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Life Is Beautiful

「優勝は、錦鯉ーーーー!!!!!!」


会場の大歓声と共に錦鯉の二人は抱き合って涙を流していた。それに釣られて審査員も涙ぐむ様子が印象的だった。前年に一文無しとして参上したコンビが翌年に一攫千金を達成し、M-1グランプリ2021は幕を閉じた。

決勝戦では初登場のコンビが多かったにも関わらず、どの組も堂々たる漫才を見せてくれた。さそり座の女、風猫、一日市長、肉うどん、物欲。改めて羅列してみるとそれぞれ個性があって面白い。

大会後にはネット上で漫才論争が起きたり、兄妹のツイートが話題になったり、コンビニで特定の商品が爆売れしたりと大会の影響力はすさまじいものだった。


今年ラストイヤーを迎えたコンビもいた。アルコ&ピース。ハライチ。二組は敗者復活戦に残り、それぞれのコンビらしさを前面に押し出したネタを披露してくれた。出番が前半だったにも関わらず高評価を得たハライチが敗者復活枠として決勝に登場し、これまで見たことのない斬新なネタを披露した。出場資格は15年という制限があるからこそ、一大会に全力を注いで質の高い大会になるのではないかと感じる。

M-1グランプリは制作陣の本気が伺えるところも好きだ。煽りまくりの演出に熱い大会PV、芸人たちを追ったアナザーストーリーと、お笑い好きにとっては至れり尽くせりのフルコース。何だかドラマを見ているようで、毎年この時期は熱中してしまう。


第七世代が台頭する昨今のお笑い界で40代と50代コンビが漫才の頂点に立ったことは、第七世代以外の芸人や同世代の国民に勇気を与えたのではないかと思う。新型コロナウイルスによって日本全体が沈みがちになった2020年にバカ笑い一本の漫才で決勝に登場し、2021年にはさらに進化した漫才で日本の頂点に立ってしまった。まさのりさんは昔のプロフィールで書いた「遅咲き」が現実のものになると予想していたのだろうか。もしそうだとしたらバカもバカにできたもんじゃない。

20代の霜降り明星でも限界だったという優勝後の過密スケジュールをあの二人がこなせるかどうか心配ではあるけれど、審査員が言っていたように、これから先もずっとあの漫才を見て笑いたい。何歳になっても時代が変わってもバカ一本で戦っていてほしい。改めて最終決戦のネタでまさのりさんが放った「Life Is Beautiful」の一言が妙に頭に残る。


6017組の漫才師の皆さん、今年もたくさん笑わせてくれてありがとうございました。来年もまたたくさん笑わせてください。

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