グテレス事務総長のラファ検問所の再訪。

 2024年3月23日、国際連合のアントニオ・グテレス事務総長が、再びラファ検問所を訪れたことは、中東地域の緊張緩和に向けた国際社会の取り組みを象徴する。ラファ検問所はパレスチナ自治区ガザとエジプトを結ぶ重要な交点で、四方を壁で囲まれたガザ地区にとって陸路で唯一の交通路である。
 しかし、この検問所はイスラエルの都合によって、しばしば閉鎖され、生活物資の搬入が阻まれる。イスラム教の聖月ラマダン(断食月)中の今回のグテレス氏の訪問は、宗教的な意義を重んじる中東の文化に敬意を表し、またパレスチナ市民への連帯を示す行動と言える。
 同氏はハマスとイスラエル双方に対して戦闘の即時停止を要求し、ハマスに対してガザに拘束されているイスラエルの人質の解放を求めた。さらにガザ地区への人道支援の拡大を訴え、国際社会に対してより積極的な関与を呼びかけた。
 またエジプト側の検問所で支援物資が阻まれ、山積みの状況に対して、「道徳的な怒り」を表明し、国際社会による人道支援の原則が行われていない現実を強く非難した。そして、ガザ地区の人々が直面している困難な状況に光を当て、より多くの支援が必要だと全世界に呼びかけた。
 読売新聞はグテレス氏は入り口に入れない援助トラックの長い列、もう片側に飢餓の長い影と述べ、イスラエルがガザ全体で制限のない人道支援物資の搬入を確実に実行するように訴えたと報じた。
 ガザ地区は国連の保護下にあると言っても良い。国連パレスチナ難民救済事業機関(U
NRWA)によれば、ガザ地区の75%以上に当たる約170万人が難民として登録されている。
 またガザ地区のUNRWAのスタッフは、6千人以上を数え、国連が最大の雇用主で、多くの国連職員が困難と危険に直面している。したがって、イスラエルが物資の運搬を妨害したり、阻止することは、国連はじめ赤十字や支援団体に対する敵対行為であり、国連の事務総長としてイスラエルに苦情を訴え、抗議するのは当然のことである。
 これに対して、イスラエルは国連との緊張関係を鮮明にした。カッツ外相は国連がテロ組織をかばう機関であるとの見解を示し、国連の中立性に疑問を投げかけた。またネタニヤフ首相もラファに入り、残るハマスの戦闘員を抹殺せずにハマスを打ち負かす方途は我々にはないと主張した。
 国連は無力と言われるが、今回の訪問はガザ地区の人道的危機に対する国際社会の関心を高め、地域の政治的な対立を解決するための具体的な進展を促す可能性を秘めている。グテレス氏の行動は、目に見える成果はなくても、紛争解決に向けた国際的な努力の一環として、重要な意味を持つ。
 これが国連の役割である。

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