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サンプリングの光と闇

よき記事を見つけました。

2014 年の記事ではありますが、サンプリングにまつわる HIP HOP の歴史まで丁寧に解説されており、非常に勉強になりましたので、考えたことを軽くメモしておこうかなと思います。

まず、基本的には、

ヒップホップで言うサンプリングとは、あくまで「借りる」という概念であって「奪う」という概念ではないから……。

借りるということは、対象者から同意を得なければならないという意味であり、無料貸与もあれば有料貸与もある。そしてこれは法的に定められたものではなく、貸す側の意思によって決定されることである。遠くまで行くこともない。サンプル・クリアランスとは、まさにこのように自然なプロセスなのだ。なによりも、我が身と同じぐらい他人のことも大切にすべき法律であるのに、「サンプリングはヒップホップの伝統的な手法だ!」という主張だけで大衆をあざ笑い、すべての論議を終息させようとする一部の創作者たちの姿勢からは、無知の恐怖が襲ってくることさえある。これは本当に真剣に悩むべき基本的な素養と認識の次元の問題なのに、いくら我々が受け入れる立場であったとしても、ミュージシャンや関係者はもちろん、このジャンルのファンだと自認する人々でさえも、法的・倫理的な問題に対して鈍感だということは十分に噛みしめておくべき点である。

というシンプルな話であり、この "自然なプロセス" であるサンプル・クリアランスを適切に行いましょうということなんだと思います。簡単な話ではないと思いますが、このプロセスをテクノロジーで適切に進化させ、滑らかに行えるようにしていけばよいのだと思います。Tracklib の取り組みなどが(これが最終的な解とは思いませんが)良い例でしょう。

ただ、現状、サンプル・クリアランスにまつわる煩雑なプロセスや金銭的コストゆえに、(その先にある富や名誉に目が眩んでいなかったとしても)一線を超えた "無断サンプリング" や "盗作" に手を染めてしまう人達が出てくることも十分理解はできます。

もちろん、そういう人達は取り締まらないといけないわけですが、それを徹底することによって、サンプリングが "強者の道具" になってしまうのはなんとも皮肉なように思えてしまいます。しかし、このことに対して「HIP HOP の伝統なのだから、リスペクトを込めて許可すべき!」といった暴論を唱える幼稚な HIP HOP ファンであってもいけないわけです。その幼稚さが、HIP HOP にさらに深い傷を負わせる可能性すらあるでしょう。

ゆえに、記事の著者はここで "再創造" としてのサンプリングを主張するわけですね。

「クリアランスの費用がなくても、サンプリングは続けなければならない」

ただし、原曲の影響力が極めて小さいか、まったく感じられないと判断できるような結果を得た時に限る。実際、このジャンルのファンであれば名前を知っているという程度のアメリカのインディー・ヒップホップ・ミュージシャンたちも、やはりクリアランス問題を避けるため、できるだけ珍しい音源からサンプルを取ってきて変形させたりする。そしてこれは単に法的・倫理的に起こりうる問題を解決するためだけでなく、ヒップホップ・ミュージシャンとしてのプライドである「再創造」というサンプリングの本質的な価値を誇示するためでもある。
このように、サンプリングとは、技術的な側面や倫理的な側面だけでは裁くことのできない変形の芸術として価値があるのだ。そういった意味では「適当に他人の曲の一部を取ってきてドラムを乗せればいいもの」といった無理解を露呈する国内の他のジャンルのミュージシャン、関係者、評論家が多いのは残念なことだ。

サンプリングを甘く見るなよ、と。

そして、これらのことが、記事冒頭で引用される Pete Rock の発言に集約されているわけですね。

「このゲームは大昔、Biz Markie(ビズ・マーキー)が Gilbert O’Sullivan(ギルバート・オサリバン)の曲をサンプリングしたことをすっぱ抜かれた時からめちゃくちゃになった。オサリバンはまだ生きてるし、いかなるラッパーによってであれ、自分の音楽がサンプリングされることを望んじゃいなかった。あの時からサンプリングに関連したドミノ倒しが始まったんだ。これだけは言いたい。最近のヒップホップ・シーンを見ると、有名な曲を使ってる奴がちらほらいるね。まるで大物アーティストであるかのように、彼らの音楽をサンプリングするんだ。だけどそんなことをしたら問題がもっと大きくなるってことを理解しないと。俺?俺はいつだってあんまりよく知られていない音楽を選んできたよ。皆が分かってないだけでね」

...うむ。

とりあえず、記事の内容は最低限咀嚼できたかなと思います。

ただ、2014 年以降、状況もアップデートしていると思うので、咀嚼した情報を消化しながら、最先端についても追いかけていければと思います。

温故知新。

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