まさに至言。


 2022年9月21日の毎日新聞は、自民党の村上誠一郎・元行政改革担当相は同日、安倍・元首相の国葬を欠席する意向を明らかにしたと報じた。27日の実施が閣議決定されている国葬に与党議員が欠席を表明するのは異例のことで、物議を醸すのは必然である。
 村上事務所は「国民の反対が多いなか、なぜ強行するのか。安倍氏の名誉になるのかどうか」とコメントを発表した。国葬1週間前の国民感情を代弁するもので、国葬には相応しくないという意見が多数で、歴史的に汚点を残すことになりかねない。
 時事通信は同氏は前日の20日に党本部で開かれた総務会後に、安倍氏の政権運営が「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した。国賊だ」と発言したと報じた。この村上氏の言動に対し、安倍派を中心とする議員らは強く反発した。
 案の定、一部の議員は「そこまで言うなら離党すべきだ」と色めき立った。村上氏が自由民主党党総裁と首相を務め、8年8か月間の記録的な長期政権を維持した安部氏を国賊と呼んだなら、懲罰だと突っぱねる者いる。
 今の自民党ならしかりである。最大派閥の安部派に同調する議員は多く、中には立憲民主か共産党の議員が随分ひどいことを言ったものだと驚いた人もいたが、よく読んだら自党の議員だったので、もう一度びっくりしたという話もある。
 建前として村上氏を非難しても、与党の中には正鵠を射た意見に賛同する人は多く、面と向かって非難する人は少ない。しかし、「国葬には出ない」と口にする気骨のある議員はいない。確かに孤立無援の異端者の人でも、同氏はこの10年間いかさまに覆われ、修羅の世情が見えない自党の現状を嘆き、荒廃した自国を憂う真ん中の政治家である。
 わが国では思想・良心の自由を侵してはならないと憲法で保障されている。内心ではどのような思想を抱こうと自由であり、国家はそれを制限したり禁止したりすることは許されない。また信教も自由であり、思想の自由と並んで、最も重要な人権である。だからといって、好き放題の発言は問題があるが、一方同調主義に流されて、自分の信念を曲げる訳にはいかない。とくに大義名分は反対が多くても貫く必要がある。
 村上氏は衆議院議員12期のベテランで、戦国時代に名を馳せた村上海賊の子孫の18代目で、政治家の3代目である。しかも、東京大学法学部の出身の秀才で、日頃から志は高く、良く学んでいる。
 国葬は別にしても、「財政、金融、外交をぼろぼろにし、官僚機構まで壊した」の指摘は、わが国の現状を正しく表した至言である。

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