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教室。BL漫画のレビュー?

いまだに、私は幸せな夢の中に高校の景色を思い浮かべる
中学・高校が記憶として色こく残るのはわかるが
他の夢と違って、出てくる人たちの輪郭はハッキリしつつ
その場を包んでいる空気だけが、ただただ幸せという感覚

高校のクラスメイトと何かを遊んでいたり
当然、あの時苦手だったクラスの空気感も再現されている
具体的には、何か体育祭のような夢を見ると
周りのクラスメイトたちは、一生懸命動いている自分や周りを茶化している

と、同時に
私は寝る前や、日中もよくBL漫画を読む
7:3ぐらいの割合で学園ものを読み
(最近はオメガバースや、獣モノなどジャンルを広げつつあるが)
そういった、学校に対する憧れが少しだけ強いのかもしれない

日本の高校や学校システムはおかしいんだって
大学2年になってから薄々気づいたり
最近になって、留学してた友人と話して思い出したり
その友人と話すのは
自分の学校に対する価値観を固めていく要素にもなっている

僕らは、どこかおかしい空間で育っていて
それは具体的に
みんなが似た存在で
ランキングのような上下があって
何も考えなくていい空間

変な例えになってしまうが
「呪術廻戦」という漫画に出てくる五条悟
彼の領域展開”無量空処”に近い
テスト勉強や宿題といった
永遠に情報が終わらない中で
僕らは無限にあると錯覚する時間を過ごして
何も考えられず、考えずに過ごす

私がこの記事の中で一つだけテーマを挙げるとすると
「学園恋愛」になる

学園恋愛

やっぱり、BL漫画に限らず
最近の恋愛漫画は、学校教育の軋みがどこにあるのか考えようとしている気がする
例えば、「スキップとローファー」などはわかりやすい気がする
この漫画の中に流れている空気感は、どこか昭和の学園モノ感がするが
こと、恋愛描写に関すると現代味を感じる
特に、志摩とみつみが付き合った後
結局は恋愛に消極的な現代の価値観に近しいものが発生して
彼らは本格的にカップルとなる前に友達に戻る
BL漫画を例えに出すと、一つの作品で何か現代性、批評性を持っているものはあまりない
それは、簡単な話だと私は考えていて、二者関係のラブコメとしてBLは徹底してきたからである
私が好きな「春風のエトランゼ」も、沖縄と北海道という田舎で全ての話を完結させているところに、現代社会からのいい意味での逃避が見られる
最新巻では東京へと引っ越しているが、この先どうなるのか

しかし、BL漫画でもかず多くの作品を読んでいると面白い傾向がある
「君がわるい恋の話」、「ちょっと待とうよ春虎くん」、「高良くんと天城くん」、「コントラスト」などは例として取り上げやすい
一作目は、学校の陽キャと呼ばれる存在と陰キャの主人公がくっつく話だが、2人それぞれの中で抱えている問題がわかりやすい。
主人公の成田は過去に自分のセクシャリティを告白して、拒絶された
一方、陽キャ側の豊島は自身の友達の1人から恨みを買って、非常に地味な嫌がらせを一度だけ受ける
仲がいいように見えても、”友達”という学校が作り出す魔法が解けるのはよくある話で、陽キャ・陰キャ関係なく各々が問題を抱えている描写はすごく興味深い
また、主人公の成田くんが裏表がありつつも、豊島に対しては悪態をつくあたりが、最近の好かれる主人公(受け)のイメージを体現している

「ちょっと待とうよ春虎くん」は、”マスク男子”という学校にいるキャラをうまく使っていると思う
自分のセクシャリティがバレて、いじめられる危険性からの防御としてマスクしかないというのは妙にリアルだ
妬みや嫉みなどから生まれるいじめなら、先生に相談などが解決策としてあるが、そうはいかない
実際に”ゲイ”だとカテゴライズされて、周りからいじられる(いじめられる)のはよくある光景だ

「高良くんと天城くん」は、面白いほどに作者のファンタジーがくっきりと見える場所がある
例えば、高良くんのビジュアルは完全に女子が好きな男子の見た目である
これはもちろん、私の偏見だが。
また、天城くんの周りの友達の解像度は、ややリアルで、具体的にはオタクメガネ香取は、アニメや漫画が好きそうでありながらボキャブラリーは完全に文庫本を参考にしているあたりや、やたらとボディタッチが多いが別に男が好きというわけではない山崎。
また、高良の周りで、田中などは女を取っ替え引っ替えしつつ、実は高良のセクシャリティをなんとも思ってない空気感や、全然描写されないけど瀬川という陽キャグループの中にいるけど、ただイケメンで黙ってるだけの陰キャポジジョン的な存在など。
もちろん、2人の恋愛描写も女性的に見えるが、男子の会話がほんの少しリアルだなと感じる。(特にくだらない彼らだけのノリがあるところ)

「コントラスト」は、現代の学生に対するかなりの信頼感が見られる。購買へと主人公たちがダッシュしている描写はリアル。
主人公の翔太はサッカーに対して何か気持ちが傾いている中、部活に入ることを恐れて、体育のクラスでサッカーの時に無双する。作品的には陽キャ的なポジションにいるが、彼をよく見ると、そういった俗世的なヒエラルキーの外に存在するイケメン的なキャラに見える。また、彼の周りにいる2人の友人たちもかなり彼を尊重しており、特に女子の瑞希は翔太にとっても重要な存在となる(女子の描写が丁寧なBL作品が、私は読んでいてとても嬉しい気持ちになるのと、作品としての評価も高くなる)
一方、陰キャ側に位置する陽は、やっぱり自分のセクシャリティについてトラウマ的なのを持っていて、自分がゲイだとバレた時のいじめる奴の描写もちょっとリアルに感じた(おそらく、いじめてた奴の描写を深めると、長編作品になるのかも)
ただ、他の作品より新しいと感じたのは、その学生に対する描写と、陽が実はセフレ的な存在を作っていながら、その関係性が持つ意味をあまりよく思っていないのと、理解が追いついていないところにある。
何か悪いことをしているが、関係性を断つことに、続けることに具体的な考えを持っていない
BL漫画はくっついたり離れたりを繰り返すのが当たり前になっていて、その離れる描写が何かによってかなり面白味も変わるが、この作品は、陽が翔太から離れる要因をうまくぼやかしながら、それでいてくっきりと描くところを分けていて、葛藤と陽の周りの関係性を描くことで、ジワジワとくっついたり離れたりを描いていた

こと、BL作品は個人作家が多いため、編集者という存在がいないことのデメリットは多く感じる。しかし、このジャンルがこの先どうなっていくのか見つめつつ、BLというジャンル自体がそろそろ古いのではと感じている。

この記事では、結局、学校教育のことについて何も書けなかったので、次は映画「怪物」を取り上げて、考えたい。

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