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短い記録355:【過去作品再公開】Joy't(ジョイント)2

はじまりのお話はこちらから

呼び出し音は鳴る。
でも、どれだけ待っても誰も出ない。
諦めて一度切った。

「電話してみたけど、呼び出し音だけで誰も出なかった……」

「なんともないといいんだけど……。夜中だったからたまたま旅行に行ってて家にいなかったって人もいたみたいだから、ほら、シホちゃんのおうちもそうかもしれないわよ」

おかあさんはそういうけれど、私はその日何回か電話を繰り返した。
変わらず、繋がらなかった。

***

団地の事件のことを知ってから、3日たった。
初日は何回もかけたけど、次の日はなんだかかけられなかった。
もしやたらと電話の音が響いて迷惑だったらどうしようと思ったから。

あの団地、わりと音が響いて怒鳴り声も笑い声も筒抜けだった。
だから、シホちゃんが後から怒られたりしたらどうしようって。

携帯が光る。
メール?
ちがう、これ着信だ。

【シホちゃんち】

飛びついて画面を何度も押す。

「もしもし?」
「シホちゃん!?」
「……残念でした。シホちゃんじゃありません」

え?
おばさん、こんな声だっけ?

「シホちゃんのお母さんでもないよ」
「じゃあ、誰なんですか……」

番号はシホちゃんのお家のはずなのに、喋っているのは知らない人ってこと?

「名前はおいといて。ねえ、きみ、ハナエさん?」

わたしは電話を落としそうになった。
どうして私の名前知ってるの?
しほちゃんちの電話のアドレス帳?

「ねえ、黙ってないで教えてよ。ハナエさんの携帯でしょ? この番号」
「そうですけど、あなた誰なんですか」

怖い。
わたしの知らない人。

「なんだ、合ってんじゃない」
「あなたの名前も教えてください」
「えー、別に適当にあだ名つけてくれていいよ」

電話の向こうの相手は、まともに受け答えしてくれない。

「じゃあ……」

私は周りを見渡す。
変なあだ名つけてやろうと思ったからだ。
でも、妙な持ち物なんて別になくて、とっさにいってしまった。

(続く)