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[第十四話]絶不調。

T監督「インターハイは、選手登録6人だから、お前は連れて行かない。」

そう言われ、内心、安心する自分。
だけど、1年後はあっという間に来てしまう。

技術が全然話にならない自分。
的前練習がまだできない自分以外のチームメイト。

後者の進度については、焦った所で、無理をさせる訳には行かないので、普通に後輩指導に入りつつ。
だけど、時間がないのはわかっていた為、なるべく後輩たちにも、なるべくたくさんT山監督に射技指導しゃぎしどうを受けて貰いたいと思っていました。

ただ……私は物覚えが悪く、射技指導という意味では、放置をされていた時期。
それどころか、人間性や考え方などを指摘される様にもなって来て、T監督に”射技指導をしてください”と、言える精神状態ではなくなっていました。

しかし、後輩と副部長のモチベーションはとてもいい感じ。
私と違って、飲み込みも早く、どんどん射が整っていく。

彼女たちがT監督に気に入られるのもそんなに時間はかかりませんでした。

後から入って来た人たちですが、どんどん上手くなっていく彼女達を見て、私の方も新チームの事を心配する事や射技や体配について私から指摘する事は、日に日に減って来ました。

だけど、他人の上達を見て、ふむふむと安心していられる様な悠長な事をしていられる立場ではありません。

自分がいなくてもいいチームになったらいいけれど、私も試合には出たいですし勝ちたいので、もっと上手くならなければならない。

しかし、先生が仰ること。
何が違うのか、何がズレているのか。

解らないまま。

自分が不調な上に、T監督の言葉もどんどん解らなくなっていく。
言葉の意味を理解しているので理解していると思っても、きっと解らない事が解らないから、何度も言い方を変え、アプローチを変え。
毎日、毎日、射技の事ではない話を私にする。

私は私で先生の話を理解しようとして、実践しようとするのだけれど、根本的に違うと言われる。
だけど、その根本的とは、なんなのか。
理解ができない。

射はどんどん崩れていくし。
的が、どんどん見えなくなっていく。

副部長と後輩達がメキメキと上達していく中、自分はどんどん下手になっている様に感じてしまい。
見えない道をひたすら走り回っている様でした。

簡単な人には本当に簡単で単純な事なんだと思う。
だけど、馬鹿で要領が悪くて、不器用甚だしい私に取っては、難易度の高めの問題が本当に山積みになっていました。
頭はぐちゃぐちゃ。
射もぐちゃぐちゃ。
この頃は、矢飛びが暴発することや、矢が的まで届かなかったり、隣の的にててしまったり……

本当にそんな事をしょっちゅうやっていました。

かろうじて、草試合や練習試合では、大前や落ちをやる事が多かったですが。
見放されるのは時間の問題だと感じていました。

だけど、そんな所をチームメイトに見られるのだけは、絶対に嫌だったので、張れるだけの虚勢を張って、アホヅラ添えて立ち振る舞ってはいましたが。

その絶不調のまま、秋の大会シーズンに突入します。

……これを書きながら、本当に若かったなぁ…と思う。。。

遥か昔。17歳の秋のお話です。


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