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映画『ガラスの城の約束』 感想

「私が自分の話をすることで、ひとりでも多くの人々が勇気を持って自分の人生を振り返られることを望んでいるわ。 」
 — ジャネット・ウォールズ(原作)
(引用:映画『ガラスの城の約束』公式サイト)

公式サイトのトップページをスクロールしていくと、一番下に原作者からのメッセージが現れます。彼女がいかに勇気があり、愛情深く、そして美しい人か、この映画から知った私はこの言葉にとても励まされました。

ひとつの傷もない人生を送っている人なんて早々おらず、大きな傷を家族から負わされた人はきっと想像できないほど多くいるはずです。
少なくとも私は、父との間に一生埋めることができないと思うほどの大きな傷を抱えて生きています。父のことを考えると嫌悪感がわき出して正気でいられなくなるので、家族にまつわることをなるべく思い出さないようにして、周囲にも探らせないように生きてきました。

主人公であるジャネットも、そういう人間のひとりでした。

物語は大人になったジャネット(ブリー・ラーソン)がホームレスとなった両親を切り捨てようとする現在と、身勝手な父・レックス(ウディ・ハレルソン)によって負わされた傷と注がれてきた不器用な愛情を思い出す過去を行き来して進行していきます。

物語で描かれるジャネットはいつも理不尽に立ち向かう強さを持っていますが、彼女が何より素晴らしいのはその理不尽な過去と向き合う勇気を持って、それを自分の人生として受け入れたことです。

過去に傷を持つ人間は、その傷から目をそらします。嫌悪や怨嗟、そして悲哀を呼び起こす過去と向き合うよりも、切り捨ててしまう方が遥かに楽だからです。
けれど、その底にある愛情からも目をそらすと人生を根本から否定することになり、どんなに素晴らしい人生を歩んでも自己肯定ができなくなって、求め過ぎるあまり虚栄心に駆られた選択に走ってしまいます。

プレゼントを買うお金がないレックスに「どれでも好きな星をあげよう」と言われて共に夜空を見上げたことを楽しげに語れるようになったジャネットのように、ささやかな想い出を愛情として受け入れることが自分を肯定する第一歩なのだと感じました。
ジャネットの物語を観ながら私自身も人生を振り返って、憎しみと暴力と悲しみの向こうにほんの少しのあたたかい想い出を見つけて、最後には涙が止まらなくなりました。

過去を見つめて現在を肯定できる強さが欲しい、その勇気をもらいたいアダルト・チルドレンにぜひ観て欲しい作品です。
原作者であるジャネット・ウォールズ、作品と出会わせてくれた監督、出演者、その他スタッフの方々、そして映画を紹介してくださった方に尊敬と感謝を!

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