『香水』瑛人 クズ女目線

今流行っている『香水』という曲をご存じだろうか。

3年前に別れた元カノから突然連絡が来て会った。けれどやっぱり3年前とは違うんだね。でも君のそのドルガバの香水のにおいを嗅ぐとあの日に戻るようだよ。

的な曲だ。

これに関して深い考察などはしていない。きっと歌詞を見たらある程度の想像がつく内容だからだ。

私が今回したいのは「クズ女目線の香水」である。

私はこれまでのノートでも書いたが「クズ」だ。

この私がこの『香水』で描かれる女であればどういう思考で、なぜこのような行動をしたのかを考え、書いてみたい。

決して歌詞になっているわけではない。ただのごみ女の小説だと思って読んでほしい。


『香水 クズ女視点』 作・わたし

久しぶりにお酒を飲んだ。お酒は飲めば飲むほど強くなる。

3年前、19歳だった私はいけないことだとわかりつつもブラッドオレンジ色の甘い誘惑に口をつけた。

あれから3年、今では少し背伸びをしてスパークリングワインを年上の彼氏と傾ける喜びを覚えた。

しかし、今日の私は虫の居所が悪い。

7歳年上の彼はとてもやさしい。しかし、今の私が求めているのは優しさではなく「楽しさ」「同じ温度の思い出」「私を満たしてくれる何か」


私は酔った勢いに任せて3年前の元カレに「いつ空いてるの?」ってLINEしてた。


一週間後、あの頃には考えもつかなかったおしゃれなバルで会う約束をした。彼氏には「高校時代の友人に会う」と嘘をついて。


私は19の頃とは違う姿で彼を、元カレを圧倒したいと思った。

あの頃は決して着なかったセクシーなノースリーブの洋服、あの頃は決して履かなかったヒールの靴。

昔の私との差別化を図りたくて柄にもなく張り切っちゃった。

でも一つだけ。ひとつだけ同じものを身に着けるの。

ドルガバの香水。




「久しぶり」とほほ笑んで約束から5分後に入店した。

本当は20分も前から近くにいたのにね。


「久しぶり」この一言で緊張しちゃって。声、震えませんようにって思いながら言葉を発した。


あの頃は飲まなかったスパークリングワインを頼む私を見てちょっと動揺してたの気付いた。
だってあなた動揺した時鼻を触るもの。三回も触ってたの見逃さなかった。


海に行った話、よく覚えてるわねって笑いながら聞いた思い出話、もちろん私もしっかり覚えていた。沢山写真撮ったよね。


そのあともあなたのお話を聞いて感じた。

「私、あなたと付き合ってた頃からクズだったし空っぽだったよ」


でもそんなこと言えないから「成長って捉えよう」って笑いかけた。



「可愛くなったね」なんてもう聞き飽きたセリフを私の右耳をくすぐるから思わずいつもと同じ対応しちゃった「うふふ、ありがとう」って。

本当はすごくうれしかった半面、「そりゃあそうでしょ」って思った。


今の彼氏に影響されて吸い始めた煙草に火をつけた瞬間、あなたは鼻を触っていたね、一瞬だけだけど。

ごめんね、3年って意外と長いの。


でもやっぱりあなたにはあなたの魅力があった。好きだった過去を思い出して悲しく、はかない思い出に涙がこぼれそうになった、

あなたにも同じ思いをしてほしいからお手洗いに立つたびにあの当時のドルガバの香水をつけたわ。

昨日買ったの。3年ぶりに。



あなたと過ごす時間、とても楽しくてとても苦しくて、とても過去が愛おしい。

沈黙が流れるたびにお酒を口に運んじゃう。

あのころとは違う強いお酒。


きっと酔っぱらっちゃう。


でもいいの。


今日はお家に帰らなくてもいいから。