに大半の機能を集約し残りは広い野原となった東京」といった現実離れした前提を持ち込んで成り立たせており、そういった装置の実現に対して妙に弱腰になっているのですが。

この小説(それとシングルコレクションにも載せた「プラネタリウム・カフェ」)が、下の記事で書いた「急に自分に襲いかかってきた、表現したい物事」です。実現可能性という流路が絶たれたので溢れ出してきたんですね。

最初に書き始めたときは全く良い反応が得られなかったので、某所で見てもらって辛口な意見をいただき、それを真摯に受け止めてきちんと物語の作り方というものを学びなおしました。

そして「デニムスカイ」を1~2週間に1本という安定したペースで書き続けておりました。

一定の(今から思うと「最低限の」かもしれません)評価を得つつ、小説を書くことに慣れてくると、なんと連載の息抜きにごく短いものを書く、などということも考えるようになっていました。

初めて息抜きで書いたのは、「ロックマンDASH」の二次創作でした。もう当時の時点でDASHおよびDASH2の発売からだいぶ経っていたのですが、大変熱心なDASHファンのかたとの交流もあり、楽しく書くことができました。

そのときに「息抜きで短いものを書く」という習慣を付けることができたのが、今も続いている連載「Lv100」の準備となりました。

DASHの二次創作を初めて書いてからしばらくした頃、まだ就職前であり「デニムスカイ」の連載も続いている頃でしたが、ひとに始祖鳥のことを聞かれて「少しは飛べる」というようなことを答えたところ、こう返されました。

「見てきたようなことを言って」

なるほど、それなら見てきたように古生物のことを書いてやろう。好きなもののことを書いてこそ息抜きだ。

そうして、空を飛ぶこと以外に子供の頃から好きであった古生物というテーマに向き合う、新たな息抜きとして書き始めたのが「Lv100」だったのです。

別の(別ではないかもしれない)夢を育てる話

Lv100第一話をお読みになるとお分かりかもしれませんが、最初はあまり深く考えずに書いていました。自分ではありがちな題材だと思っていますしね。

しかし回を重ねるごとに力が入り、就職したことで資金も調達できるようになりました。さらに、デニムスカイもめでたく完結して小説を書くことに対する自信が付くとともに、執筆の全精力をLv100に向けられることになりました。

twitterを介して生き物好きの集まりに呼ばれたとき、私は名刺代わりにLv100のコピー誌(妙に分厚い)を配っていました。

また第十二話、フタバスズキリュウのお話を書くとき、私はフタバスズキリュウの発掘地であるいわきに2泊3日の旅行に出かけました。初めての本格的な取材旅行です。

そうして、もはや「古生物を飼う小説を書いている人」として活動しつつある頃に興ったのが、あの伝説の生き物イベント、「生きものマーケット」略して「なまケット」。

現在の「いきもにあ」の前身であり、博物ふぇすてぃばるが開催される刺激ともなったイベントでした。

ただそういうイベントがあるというだけでは、私はただの一般来場者としてしかそのイベントに関わらなかったでしょう。なにしろこれはいわゆるハンドメイドのイベントであり、通常なら同人作家のお呼びではないでしょうから。

そこに、私に「出展しないか」というお声がかかったのです。

私は真っ先に飛びつきました。

そうして、Lv100をちょっとまとまりの良くなる第十四話まで書き上げて「第一集」として本にまとめ、なまけっとに挑んだのでした。このときデニムスカイで同人誌の作成の経験を積んでいたのも活きました。

結果はなんと完売です。初の単独出展にしての快挙でした。

イベント自体も大盛況という熱狂の中で耳に届いたのが「博物ふぇすてぃばる」開催の報せ、そして翌年に第一回博物ふぇすが無事終了してまた届いたのが「いきもにあ」開催の報せでした。

度重なるイベント出展、そしてLv100の連載を続けていき、転職によって精神的にも余裕が出て、今の私は、前回の記事でまとめた博物ふぇす6のように順調に活動を行っております。

私は今、もしかしたら元々の夢をもっと根源的な形で叶えているところなのかもしれません。

「自分が良いと思ったものを生み出し、皆に楽しんでもらうこと」です。

これを行うために、「手軽に空を飛べる装置」のためにやってきたことの経験はきちんと活用されています。

そして、「楽しんでもらう皆」という範囲をもっと広げたいという欲望も生まれています。

この欲望を育てていればもしかしたら、この記事の最初のところで危惧していた、将来への夢や希望を失った若い人達に、作品を通して直接夢見る心を植え付けることができるかもしれませんしね。

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