五輪疑獄の一端。

 2022年10月18日読売新聞オンラインは、21年7月に開催された「2020東京五輪・パラリンピック」を巡る疑獄事件で、東京地方検察庁特捜部は大会組織委員会元理事・高橋容疑者(78)について、受託収賄罪で4回連続逮捕する方針だと報道した。
 巨額の公金が投じられた大会で、一連の不正がなぜ起きたのだろうか。最大大手の広告会社「電通」が自社の利益を優先し、スポンサー選定の権限を独占したことが浮き彫りになった。
 本稿は東京五輪のスポンサーについて大会組織委員会と電通とのやりとりを経時的に明示し、自然にブラックボックスへ誘導する。五輪疑獄を理解するには大変参考となり、闇を破る内容である。
 物語は13年12月中旬に始まった。東京大会の開催決定3か月後大会組織委員会から委託を受け、スポンサー募集を一手に担う「マーケティング専任代理店」選考の説明会が開かれた。東京都や日本オリンピック委員会などは、「スポンサーは単純入札で選ぶ」「報酬手数料は3%」と都庁に集まった電通など大手広告会社4社の担当者に提案した。
 その後紆余曲折を経て、14年12月に組織委と電通が結んだ専任代理店契約は、スポンサー料の累計額に応じ、電通の手数料率が上昇する「成功報酬型」となっていた。読売新聞が独自に入手した契約書によると、手数料率はスポンサー代料金1800億円まで3~8%、1800億~2000億円で8%、2000億円超は12%だった。
 こうした仕組みは組織委とスポンサー契約を結ぶ企業側に伝えられることはなかった。あるスポンサー企業の幹部は、「電通の取り分は全く知らなかった。電通の意のままに手数料率がアップしていたとすれば、驚きだ」と話した。
 入札が骨抜きになり、スポンサー料の価格交渉が可能になった。その結果、元電通の専務で、国内外のスポーツ界に詳しい高橋容疑者が懇意のスポンサーを組織委や電通につなぐ「仲介ビジネス」の余地が大きくなった。国内68社が支払ったスポンサー料は、五輪史上最高額の3761億円に上った。電通が手にした手数料収入は300億~350億円のようだ。
 いつの時代にも「虚業」と呼ばれる企業はあるが、それ以後詐欺まがいの中抜き企業が隆盛を極めることになった。コロナ禍による持続化給付金でも、何段階も中抜き・丸投げが行われ、公共事業や税金を食い物にしている点が注目を浴びた。
 昔は「ブローカー」と言われたこの商習慣は、重層的な下請け構造と密接に関係し、生産性を引き下げる要因の1つとなっている。最近、わが国の主要産業も中抜き業が多数を占め、このことが経済を衰退させた要因で、活性化の足かせともなっている。
 現在も続くコロナ禍で労働者、フリーランス、中小・小規模企業は生活苦や資金繰りに苦しんでいる。公平性や透明性で以て国民に1円でも多く金が回るように働くのが公務員の一分である。

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