裁判員制度の問題点。

 裁判員制度は国民が刑事裁判に参加し、被告人の有罪・無罪をはじめ量刑をも決める裁判制度で、2009(平成21)年5月に始まり、今月で15年となる。抽選で選ばれた一般市民6人が裁判員となって、3人の裁判官とともに刑事事件を裁く刑事裁判に参加する中で、さまざまな問題が指摘されている。
 裁判員は特定の職業や立場の人に偏らず、国民に広く参加してもらう理由から、特別な場合を除いて、原則辞退はできない。それにもかかわらず、辞退率や欠席率が高く、大きな問題となっている。
 裁判員の候補者は選挙人名簿から無作為に選出され、年間約12万~13万人が選ばれる。選ばれた人に対し、裁判所での選任手続きに来るようにとの通知が送られる。しかし、裁判員に選ばれても、重要な仕事があるなどを理由に裁判員を辞退する人が多い。
 辞退率は裁判員制度が始まった直後の10年度は53%だったが、18年度は67%、20年度は66%を示した。裁判員の3分の2が辞退するという問題については、制度への疑問や不信が背景にあって、日当を含めて参加への動機付けが低いと言われる。
 また裁判員裁判が開始された09年には、第1回公判期日から判決までの期間の平均日数は3.7日であったが、17年では10.6日となっている。約3倍も審理期間が延長している。全体の4分の3は7日以内だが、裁判期間中ほぼ一日中拘束され、審理の期間が長くなればなるほど、負担が大きくなる。そのため長い拘束日数が理由での辞退する例も多い。
 刑事裁判は量刑がほぼ一定しており、裁判官が主導し、裁判員の意見が活かされる場面は少ない。また被告人が罪を認めている場合でも、裁判員裁判を開いており、量刑を決めるだけのために、多数の裁判員を拘束する必要はない。被告人が無罪を主張して、裁判員裁判を希望している場合にのみに行えば、裁判員の必要数はかなり少なくなるという意見がある。
 肉体的な負担だけでなく、心理的な負担も抵抗感につながる。裁判では凄惨な事件現場や遺体の写真などを見なければならない場合がある。ショッキングな写真を見たときの衝撃で心的外傷後ストレス傷害(PTSD)になったり、重い刑罰の決定に精神的な負担を感じる人もいる。
 その他にも種々の課題があるが、現在、裁判員制度は刑事裁判にのみ適用されている。法律は常識や道徳や倫理と共通するところが多々あり、これらの前提に立って適用する必要性があり、結論も共通する部分も多い。
 実際に離婚や不倫、交通事故、損害賠償、名誉毀損、土地境界の確定、相続、債権の回収、建物明け渡しなどの幅広く多様な問題を扱う民事裁判に裁判員制度が必要ではないだろうか。
 法的解釈しかできない司法の専門家の恣意的判断を正し、公的機関、企業、権力者、有力者などの強者の横暴を防ぐには、裁判員の正義、常識、道徳、倫理など一般感覚による判断が必要である。

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