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短い記録160:【過去記事転記】平行な釣り針

この記事を書いた当時、行っていたエステでおまかせで作ってもらったフェイシャルのテーマが「誘い受けのプロ」だったので。
そういうふうにはじめからテーマを決めて作ったわけではなくて、出来上がったらそうだったんですって。
色気とか、誘い受けとか、まあおよそ自分には無縁なものだなあと思って生きているんですけれども。
結局のところ、魂の性別に惹かれているのではと思って書きました。
若干のR指定描写が入っています。
イヤやったら、ごめん。

※2018年5月頃に書いたものです

「笑った顔が良いのなんて当然。笑っていない顔に何かを感じる人じゃなきゃ興味ない」

顔と名前と連絡先が一致する範囲で一番モテる人は、あっけらかんとそういった。

ただただ美しいだとか、ひたすら見つめたくなるような身体をしているとか、実在するのか怪しいけれどいわゆる匂い立つような色気があるだとか。

そんなものを一切持っていなさそうな人。

身なりには無頓着、誰かといるのは飽きるとなかなか捕まらない。
なのに、その人に会ってしまうと遅かれ早かれ落っこちる。
単なる恋ならまだいいけれど、厄介なパターンでつきまとうのもいるらしい。

「モテるって大変ですね」
「日常だからわからない」

嫌になる。
世界で何人がこんなセリフを吐くことが許されているのだろう。

でも、その人を腕に招き入れるのはそこまで大変なことではなかった。
出来る範囲で藻掻きまくって、なりふり構わず直球を投げ続ける。
自分が笑っていないときの顔が相手にどう映っているのかを考える余裕なんて全くなし。
体育会系も裸足で逃げ出す反復レベル。
一生懸命は悪くないというが、かっこいいとはいわれない。

切望する一言を引き出すにはどうしたらいいのか。
ため息全てがその人行き。
この世を構成するのはあなたとそれ以外。
盲目なのかと笑わば笑え。
何人たりとも介在させないさせたくない。
今この人を抱いているのは紛れもなくこの身体だ。

もう何回目だか忘れた。
その人を組み敷きながら何度となく噛み付いてみる。
するりと躱され、やり返される。
爪の先で身体の縁を隙間なくなぞられて、輪郭をぼやけさせられる。
いつだってこちらが余裕なし。
今、笑っていない自分の顔はつまらないだろうか。
じゃあ相手を楽しませるには?
もう出せるカードなんてない。

「別に男でも女でもどうでもいいなあ」
この人はまだ余裕だ。

「あなただから好きなんですってことにしたらいいんですか?」
たまにはちゃんと言ってくれませんかと、知りたいことを飲み込む。

「何が?」
見透かされて、汗だくの背中に張り付く熱気を振り払うくらい軽く聞き返される。

「好きだとか、そういうの」
「言ったらイッちゃうくせに?」

軽やかに、しかしわずかに微笑む。
もちろん結果はご指摘のとおりだ。
反則じゃないの、そんな一言って。
体液がだらしなくどちらの身体にも残った。

上がりきらない口角は、水面に平行な釣り針だ。
何時まで待ってもこちらを向きやしないことがわかっているのに、また自分から引っかかってしまう。

あの人は確かに男でも女でもない。
魂の性別すらきっと。
ほんの少しだけ微笑んだ横顔を覗くだけで、ゆったりとした瞬きに引き込まれる。

(了)

自分で書いといてあれですけど
「ため息全てがその人行き」
って、結構いいな。
歌詞っぽい。

自分の魂の性別って何かしらと考えてみたけど、たろちゃんが即答で「お前は絶対両性具有。たまたま生まれたときの体が女だったっつーだけ」って言ってきたので、これからはそう名乗っておこうかなと思います。
※たろちゃんってだれやねんと思った方は、下線部分にリンクあるのでご覧くださいませ

書いたときのことってほとんど覚えてないんだけど、名前もないし、一人称も出してないところを見ると、どっちが男でどっちが女か、はたまた同性同士なのか、異性での組み合わせなのかも限定したくなかったんでしょうね。
めっちゃわたしっぽい、むしろ書いた当時はそんな事考えてなさそうなことも引っ括めて。

笑った顔が良いのなんて当然。笑っていない顔に何かを感じる人じゃなきゃ興味ない

これは、わたしが実際に常日頃思っていることなんですけど、安心してください、モテてません。
話を書いたのはわたしですけど、中身のモデルはわたしじゃないです、あはは。
当たってる宝くじと、まっとうに支払ってもらえる仕事にはモテたいです(人じゃないんかい!

明日こそは連載の予定だったんですが、ちょっと急遽の予定変更でもう数日過去記事続きます。
またね。

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