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2024年9月に読んだ小説についてつらつらと

高島雄哉「ホロニック:ガール」(創元SF文庫)
ついに新学期である9月1日を迎えた舞浜南高校、守凪了子の視点で進むスピンオフ作品、遠くまで広がっていく世界にただただ圧倒されたなあ…。
幾多の世界で選択をし進んでいく彼女の姿に一つのSF小説としても心震わすものがありましたね。

織島かのこ「嘘つきリップは恋で崩れる2」(GA文庫)
1巻読んでからずっと読むのをとても楽しみにしていた2巻、大満足でした。関係が変わっても悩みは尽きない七瀬さんと相楽くん…それでも少しずつ時間を重ねて自分たちなりの道を歩み始める二人の姿は微笑ましく胸が温かい気持ちになったなあ。
織島かのこさんのお話、読み終わったあとに温かい満足感がたっぷり心に広がるのがとても良きで好きだなあ…と思う。
先日カクヨムで読んだ「私を嫌いなあなたが大好き」も読み終わったあとの余韻が良くて良くて…幸せそうな二人を見ているだけでこちらも幸せです……。

中田永一「私は存在が空気」(祥伝社文庫)
少しずつ未読作品を手に取っている中田永一さんの本。一度行った場所へ一瞬で行ける能力、限りなく他人から存在する気配を消す事が出来る能力…などなど超能力を身に宿す人々とその人たちと関わりをもった人々の日常は切なかったり、温かかったり、様々な色合いをみせる6つのお話が収録された短編集。『ファイアスターター湯川さん』が一番好きだったなあ、表題作の『私は存在が空気』の恋愛模様の行方も面白く読みました。

河野裕「彗星を追うヴァンパイア」(角川書店)
今年のベスト本がまた1冊増えました、いやはや…発売するまで楽しみすぐてドキドキしていた河野裕さんの新作。たとえどんな事態になっても誠実に未知と向き合う人が存在し進み続けるかぎり、それはいつの日かきっと解き明かされていくのだろうなあ…と、強く真っ直ぐに信じられる物語でした。人が持ちうる知性が手を伸ばし続けることの美しさ……。河野裕さんのお話はいつだって純粋な誠実さが眩しくて好きになる…。
是非とも強くオススメしたい一冊。

原作:「きみの色」製作委員会 著:佐野晶「小説 きみの色」(宝島社文庫)
とてもいいノベライズでした、映画と同様に感動したなあ。日暮さんを始めとして、作永さんや影平くんもあの場面ではどういう心境でいたのか…など、この作品がより深く好きになる、そんなノベライズだったように思います。影平くんが映画から受ける印象以上に音楽好きだと知れてなんだかすごく嬉しい気持ちだったり…。小説だと自分のペースでじっくり読んでいた影響か涙腺ゆるゆるポイント多かったなあ…。

河邉徹「流星コーリング」(ポプラ文庫 )
河邉徹さんの作品どれも私の好きな雰囲気でとても良きです。
高校3年生であるりょうは受験生の日々を過ごしながら同じ天文部に所属する詩織、洋介、真希と共に学校生活を楽しんでいたが、ある日広島に人工流星が流れることを知り…。終盤は涙こらえきれない切ない気持ちいっぱいで読んでいたなあ…。
当たり前に過ぎていく日々…それこそがどれだけかけがえのない日々なのか…流星の降る日に明かされるそれぞれの抱えた気持ちに心震えた……ああ…。言葉にした想いも言葉にしなかった想いもお互いにしっかり伝わっているような想いを寄せ合う詩織とりょうの二人のやり取りがとても好きだでしたね……。私の好きな春夏秋冬の季節が感じ取れるのもお気に入りポイント。

はやみねかおる「少年名探偵 虹北恭助の新冒険 新装版」(星海社FICTIONS)
若旦那たちの『リターンズ』おもしろかった…!夢中になりストーリーを追っていたなあ。今巻は若旦那たちの活躍(?)が中心のお話に感じましたね、目に映るすべての物事を映画に繋げて考えている熱い映画魂に心動かされた。あの場面の強烈な右フックはびっくりしたと同時に大笑いした、それだけ待っていたんだろうなあ…(笑) 微笑ましい。
今巻もカバーイラストの二人の幼なじみの気安い雰囲気がとても良きです、素敵。

あさのあつこ「ガールズ・ブルーⅡ(文春文庫)
1巻読んでから2年もの月日が経ってしまったなあ…。進むべきその先の進路への答えを探して高校生活最後の夏を過ごしている理穂、美咲、如月の3人。迷って立ち止まって考えて話して彼女たちや彼はどんな道を歩んでいくのか…青春グラフィティなシリーズ第二弾。
『桜貝』の理穂と美咲の多くを語らない静かなやり取りにじーんときてしまったなあ…好きな場面でした…。その時その時にしか感じ取れないものを胸に秘めてどれだけ悩んでもいいと個人的には思う、進んだその道で理穂、美咲、如月が笑顔でいられる未来であれと願う……。

安里アサト「86―エイティシックス―Ep.13 -ディア・ハンター-」(電撃文庫)毎巻毎巻とてつもないなあ…どこにも平穏という言葉は転がっていない…。仔鹿、レギオンの猛攻、武装蜂起、次から次に巻きおこる出来事によって人の心がくずれていく姿にゾッとしてしまった…まさにこれぞエイティシックスと言いたくなってしまう巻でした。ライト巻のあとはそうなるんだろうなあとわかっていてもこれは…。
一番に相対すべきものはなのはなんなのか…目の前に迫った脅威は明らかなのに人間はいつも……。もうここまできたらどんなにしんどい展開きても見届ける気持ちでいますね、続きの新刊をゆっくり待ちましょう。

織島かのこ「甘党男子はあまくない ~おとなりさんとのおかしな関係~」(メディアワークス文庫)
登場するお菓子がどれも美味しそうで食べたくなって仕方なかったなあ…。失恋の反動からお菓子を作りすぎてしまった糀谷胡桃は隣人にお裾分けをするがそこには甘い物に目がない隣人が住んでおり…。
ファミレスの場面の痛快さ…(笑) アップルパイやガトーバスクなど…胡桃さんの作るお菓子が次々に登場し甘い物好きにはたまらないお話の数々でした。隣人である佐久間さんとのゆっくりと進展(?)していく恋愛模様も良きでした。メインの胡桃さんと佐久間さんだけではなく、夏原先輩や筑波嶺さんの周りに居る人たちももすごく好きな登場人物でしたね、筑波嶺さんいつも二人の事をラブコメ目線で見ていて大笑いしてしまう、楽しすぎる。
カクヨムのほうに続きがたっぷりあるらしく少しずつ読んでいこうと計画中。

空木春宵「感傷ファンタスマゴリィ」(創元日本SF叢書)
幻想とSFに彩られた空木春宵さんの第二作品集。次々とあらわれる世界観にどっぷり入り込んでしまう…濃密…堪能しました。『さよならも言えない』がこうして1冊の本に収録されたことをとても嬉しく思う。『4W』も心に残るお話だったなあ…。

野村美月「”文学少女”と慟哭の巡礼者 」(ファミ通文庫)
再読。井上ミウが小説に込めた真っすぐな気持ち…そして彼女がそれでも願ったほんとうの気持ち…彼や彼女だけではなく、それぞれの胸に宿ったであろう追い求める星を思うと涙ぐんでしまうくらい胸が温かい気持ちに満たされてしまったなあ…。
遠子さんがゆっくりと優しく語りかける時、そこに遠子さんの伝わってほしい…伝えたいという強い気持ちを今巻は強く感じてじーんとしてしまった…。

水守糸子「みにくい小鳥の婚約」(富士見L文庫)
Web連載で既読済み、ことりの歌うことがすきという純粋な気持ちが堪らなく好きだったなあ…その気持ちをことり自身に思い出させる馨の真っすぐで温かい言葉も好きで…。一人の少女が自らが歌う場所をこいねがい、定めるまでの和風ロマンス。
本編の面白さに加えて番外編の3つのお話もよかったなあ…特に『ことりの秘密フォルダ』がお気に入りでした。その宝物がこれから抱えきれないほど、たくさん増えていくといいな…と思ったり。
私は歌姫というものに心の底から弱い気がするんだよなあ…(笑) 
続きも一応、Webのほうで連載される(?)ようなので、それを楽しみにゆっくり待ちたいと思います。

八目迷「ミモザの告白 5」(ガガガ文庫)
完結巻。終わってしまいました…見届けました…。
咲馬と汐がどこに辿り着くのか見守るように読んでいたなあ…互いに大切にしている気持ちをその度に確認しそこから悩み模索して見つめ直していく限りこの二人の未来はきっと幸いなもので満ちていくのだと思う…。
もうなんだかカバーイラストの汐の表情がすべてのような気もする…。咲馬や汐が自分たちらしく生きられる日々が…ずっと穏やかな日々が続いていってほしいという願いだったり祈りだったり…様々な気持ちが通りぬけていく完結巻の余韻…。ありがとうございました…。