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「省察」するということ


 突然ですが「省察」という言葉を見たり聞いたりしたことはあるでしょうか。知っていても言葉にすることはあまり無いかもしれません。近い意味の「反省」はよく使われるのに、何が違うのか。ただ、この「省察」は今の私にとって非常に大切なことであり、今後の人生にも大きく影響すると思います。なので、今回はその「省察」について、簡単な説明と考えをまとめてみます。いつもより少し真面目な話ですが、変わらずナラティヴに!

「省察」って?

 そもそも「反省」と「省察」の違いって何でしょうね。これを機に改めてググってみました。広辞苑先生によると

・反省…自分の行いをかえりみること。自分の過去の行為について考察し、批判的な評価を加えること。
・省察…自分自身を省みて考えめぐらすこと。しょうさつ。

だそうです。あまり違いは無いように見えます。しかし「考察し、批判的な評価を加える」と「考えめぐらす」は結構違う。この違いでも少し見えてきていますが「省察」は終わりが示されていないんです。評価を加えず、考えをいつ・どこまでめぐらせる?やろうと思えば際限が無い。「省察会」ではなく「反省会」なのもそのためかな?ここまでを言い換えると、自身の行為を省みて考えをめぐらし続けることが「省察」であると言えますね。

「省察」を学び「省察」から学んだ

 では、なぜこれを私は大切にしているのか?その背景にはまず大学院での学びがあるのです。
 私が通う大学院プログラムでは、理論と実践をつなぐ鍵として「省察」に注目し、その深め方のトレーニン グを行ってきています。これは教師教育学者F.コルトハーヘンの示した省察が進むプロセス「ALACTモデル」↓に基づいています。

F.コルトハーヘン(2012)より「省察の理想的なプロセスを説明するALACTモデル」

このモデルにおいて、特に重要であるのが「本質的な諸相への気づき」です。出来事の振り返りから次の行為の選択肢を決めるのではなく、ふりかえりによって生まれた課題や疑問をより掘り下げていくことで「本質的な諸相」を探っていきます。

対話型模擬授業検討会の取り組み

 ここまでで記したことを代表する取り組みとして「対話型模擬授業検討会」があります。模擬授業検討会は、教職を志した方は一度は参加したことがあると思います。一般的な流れは授業をして、その授業に対し参加者が意見を言っていく…「ここが良かった」「ここは直した方がいい」という学習者側の感想や、いわゆるベテランからの指摘を得る形になります。しかし、対話型模擬授業検討会の目指すところはそこではありません。授業者と学習者がその時起こったことについて感じたこと、考えたことをナラティヴに出し合っていくことで、授業者の思いやお互いのズレといった、まさに「本質的な諸相」を探っていきます。当大学院の出している資料にわかりやすい図があったので引用してみましょう。

左:従来 右:対話型

 どちらが良いとは言い切れませんが、どちらも経験した身として一つ気づきがあるので少し書きますね。対話型模擬授業検討会の特徴としてあとでジワジワ効いてくるように感じます。これはその場でフラットに授業について考えを出し合ったからこそなんじゃないかな。あの場で出し合ったことが自身の授業づくりに影響を与えた、というよりかは「そうか、自分はこういう思いで授業を作っていたんだ!」と、何度かなりました。少しズレますが私の指導教授も以前「何事も、成果はその場で得られるとは限らない」と仰っていた記憶があります(その教授こそこの授業を担当しているのですが)。
 ここにも書ききれていないことは沢山ありますが、とにかく対話型の省察の価値を身をもって味わったからこそ、気付いたら普段から大切にしているのかもしれません。気付き!

ライフワーク?として

 省察にある一定の価値を見出したからこそ、それをどこかで活かせないかと思うのが人間です。ただ、これから書くことは主観だらけですがご容赦ください!

 私は今後教員として授業や校務に勤しむわけですが、そこで何かの形で生きる考え方・行為であるのは当然です。
ただ、なんというか、私の今の生活、の手前この省察という行為がアンサンブルの場において非常に重要に感じてなりません。「歌いっぱなし」にせず、どうにか演奏や練習を日々省察することはできないものか。「指揮者先生」とのズレがどこかに無いのか?少なくとも、歌い手と指導者がフラットに演奏について一度立ち止まって考え合う時間は一定の価値を持っているはず。これは私の研究「「問い」と「対話」を軸にした合唱活動の価値」も影響しているのですが、それはまた今度書きますね。とにかく「省察」は私が携わる団体や活動で大事にしていきたい…その価値を見出してもらうことを今後の人生どうにかやってみることはできないかなあと、現時点の小さな夢があります。

おわりに

今回久しぶりだったので、少し真面目に書いてみました。実はこれからとあるワークショップに携わることになったのもキッカケです。大学院で色々やってますが、やはり学びの軸は「省察」なんだと思います。社会に出てからまた考えは変わっていくでしょう。ひとまず大学院最後の後期が始まる前の記録として残しておこうと思います。
ではこのあたりで止めておきましょう。最後までありがとうございました!

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