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カクテルとの邂逅

酒が旨いという話です。

9月に入った頃、私は通販でツールを取り寄せてふたつのことを始めた。ひとつはリングフィットアドベンチャー、もうひとつはカクテル作りである。前者による体型のささやかな変化はさておき、今回は後者について。

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さて、私とカクテル、とりわけシェイカーとの出会いはかなり遡る。学生の頃、バイト先で作っていた期間限定のドリンクがそれだ。

調べたら当時のプレスリリースが残っていた。『シェイクン レモン パッションティー』。2006年か...

ボストンシェーカー風の容器でシェイクをするオペレーションがとても「それっぽく」、バーに行く金も度胸もなかったが憧れだけは募らせていたものだ。猫背がちな私だが、シェイクする時は妙に背筋が伸びていた。

一方で当時のアルコールとの付き合いはというと、酒好きの悪友にそそのかされて買ったボンベイサファイアを強がりつつロックで舐めたりなどしていた思い出がある。ジンジャーエールか何かで割ってやる発想が無かった訳だが、仮にもバーに憧れがあるならここで多少なり調べろよと今となっては思う。

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その後、居酒屋でコークハイやらカルーアミルクやらを頼むというごく一般的な関わりを経て、比較的最近になってバーに通うことを覚えた。そして同時に、カクテルへの解像度がようやく上がってくることになる。

東京 飯田橋にある『ゲームバー グリュック』。元はボードゲーム目当てで足を伸ばした店だがバーとしての構えも一定の雰囲気を保っており、途中からは酒がメインの目当てになっていた様な気がする。おいしい酒にありつけ、かつ幸運に恵まれボードゲームの相手が見つかったりする場所。素敵すぎた。

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引っ越してしまったので今は通えない。時勢もあり次に足を運べるのがいつかは分からないが、東京に行く用事があれば是非訪れたい場所のひとつだ。

さておき。通うバーを見失った末にカクテルへの憧れはさらに募り、ついに先日、バースプーンとカクテルシェイカー、ジガーなど揃えるに至った。

ついつい15年ほどかいつまんでしまったが、ここまでが前振り。

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という訳で、酒が旨い。

15年前の思い出を脳裏にシェイカーを握り作った初のショートカクテル。これが軽い感動の出来で、ひとくち含んだ途端に笑ってしまった。

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レシピは以下。

- キリンウイスキー 陸 : 30ml
- コアントロー(オレンジリキュール): 15ml
- ライムジュース(スーパーで買った果汁80%のもの): 15ml

『ウイスキー・サイドカー』のレシピを見ながら手元の材料に挿げ替えたかたちだが、おそらく驚異の噛み合いを見せている。まず「陸」の香りとオレンジリキュールが相性良く、少しまろやかに加工されたライムジュースのおかげで若干甘めの仕上がりに。アイスキャンデーをデザートに昇華させたような、少量で飲み応えのあるアルコール飲料ではあるがどこか人懐こい不思議な感覚だ。加えて、それを自分で用意してしまったという圧倒的な手応え。料理で会心だった感覚と同じだが、これは凄い。

シェイクした後の氷はほとんど溶けていないので、その気になればもう一杯作るのも容易い。…これは際限ない飲酒を予感させ非常に怖いので、意識して二杯目は作らずミネラルウォーターを注ぎ、普通にお冷として飲み干すようにしている。

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もうひとつ。これはつい今しがた飲んだもの。

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- アマレット(杏仁のリキュール): 30ml
- バカルディ ラム: 15ml
- シンプルシロップ(砂糖水): ティースプーン1杯
- 牛乳: 45ml
- シナモン: 少量

卵を使ったカクテル『エッグノッグ』をきっかけにしつつ、雰囲気で二転三転させたレシピ。ダークラム:アマレット=2:1がより素直なレシピかと思うが、手持ちがホワイトラムというのをなんとなく考慮し立場を逆転させてみた構え。シナモンはおしゃれ枠。

これがまた旨い。氷と一緒にシェイクした冷たいドリンクだが、カフェラテよろしく結構きめ細かなフォームミルクが上に浮かぶのだ。全卵なり卵白なりを足してやれば、さらにアルコール感を抑えたまろやかな味になるだろう。アマレットとシナモンの複雑な風味が、市販のお菓子などとは違った趣で楽しませてくれる。

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カクテルという『お酒で作る料理』…というかシェイクが楽しくて、飲酒量が明らかに増えてしまった。元々あまり酒を常備するタイプではなかったので0から1の差がデカいといったところか。

そして、一種類の瓶を延々消費する訳ではなく15mlだの30mlだのを集めて作る関係で酒の瓶がだいぶ増えてしまった。
もっとも、手持ちの種類が増えるほど掛け算でレシピが増える。出来上がりの味だってどれも目新しい。想像はしていたが、はちゃめちゃに裾野が広い世界だと思い知らされる。

広い世界を思い知る一方、収納スペースは着実に狭まっている。

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