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古生物飼育連作短編小説Lv100 第七十話をサイトに掲載しました

ヘッダーの植物はソテツなんですけれど今回登場した植物そのものとは直接関係なくてあくまで似てるだけなんですよ。ただ前回あんまり取材に行けなかったのに対して今回は一応何ヶ所か行けたのでそれはよかったですね。今回もよろしくお願いいたします。

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カクヨム

以下はネタバレ込みの解説です。

前回のときに「いくつか候補があるものの定まっていない」と書いたんですけれど、結局その中から ・海生両生類アファネランマ ・丹波竜(タンバティタニス)と同郷のカエル ・丹波竜の餌だったかもしれない植物 ・化石種のドングリ の4つを残してひとまとめにしてしまいました。

現実にもこのくらい幅広くやってる施設というのはいくつもありまして、例えば東山動植物園は温室や爬虫類・両生類の施設、メダカ館なんていうのも含んでますし、今回モデルにした板橋区熱帯環境植物館は温室がメインですが地下が水族館になっています。

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たださすがに海のものであるアファネランマがこの中では異質なところから、税関か何かで引っかかって施設に送られることになったという、現実でもリクガメなどでよくある設定としたうえで、今回の施設はあくまで中継地点で他の施設と連携して扱いを解決するというふうにしています。まあ……アファネランマが一度名前を出してしまった割に難しかったというのもあるんですけれど……。海水に浸かったら生きていられないはずの両生類も一度は海に本格的に進出したことがあるなんていうのは、古生物に触れる醍醐味みたいなところがありますよね。

上の画像のアファネランマは豊橋市自然史博物館のものですが、今回参考にした近縁種の論文にのっとるならこれも若い個体だったことになりそうです。

最近コツメカワウソやスナネコで無責任に動物を輸入してペットとして売る問題が目立ってきていますが、このシリーズでも一度(第二十四話)やったとはいえ、はからずもタイムリーになりました。

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それでアファネランマが押収されるのとドングリでやりたかったネタがうまく対比できるのでなんらかのドングリを……ということで選出したのがクヌギやアベマキにそっくりの葉っぱのタナイカシを。結局古生物再生世界にも外来種問題はあって、再生された古生物の逸出は薄氷を渡るようなバランスで食い止められているんですね。あとまあ一度出してしまった化石イチョウの回収も……。

ただこれドングリそのものの化石は見当たらなかったです。上の写真は神奈川県立生命の星地球博物館に展示されてる葉っぱです。縦がヒトの手の長さくらいなのでかなり大きめ。ブナ属のほうがドングリそのものの化石をよく見るんですけど、ドングリらしくない……というのは置いておいても、今回の舞台である「大阪と神戸の間のどこか」には神戸層群でメジャーなタナイカシが向いていたのです。

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そうするとなぜ阪神間を舞台にしたかなんですが、前回名前が出てきた丹波竜(タンバティタニス)をできれば飼育したいという計画があるなら生息当時の環境の研究が行われているはずだというわけで、同じ地層(篠山層群)から出てきた生き物の研究を行っている施設を設定したのです。

カエルはヒョウゴバトラクスとタンババトラクスの2種ですが、2種とも頭が幅広い以外骨格にはそこまで特徴がなく、気になるのはむしろ篠山層群はサバンナだったはずなのにカエルがたくさんいたということは乾季をどうにかしてやり過ごしてたんだろうなーということなので、研究することがいっぱいあるという描写にぴったりでした。

でその篠山層群がサバンナだったっていうのはなにか植物化石の特徴から分かったんだったはずだと思ったんですが、それが記憶どおりのものが見付からず……、ただ篠山層群からベネチテス類の新種が見付かったというのは分かったので、中生代独特の植物であるベネチテス類の研究をすることで植物食恐竜の食べたものについて理解が深まる……という設定にできるのですが、

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ベネチテス類、けっこうややこしいです!!植物はみんなそうなんですが葉にだけ・幹にだけ・花(生殖器官)にだけという名前の付け方になっているのでそう簡単には実像がつかめないです。なのでちょっとこじつけがましいところがあるんですが……、独特の生殖器官のことは書いておきたいということで、ここに主人公の相棒の苦労ポイントを持ってきたのです。写真は両方国立科学博物館のですが、上は特別展の「国立公園」展のものです。今ならなんと日本中の国立公園の自然が知れるビッグボリュームな特別展が通常の入場料で見学可能!!要予約!!

ベネチテス類のことを知るために、今回地元の図書館に幸運にも収められていた古植物学のとても詳しい本を参考にすることができました。またここまでの写真を撮らせていただいたりモデルにさせていただいたりした施設のおかげもありました。私の小説でこうした文化施設を身近に感じていただければと思います。

今回で第九集の収録分が揃いました!オンラインイベント「どこでも博物ふぇす」「博物クリスマスデリバリー」「いえもにあ」でLv100第九集を頒布予定ですのでお楽しみに!

第七十一話以降は長編にするか従来どおりの短編も並行して出していくか未定です。短編でやりたいネタもたくさんあるけど……きつそう……。

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