危ないのはお前だ

わたしは争いごとを避ける人間なので、とっさに「ごめんなさい」と言うことができる。薄暮の時間に歩きスマホをしていて、犬の散歩をする小学生にぶつかりそうになったときも、とっさに「ごめんなさい」と言えた。大の大人に謝られた小学生は変な顔をしていた。

わたしの人間としての器は中くらいだ。非が無いと思っても「ごめんなさい」と言ってその場を切り抜け、あとあと愚痴をこぼす程度の器だ。

今日は家に着く直前に雨が降ってきたので、そこそこ帰路を急いでいた。すると、横道から勢いよく曲がってきた自転車にぶつかりそうになった。

「うわ、危ね!」

という一言を残して、自転車は去った。もちろん、わたしは「ごめんなさい」と言ったが、相手に聞こえていたかは分からない。わたしはいつも通りその場をやり過ごして、帰宅した。

暮れ方に無灯火で勢いよく歩道に曲がってくるんじゃないよ。危ないのはお前だ。

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