「映画を早送りで観る人たち」を読んだ

podcast番組「奇奇怪怪」のdiscordで紹介されていて読みたくなった本。
新書だしさくっと読めるだろと思って読んだら2時間くらいで読めた。

映画は早送りで見ないですが、アニメやyoutubeは早送りで観ることがあります。アニメは仕事上どうしても話の筋を知っておかなければいけないのに話数が多すぎて短期間ではとても追えない、ということで早送りで観たことがある。youtubeは解説系や紹介系動画は早送りで観ることがある。そもそもがダイジェストなので。

なぜ映画を早送りで観るのか?本書では理由は3つ挙げられている。

  1. 作品が多すぎる

  2. コスパを求める人が増えた

  3. セリフで全てを説明する作品が増えた

そしてその3つにつながる根本的な理由は
・今の若者はとにかく忙しい
・オンリーワンになりたいし、なることを求められている
というところらしい。

前者は私もいたく共感する部分で、若者だからというわけではないが、自分の可処分時間に対して追いたいエンタメが多すぎる!アニメも映画もドラマも観たい、本も漫画も読みたい、ゲームもしたい。かといって何も考えずぼーっとしたい時間だってある。そのうえ毎日仕事で神経すり減らしているので平日は心を無にしたい!なので情報だけ追いたい場合は早送りをしたり、ながら見や、ながら聞きをする。この「情報」に映画やアニメが含まれるようになると早送りの対象になるって論だった。納得である。本も、実用書は斜め読みしたり、目次から読んで必要なところだけ読んだりする。この本の読み方は大学生時代の教授から習った。

私にとってエンタメ、特に映画は「視聴=体験」なので早送りの対象にはならない。でも前述のように「観たという事実」が必要なこともあって、その場合は早送りでもなんでもいいので「観る」。本によると、若者はたくさんのSNSを使うし、それぞれのSNSの中にまたたくさんのコミュニティがあるので、とにかくたくさんの話題についていく必要があって、コスパよく情報収集したいんだそうだ。その状況は想像ができるし、この時代に学生じゃなくてよかったなと思う。

忙しいが故に「感情を動かしたくない」という話も身に染みて「わかる…!」と思ってしまった。本当に忙しいと作品を見る余裕がなくなって、でも何もしないと気分が落ち込むので、何かの情報に触れることで心の平坦を保つことが、私にはある。だからyoutubeのなんでもない動画を垂れ流すしてぼんやりする。本を読んだり、メッセージ性の強い作品や、続きものは集中力を求められるので観れない。さらに、心が疲れていると主人公が辛い目にあう作品は見られない。(映画「フェイブルマンズ」は素晴らしい映画だが、主人公がユダヤ人であるというだけでいじめられるシーンは本当に心が落ち込んだ。)これは私だけかと思っていたが、どうやらかなり多くの人がそうみたいで、なろう系作品にチート主人公が多いのはこのためらしい。最初から最強であれば落ち込むことはない。ラブコメも、最後は必ず結ばれることがわかっているからいいらしい。みんなコスパよく快楽を得たいのだ。。。

2点目の「オンリーワンになりたい」については、社会にニーズのある能力を求める傾向がZ世代にあるらしい。これは竹田ダニエルさんの「世界と私のAtoZ」にもあって、当時はいまいち理解ができなかった。私が学生の頃〜社会人になりたての頃は「何者か」になりたい欲は確かにあったが、そういった個人のどうこうよりも、社会に対して発信したいという思いがあるらしい。

これはたとえばリーマンショック、東日本大震災、コロナショックなど社会が大きく落ち込む事象を目の当たりにして「長期スパンで人生をとらえても仕方ない、今役に立つ能力が欲しい」と感じているということらしく、それはなんだか仕方ないなと思う。私もどちらかというと世の中に諦観を抱いている方だが、私よりも下の世代は、短期間のうちに自分自身に影響のある形でこういう暗いニュースを受け止めることいなると、そういう思考になっても仕方ないと思う。私の学生時代も暗い話題が多かったが、直撃するのは上の世代で、まだまだ自分にとっては他人事と思えるニュースが多かったと思う。

この本の「若者論」は若者に理解を示そうとしているが、どちらかというと否定的に書いているので全てに同意はできない。評論を読まない近頃の若者はけしからんみたいな論調が、この本の中にはあるのだが、評論ってそんなみんな読むんですかね…?触れる機会があまりない気がするのですが…。ただ、「映画を作品ではなくコンテンツとみなし、鑑賞ではなく消費する場合に早送りされる」という論は腑に落ちた。個人的には世に出た時点で受け止め方はその人の自由なので、鑑賞の仕方を制限する権利は作り手にはないと思う。

なんにせよ、まじで作品は多すぎますね…今日も積み本と積みドラマ、積み映画が増えていく毎日です。未聴のpodcastも積んでるよ!



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