何でも屋のアイリスオーヤマ。

 家電メーカーの同社は(宮城県仙台市 創業1958年 従業員数約5400人)は、確固たる地位を築いていた。それにもかかわらず、家電製品の製造で知られる企業でありながら、パックごはんや生鮮米などの食品事業にも力を入れている。
 多角化戦略の背景には、11年の東日本大震災の未曽有な災害を経験し、そこから事業拡大の機会を見出した。震災によって同社の工場も相当な被害を受けたが、それが新規の事業の創出へと繋がった。また社員自身も被災者だったという共感から、一刻も早く被災地に物資を届ける使命感に駆られた。
 震災後のアイリスオーヤマは、被災地の支援として、ブルーシートや発電機、高圧洗浄機などの製品を提供した。これらの製品は被災者の生活再建に不可欠で、製品の多様性が大きな強みとなった。
 こういった経験は同社にとって極めて貴重な機会で、単なる事業を拡大する以上の意義があった。企業としての社会的役割と地域社会への貢献を再認識し、復興の困難な状況の中で、同社は社会的責任を果たす目的で、生活必需品の供給に注力した。
 その過程で、パックごはんや生鮮米といった食品事業への進出が始まった。これらの事業は被災地での食料供給の必要性から生まれたもので、同社の柔軟な思考と迅速な行動力の表れでもある。
 被災の経験から、同社は今年1月の能登半島地震への支援も速やかに行った。発生2日後の3日には被災地に天然水、カイロ、ブルーシート、簡易トイレを届け、15日にはエアーベッドを提供した。その後もパックごはんや応急仮設住宅向けの家電などを提供している。
 そんなきれい事ばかりではないだろう。農業、畜産業、漁業などを含めて、被害が甚大であった東北地方に生産拠点を置く企業は、操業停止や減産に追い込まれた。このことは同社が事業を拡大するには絶好な機会となったに違いない。
 アイリスオーヤマは生活家電や季節家電、調理家電を中心に、米など食品、収納用品、ペット園芸用品、調理器具、家庭用照明、法人用照明など多岐に渡る商品を取り扱っている。同社はメーカー機能と問屋機能をあわせ持つ独自の製造卸というビジネスを展開している。
 米製品事業は震災の教訓を生かし、日本の食文化の根幹である米を、より手軽に、より安全に、そしてより美味しく提供するための努力の結晶である。パックごはんの普及は忙しい現代人のライフスタイルに合わせた新しい食の形を提案している。
 同社の品質については、好みもあるだろうが、一部の消費者からは改善する余地が多いと批判的な意見がある。顧客からのフィードバックを基に、真摯に品質の向上に務める。消費者目線で性能の良い廉価な製品をひたすら販売し続ければ、しぜんに同社は発展するだろう。

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