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LIBRARIAN|維月 楓の小部屋

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モーヴ・アブサン・ブック・クラブの司書、維月楓の小部屋。詩人・研究者・翻訳家。古今東西の女性/クィア詩人の作品を読み解くことを通して、新たな生の軌跡に敬愛を捧げている。
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2022年12月の記事一覧

松下さちこ|わたしは夢見る「博物画」

 胸躍らせる人々の群れを抜けると、モーヴ街7番地「スクリプトリウム」に写字室が立ち現れていた――。新たな入居者である松下さちこ様の作品は、科学的記載を重視した「博物画」のような簡潔な表現で描かれながらも、豊かな感情が見出される植物や鉱物、生物と、生命を宿した書き文字(カリグラフィ)が見事に融合しています。  2023年9月霧とリボンにて開催予定の個展《惑星の花びら(仮)》の序章となる作品群をお楽しみください。  太陽のような薔薇として咲く「自己」、思惑の雲の涙、結晶となっ

Belle dea Poupee|クリスマスパーティーの後ろ姿

 Belles des Poupeeさまの制作するヘアドレスは、いつでも少女の夢を叶えてくれる。クリスマスパーティーの招待状を眺めながら、今年は何を着ていこう。 *  足元軽くパーティー会場まで駆けていきたくなるようなキャノチエ — カンカン帽 — 。藤棚のように濃いモーヴ色が、淡い菫の花にふわりと被さる。  冬の静かな空気を思わせる、爽やかな装い。大ぶりのリボンは、後ろ姿を鮮やかに演出してくれます。 *  チャコール地が、暖かく居心地のよい部屋のように包み込む。耳

くるはらきみ|くすしき花の香り

 聖書の伝統を踏襲しながら新たな解釈をもたらす、くるはらきみさまの宗教画。本イベントでは、降臨節を祝うにふさわしい二作が届きました。  くるはらさまの作品に特徴的な、まあるい瞳。聖母マリアの半ば閉じられた目は、生まれたばかりの幼子であり、神秘的な花のように神の言葉を身にまとうイエスを見つめます。  エサイの根より生いいでたる救い主。背景の絡まりあう蔦は、純なる出自とともに繁栄を暗示する。天使が慎ましく祝福に訪れ、白く可憐な花を差し出します。花はかぐわしい香りを放ち、世に遍

monomerone|“菫色の信仰”を見つけて

 どこかで誰かが身に着けていた、架空のアンティーク作品を制作されているmonomeroneさま。  少女たちの“菫色の信仰”において使用された2作品に、“少年の祝福星”を表した1作品をご紹介します。希少な貝殻を模したアクセサリーが記憶する物語が解きほどかれます。 *  天へと伸びる一本の花が十字架を描き、清廉な信仰を象徴します。少女たちにとって、交わされた手と菫色の色彩は、まさにエルダーへの愛を表すためのもの。 “菫色の祈り”を捧げる特別な日には、ペンダントトップとして