見出し画像

「私の勝負曲」 そのに(Obscura"Septuagint")

勝負曲とひとくちに言っても色々で、ぱっと3曲ほど思い浮かんだそれらは自分の中でなんとなく棲み分けがなされている。という訳で前回からの続き。

・・・

2曲目として挙げたい曲は、テクニカルデスメタルバンドObscuraによる3rdアルバム収録の1曲目だ。こちらもやはり10年前の私がレビューをしてくれているので細かい話はそちらで。2010年~2015年の辺りは複数の意味で音楽が重要な時期だった事情があり、インターネットにだいたい残してきている。振り返りやすくて助かる。

アコースティックギターの荒涼とした旋律で幕を開ける、アルバム冒頭を飾るに相応しい大スケールでアグレッシヴなチューン。7分と長尺な曲であり、じっくりと起承転結していく展開が魅力だ。特に中盤、音圧がスッと引いていきイントロの荒涼さが思い返されるタイミングで登場する、浮遊感たっぷりのヴォーカルに鳥肌が立つ。

曲のなんやかんやはさておき勝負曲として挙げる理由だが、これは「とてもつらい時期に応援歌として聴いていた」というものだ。未だ聴くたびに当時を思い出して少し苦しくなるが、曲の方がまだ強い。勇気付けられる。

さてその「とてもつらい」の内訳について。
2011年の4月に行われた県議会議員選挙に伴う10日間の選挙戦、私は候補者の子供として本格的に活動に参加していた。当時は実家から遠く離れてタワレコ店員(アルバイト)をしていたが、そのために帰省した。
田舎の選挙にありがちな泥臭さと不慣れ故の居心地の悪さが今でも鮮やかに思い起こされる。親や兄弟、近所の大人を巻き込んだ暴風雨のような期間だった。

10日間フル稼働で休憩も満足に取れなかったが、一人になれる時間はiPadを取り出しイヤホンで音楽を聴いた。帰省直前にCDを買って丁度聴き始めていたアルバムがこれで、選曲の暇も惜しんで毎度1曲目から再生していたのだ。

この頃は複数の意味で音楽が重要な時期で、精神的支柱としての期待も大きかった。10日間は見たくない人の一面を延々見せつけられるようで非常に消耗したが、半ば祈りのような必死さで「音楽をかっこいいと思う素朴な気持ち」に縋っていたように思う。

・・・

長くなってしまった。兎角、エピソードに紐づいた音楽というのは強烈な印象が風化しないまま人の心に残るものだと思う。

この曲はまさに勝負と共にあった、自分の中で特異な意味を持つ曲である。

#私の勝負曲

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?