人口とビジネス。

 人口学は医学と関係がありそうだが、経済学や統計学との関係が深く、広い範囲を包括する社会学で扱われる。臨床医学では平均寿命や死因統計などの情報が必要であっても、その他に現在の人口数、出生数と率、死亡数くらい知っておけば十分である。
 国や自治体の未来計画に応用される人口学は、人口静態と人口動態に区分される。前者はある時点における人口の規模や男女や年代の構造を示し、後者は一定期間における出生・死亡などの変動状況を表わす。
 21年10月わが国の総人口は1億2550万人、前年に比べると64万人減少した。その中で日本人人口は1億2278万人、前年に比べると62万人の減少をみた。総人口と日本人人口の差は272万人で、これが外国人人口である。
 21年の人口動態によると、出生数は81万1622人、前年よりも2万9213人少なく、合計特殊出生率は1.30の低値を示した。来年の出生数は確実に80万人以下になるとされ、この数値が低いのが人口減少の最大の問題点だが、そこには未婚率の上昇と若い世代の女性の漸減が重なっている。
 現在、わが国は少子高齢社会と呼ばれるが、動態減少は少産少死が極まって少産多死の時代を迎えている。死亡数は143万9856人、前年よりも6万7101人増加した。出生数と死亡数の差である自然増減数は62万8234人も減少し、前年よりも-9万6314人を増加し、15年連続で少なくなり、低下した。
 死因別を見ると、死亡数の第1位は悪性新生物38万人、第2位は心疾患21万人、第3位は老衰の15万人、第4位は脳血管疾患10万人、第5位は肺炎の7万人の順であった。
 医療でも小児科や産婦人科は地域の人口や人口の構成などの推移は経営的に重要であるが、これからビジネスを始める人は、人口の問題に気を配る必要がある。将来、その地域の人口が減るとすれば、客数の伸びは鈍化する。昨今、牛乳の過剰問題が話題となっているが、人口の減少とともに需要が低下したのが原因である。
 食品店、飲食店などは地域の人口数の推移と関係があるだろうが、子ども向けの商品は出生数が多ければ収益が上がるが、老人ホームなどは平均寿命が伸びることが有利に働く。ビジネスに及ぼす影響を理解する上で最も大切な点は、どの人口構成区分と関係が深いかを知る必要がある。
 ビジネスでは顧客の問題が優先されるが、従業員の確保も看破できない。わが国では人口減少から労働市場がひっ迫しているが、人口減少時代は今世紀一杯続く。労働人口の変化は非常に緩やかなため、見逃されがちだが、人口問題が与える影響は大切である。
 わが国の国内総生産(GDP)は人口減少に比例していると言われる。

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