孤独死について。

 警察庁の統計によると、2024年1~3月に一人暮らしの自宅で亡くなった65歳以上の高齢者は約1万7千人で、全年代の一人暮らしで、自宅で死亡した2万1716人のうちの約8割を占めた。このままのペースで推移すると、独居状態で死亡する高齢者は年間約6万8千人になると予測できる。近年、高齢者の単身者は増加の傾向にある。とくに男性の増加率が高く、女性も増え続けている。20年には672万人に達し、40年には896万人に上るという推計がある。
 孤独死という問題は新しい現象ではなく、人類の歴史とともに存在し、近年、社会の変化とともに、この問題は新しい形で脚光を浴びるようになった。核家族が一般的となり、孤立して生活する人が多くなった結果、孤独死は分断化社会の一端として見なすこともできる。
 孤独死が増えている最大の理由は、高齢者と社会の接点が少なくなったことにある。従来のように家族と一緒ではなく、単身で暮らす高齢者が増える中、近所や友人知人などとの交流が少なくなった。これまで受け皿として機能していた地域社会の役割が希薄になり、高齢者の社会的な分断化が進んで、孤独死の増加の後押しをしている。
 孤独死の予防対策は盛んに行われているが、それ自体が悪いわけではない。死は自然現象であり、人間は生きていく中で孤立し、最終的には一人で死を迎える。それは家族や親戚に見守られながら静かに息を引き取る場合もあれば、野良犬や野良猫のようにひっそりとこの世を去る場合もある。
 前者は何か豊かさや幸福を感じさせるが、後者はゴミに埋もれて貧しさや悲哀を覚える。一般に一人暮らしや孤独死を選択する人は、世の中に失望し、人生に対する意欲を失い、自分の生活を維持する気力もなく、周囲に助けを求めるようなことはしない。
 死後長期間放置され、死臭を放つような悲惨な孤立死は、本人は一向に構わないだろうが、人間の尊厳を損なうものである。また死人の親族、近隣の住人や家主などにとって心理的な衝撃や経済的な負担を与える。孤立死を生存中の孤立状態が死によって表面化したものとして考え、生きている間の孤立状態への対応を迫る問題として受け止める必要がある。 したがって、役所は孤独死を当たり前の現象としてとらえ、それなりの対策を立てる。高齢者の孤立を防ぐためのコミュニティの形成をするが、それには自治体が地域社会を主導し、気兼ねなく参加できるイベントや活動の機会を増やす。
 要するに高齢者の社会参加を促し、分断や孤立を防ぐ。

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