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IT エンジニアを正社員で採用する理由

こんにちは!めもりーです。

シードラウンドなどでシステム開発を行う際に必ずと言っていいほどでる問題がエンジニアを採用するべきか。採用するなら業務委託か正社員か。採用しないなら外注かです。

エンジニアリングマネージャー成り立ての当時は,あまり契約形態に拘りはなかったですが,今の私であれば正社員数名を採用かつシリーズによって何人かの業務委託と即答できます。

このような考えに至った経緯を順を追って解説していきます。

※ 以下の文は,業務委託 = フリーランス,外注 = 受託企業への委託 という言葉の使い分けをしています。

正社員と業務委託の相違点

正社員と業務委託の大きな違いは労働基準法を守るべき対象であるか,そうでないか,だと考えています。

業務委託が重宝される理由として,スポットでの開発業務を終えたり,会社のキャッシュが枯渇しそうになったタイミングで契約解除を申し出ることができるという利点です。

現時点での労働基準法では,労働者側によほどの過失や社会的に見て解雇されてやむなしであると判断されないのであれば,解雇というのは非常に難しいとされています。

例えば判例では,無断欠勤をしただけでは解雇が無効であるとされたり,会社の経営不振だけでは解雇が無効であるなどが挙げられます。

また,正社員である場合,法定福利費をザックリ計算として,年収の 15% 程度,つまり年収が 500 万であれば 追加で 75 万程度(計 575 万)支払う必要がでてきます。

ゆえに,正社員を採用するということは,会社として,それなりのリスクがあると考え業務委託の採用を進めるということも大いにあるのではないでしょうか。

※ もちろん,本来は正社員を採用したいのだけれども,ツテがないということから,やむなしに業務委託を採用しているパターンもありますが,そういったエッジケースは考えればキリがないので割愛します。

外注と業務委託は 「ビジネス」,正社員は「身内」

外注や業務委託の根本にあるのは「ビジネス」です。これは私自身が受託企業に在籍していた経験や,個人で業務委託活動を経験していた過去があり私自身が強く感じていることです。

受託企業の主目的は売上を上げることです。そこに所属している従業員の生活を守る必要があるためです。また,会社役員も同様に生活や,もしくは裕福な生活を送りたいなどの背景もあるかもしれません。

業務委託も同様です。自身の生活を守るために,ビジネスとして会社と契約を結び,業務委託先企業にコミットをしているはずです。業務委託の場合はスキルを研鑽したいであったり,年収(個人事業主なので厳密には売上ですが)を上げたいなどが背景としてあるでしょう。

本来は自動化できそうかも…と思ったものでも,発注側がそういうのであれば…となって仕事を引き受ける会社もあるはずです。

また,関係値が築けていない場合は,そもそも深い業務知識を得られるわけもないため,提案しようにも提案できないということもありえます。

そのため,業務時には自分たちのリソースが不要な形でお金を得られる方法が検討の一つになるはずです。もちろん,これは性悪説です。しかしありえる懸念点でもあるはずです。

※ 中には無償でも良いから学ばせてほしいみたいなエッジケースも有るかと思いますが…。割愛します。

一方で,正社員は所属企業の身内となります。SO の付与であったり,従業員本人の生活を守る必要が出てきたり,正社員特有のケアなどが必要となります。

つまり外注や業務委託と比べて関係がドライになりにくく,人間関係の維持ができる人物であったり,事業を成長させるために何かをしてくれることを期待するなど,次第に外注や業務委託よりも求められる期待値そのものが異なってきます。

シードからアーリーにかけては,おそらく正社員と業務委託の扱いの違いはなかなか見出しづらいかも知れません。しかし,シリーズが進むごとに求めるものが変わっていくというのは,現職を通してすごく実感している事象の一つです。

例えば,業務委託にはなるべくアプリケーションへのコミットに注力してほしいことから,ミーティングの数を極力減らすように努めたりです。
それは時間単価もさながら,人間関係等の制約が薄いという反面,アプリケーション等へのコミットのパフォーマンスを求めたいという意思が,シリーズが変わることで,おそらく働いているのだと感じます。

※ 脱線しますが,正社員を採用することによる助成金,いわゆる雇入れ関係の助成金などがあります。

エンジニアの評価はエンジニアしかできない

こういった言説をよく耳にすると思います。
外注や業務委託にお願いしたとして,その成果物の評価は誰が行うことになるのでしょうか。

セキュリティの脆弱性を抱えているコードや,コードのクオリティの担保は一体誰が行うのでしょうか。

そうなった時,共通のポリシーの定義であったり,取りまとめを行う人材が必要となります。

エンジニアではない人がソースコードを読んで,セキュリティに課題があるかを判断したり,クオリティに課題があることを判断したり,外注や業務委託が提案している内容に課題があるかどうかのジャッジが果たして適切にできるのでしょうか。

外注や業務委託へセキュリティの脆弱性であったり,アプリケーションのクオリティ,業務プロセスの自動化,その他開発関連業務において適切な指示及びレビューができるのはエンジニアだけになります。

つまり,外注や業務委託の成果物の検収をエンジニアがやらなければ,何かしら課題を抱えているものでも,見逃してしまうもしくは,課題自体に気づかないという可能性がありえるわけです。

ゆえに,自社内で定義しているコードの品質が満たされているかの評価ももちろんエンジニアにしかできません。

「それは作った会社・業務委託が悪いんじゃないか」と考える人もいるかもしれませんが,それだけではありません。問題が起きた時は「その品質に満たなかった会社・業務委託を選定した会社が悪い」と捉えられることもあるのです。

ましてや,社内の事情を詳しく知らないとなった場合,業務プロセスなどの自動化の提案については外注や業務委託にお願いしたとしても,顧客が本当に求めていたものを作るためにはどれだけの労力が必要となるのでしょうか。業務プロセス,社内の人間関係の把握などなど…

そう考えると実は正社員よりもキャッシュアウトは大きくなるのではないでしょうか。

このような背景も含めて,社内で成果物に対して評価ができる人間,つまりエンジニアの正社員が必要であると考えられます。

反復的エンジニアリング

では,社内で品質の定義や自動化の仕組みが終われば,エンジニアを維持している必要がないと考えるかもしれません。

しかし,アプリケーションというのは安定的かつ安全に提供し続けなければ,いずれ綻びが出るものです。

例えば,アクセスのスパイクが発生した時,予期せぬ例外によってサービスがダウンした場合,誤ったデータを登録した場合…などシステムを運用する上では起こりうる問題があります。

しかし,外注や業務委託ではどうでしょうか。外注であれば,業務時間外であればもちろん対応はできませんし,業務委託も同様です。

あえて,認知していたのにも関わらずこれらの課題を解決していない可能性もあります。

もしくは高い金額を払っているのに認知すらしてくれていなかった,など逆のパターンもありえます。

個人情報が流出してしまっては,被害によっては,数億円規模,場合によっては取り返しのつかないお金を支払う必要が出てきます。

これらの課題を加味した時にリスクがあるのは,外注や業務委託,それとも正社員どちらでしょうか。

さいごに

もちろん,業務委託先や発注元のことを真剣に考えてくださって,提案してくれる企業や業務委託の方もいらっしゃいます。

外注先企業が凄腕であるか,業務委託が凄腕であるかの評価を誰がするのか,となったときに結局社内の事情に詳しいエンジニア,つまり正社員のエンジニアになると考えています。

そういった観点から考えた時に強固なエンジニアリング,例えば堅牢なアプリケーションを作る,品質の高いコードであることを維持するなどは,正社員のエンジニア同士でなければ,互いを評価することが難しいため維持,つまり反復的に行うことができないと考えられます。

何が事業成長のためになるのかを考えられるのが正社員エンジニア唯一の特権なのではないでしょうか。

※ もちろん,これは私の直近の考え方なので,経験を重ねるごとに考え方が変わるかも知れません。他の方の考え方も正直知りたいと思っているところです。

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