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さあ!命の波に乗れ!

朝に感じたさざ波

7月中に産まれるかなぁ…なんて思っていたおチビは未だにお腹の中で8月を迎えたやさぐれ妊婦みのりん。

きっと無重力で温かい水の中で過ごしているのがまだ心地いいのかもしれないなぁ…なんて思っている時に住んでいる山形県が記録的な大雨の被害を受けて道路が冠水したりと結構な被害を出した。

そんな迂回路を使いながら妊婦健診に向かった日の朝…みのりんは命のさざ波を感じた。
今までのお腹の張りにはリズムは無かった。
でも、今回のは確実に波の満ち引きのようなリズムがある。

予定日から1週間ほど早い。
少し早めにその時がきた。

『たっつん、入院セット持っていくよ。
たぶんきてる。』

朝のうちにシャワーを浴び、身支度を整えて呼吸をさざ波に合わせた。
きっと、きっと大丈夫。

今日の内に全部終わるはず。
手には伊弉諾神宮の桃のお守り(早く子宮口パッカーン!するように)とポケットには直前に届いたお守りを忍ばせた。

たっつんもいないし、母の立ち会いは断った私の傍には…神さまがついてる。
そう思って車の中でもずっとお守りを握っていた。

どんどん大きくうねる。

ちょうど定期の妊婦健診が入っていたその日にやって来た命のさざ波。
やっぱり先生の診断は『陣痛が来ている』というもの。

準備が出来ているやさぐれ妊婦みのりんはとうとうその時を迎える為にそのまま入院することになった。

そこから入院手続きと共に命の波に乗る作業は同時に進んでいき、今までずーっと続けてきた呼吸法とスマホを握りしめた先に繋がるたっつんとのやり取りを糧に波を受け入れ、受け流した。

どんなお産になるだろう???

今までこの時の為の日々を過ごしてきた。
それでもどうなるかなんて誰にも分からない。

『早いですね。
もう子宮口6cm開いてます。』

助産師さんはそう言って更に続けた。

『力を逃がすのがすごく上手です。
もうここまできたら痛みで声が出てる人も多いのにスゴいですよ!

着実に今までの成果が出てる。
良かった。
ちょっとそんな風に安心していたら更に子宮口の開きは進み、波もどんどん大きくうねってくる。

その日の夕方にもなると脂汗が滲んで手に力が入り、脱力していた体が本能的に身をよじって逃げようとするようになった。
足が抜けそうなくらいに痛い。

最後の最後、やさぐれ妊婦は大波に呑まれた。

『………痛い!!!!』

命の誕生は祝祭なのだ!!

ちょうどその時、見えない世界では何が起こっていたのかやさぐれ妊婦が感じたことをお伝えすると…。
そりゃあもうイザナミのおばあちゃんを筆頭に神々が歌って踊って、ついでに天使がラッパを吹き鳴らしての盛大な祭りが開かれていた。

厳かな雰囲気の…というよりは躍動と力強さに溢れたそのお祭りは白金の光に包まれた上に金色の粒子が飛び交い、目がチカチカしそうだった。

その中を神さまが踊る。
天使が舞う。
その度に白金の光も金色の粒子もうねりにうねった。

『ほーっほっほっほ!!!
命の誕生!それ即ち!祝祭なり!!』

いったいこれはなんなのー!?

イザナミのおばあちゃんの常ならざるテンション。
アンジー(アマテラス)の鏡が光を放ち、イザナギのおじいちゃんとスサノオのおっちゃんはとにかく舞う。

こういうのが苦手なツクヨミさんでさえ、なんかよく分からん登場をしていた。
何この我を忘れた感じのトランス状態な激しい祭りは!

今まで聞いたことない自分の叫びも聞きながら、やさぐれ妊婦は分娩室に登場した産婦人科の先生の顔を見て、イザナミのおばあちゃんがこの産婦人科がいい!と言った理由が分かった。

先生の顔…超笑顔!!!

マスクをした上からでも分かるほどにそりゃあもうにっこにこ!!
会陰切開は出来ればしたくないと希望した私の為に入り口を必死にほぐして伸ばして広げてくれている助産師さんが『先生!もうパツパツです!』と泣きながら声を上げている隣でにっこにこ!!

『もっと頑張ってもいいよ!
頑張れない!?』←先生にっこにこ!
『先生~!!(泣)』←助産師さん

こ、この先生にとっても命の誕生は祭りなんだ!!
神々の感覚と同じなんだこの先生!!
人が痛みでのたうち回ってる時にちくしょー!

そして、おチビが産声を上げたその瞬間。
命の誕生を告げる伝令が各地各所に飛び交ったのだった。

御使いが来たのは●時●分頃だったと教えてくれたたっつんはぴったりと産まれた時間を把握していた。


お祭りにちゃっかり参加した人も(笑)

自分の体温なのか、おチビの体温なのか、それとも2人の体温が混ざり合っているのか。
産まれたばかりのおチビを体の上に乗せて、縫合に検査にとされるがままのみのりんはぐったりだった。

そんなこんなでやさぐれ妊婦はあれほど怖い嫌だ怖い嫌だ言っていたお産を…やっぱり怖くて嫌なままに終えたのだった。

笑顔の先生の『どうだった?』に盛大なため息混じりに返す。
『いてーもんは痛いわ。
お産ってたーいへん。』
『あは!そう、お産ってね、大変なんですよ。』
『いででで。』
『そりゃ縫ってるからね。仕方ない!』

縫合の手を止めない先生はやっぱり笑ってた。

命の誕生!それ即ち!祝祭なり!!
この世界に存在する全ての命が祝福を受けて世界に受け入れられている。
自分のお産でそれを私は目の当たりにした。

自分の存在に意味なんて無いとか、否定されているように感じている人がいるとしたら、私はこう応えよう。
『あなたを否定しているのはこの世界でも神々でもない。
人の作ったシステム、人の作った社会、他人、そして自分。
人を否定するのは自分自身を含めた人と人が造り出したものだ。
あなたは世界にも神々にも祝福を受けている。
あなたが存在しているだけで、世界の可能性は広がるのだから。』

こうして、やさぐれ妊婦のお産は終わった。
頑張るだけ頑張ったし、疲れるだけ疲れた!

結局のところ、こうなんじゃないか。

痛みの少ないつるすっぽんならぬにゅるすっぽんなお産を目指す!
そんなやさぐれ妊婦のお産はしっかりと痛かったし、にゅるすっぽんでも無ければつるすっぽんでもなく、実はお産後も看護士さんや助産師さんに人一倍気遣われるような状態だった。

まさに満身創痍。
時代が時代だったら私、お産で死んでるんじゃない?とさえ思った。

(こうなったのにもちょっとした理由があるのだけど、それは私の魂と潜在意識と顕在意識の問題なので省略!)

ただ、望まない妊娠からマタニティブルーになったことから始まったやさぐれ妊婦のお産は今までの自分を振り返って、救い上げて、なるように成った結果なのだと思う。

私の場合は妊娠出産を通してだけど、きっとみんながこうして自分の人生を自分のものにしていくんだろうってこと。

『よきかな。
まさにお前は自分だけのお産を成し終えた。
誉れである。
よく頑張ったな。』

イザナミのおばあちゃんの労りの言葉が身に染み入る…なんて思える余裕も無かったのだけれど(笑)
自分のお産をすることが出来たからこそ、不平不満をお世話になった先生や看護士さん、助産師さん、クリニックのスタッフの人にまでぶつけず、最後までやさぐれ妊婦みのりんで過ごすことが出来た。

これでやさぐれ妊婦は卒業。
これからも私はやさぐれながら、今度は育児をしていこうと思う。
きっとまた私だけの育児になる。

この積み重ねでどんどん自分の人生を自分のものにしていく。
母でも、やさぐれてても、私は私で存在していく。
やさぐれみのりんの日々はこうして続いていく。

今までお見守りいただいた皆様、ありがとうございます。
皆さんの思ったような結果では無かったかもしれませんが、これにてやさぐれ妊婦シリーズ終幕です。
これからはたつみのりの不思議育児生活をのんびりとやっていこうと思います(*´ω`*)

リアルな見えない世界の体験を綴ろうと思っています。自分が感じた感覚をそのままに。私の大切にしたい世界が伝わることを願って。見えない世界も大切にしたいと思う方はサポートしてくれると嬉しいです。