米中首脳会談について。

 2023年11月15日、バイデン米国大統領と習近平中国共産党総書記(国家主席)はサンフランシスコ郊外にある歴史的な邸宅「フィロリ邸」で4時間にわたって会談を行った。 
 両首脳の対面による会談は、昨年11月のインドネシア・バリ島でのG20サミット以来1年ぶりで、両国の対立が厳しくなった昨今、緊張を和らげる狙いがあった。しかし、超大国による会談は、世界的にも大きな影響を及ぼす。
 とくにウクライナ戦争、イスラエル・ハマス紛争の解決をはじめ、世界の平和と安定に向けて、両国の協力が強く求められており、具体的な成果が期待された。両氏は副大統領と副主席の時代から親しく、今回バイデン氏は「この10年ともに長い時間を過ごした」と挨拶した。旧知の間柄や和やかな空気を盛り上げ、緊張緩和に務めた。
 習主席はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため、14日にサンフランシスコに到着した。この会談は同時期に行われたAPECや日米首脳会談、日中首脳会談などのニュースを吹き飛ばしてしまった。
 会談で取り上げられたテーマは、台湾情勢の確認、新疆ウイグル自治区や香港の扱い、中国の不公正な貿易・経済慣行などの課題、さらにはインド太平洋地域の問題、気候変動危機など世界の懸念事項を議論した。制御不能となっているウクライナ問題、パレスチナ問題も議論が交わされた可能性が高い。
 米中間の緊張を和らげるため、偶発的な衝突を避けるため、軍事対話の再開で一致した点は、大きな意味がある。その他に合成麻薬フェンタニルの流入対策、AIに関する協力の強化、また世界的な課題にともに立ち向かう必要があるとし、コミュニケーションと協力を強化することに合意した。
 今回バイデン大統領は会談後に庭園を一緒に散策し、夕食会を催し、習氏を大いに歓迎した。夕食会には経済界の重鎮が勢ぞろいし、アップルのティム・クック最高責任者(CEO)やブラックロック(世界最大の資産運用会社)のラリー・フィンクCEOなど米国の実業界のリーダーや両国の関係者が出席した。
 このような交流は両国の親密さを示し、ビジネスや経済の強い結びつきが示唆される。中国と米国は以前に貿易相手国の第一位で、双方ともに非難の応酬にもかかわらず、基本的な関係は少しも揺るがない。
 今回の首脳会談はさまざまな捉え方がある。具体的な大きな成果があった訳ではないが、多くの点で協調可能な領域が存在した。水面下の問題であっても、互いに確認し合えば、いつか実りが期待できる可能性がある。
 対面でしかできない意義のある会談だった。

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