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【谷間の歌会】小村雪岱とサビアン 牡羊座2度

「サビアンシンボルとその解釈にリンクする季語や和歌」を好き勝手に発表する、サビアン研究会「谷間・オブ・サビアン」の月一歌会のお題「牡羊座2度」のサビアンについての個人的あれこれ。

今回は、最近何かと話題で私も大好きな「小村雪岱」を取り上げます。

小村雪岱(こむらせったい)
明治20年(1887年)3月22日
埼玉県川越市生まれ
大正から昭和の戦前期にかけて
本の挿絵や装幀、舞台装置などで活躍した美術家。

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小村雪岱28歳のとき、泉鏡花の『日本橋』の装幀を手がけたことがきっかけで、それ以降 泉鏡花の多くの著書の装幀を担当するようになり一躍有名になりました。雅号の「雪岱」も泉鏡花から与えられています。

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(泉鏡花「註文帳」/『愛染集』)

“鏡花本”の装幀は大胆なレイアウトや色使いのものが多く、どれも素晴らしいのですが、私が雪岱の作品の中で一番好きなものが「おせん 雨」という新聞小説の挿絵になります。

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現代でも十分おしゃれな構図と、洗練された雰囲気、計算された余白の美しさなどから、私は小村雪岱のことを多分天秤座だろうと予想していました。彼は創設されたばかりの資生堂意匠部(現 宣伝・デザイン部)の一員でもあり、「資生堂書体」も彼を中心に設計されたので、画家というより、デザイナーというイメージが強かったこともあったので。

しかし、私の予想は見事に外れました。彼は春分を過ぎてまもなく生まれた「牡羊座」だったのです(出生時間不明)。

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牡羊座に太陽、水星、金星、火星と個人天体が4つもあります。
ただ、この4天体の真向かいには天秤座11度(眼鏡越しに学生たちをじっと見つめる教授)の天王星がでーんと鎮座していて、この天秤座天王星の影響がかなり強く、私に彼を天秤座っぽいと思わせたのかもしれません。

この4天体の詳しい度数(数え)は以下の通り。

太陽・水星 2度「モノマネ芸人が友人たちを笑わせている」
火星 9度「水晶球を見つめて集中している占い師」
金星 28度「かねてより親しんできた幻想をこっぱ微塵にした人に、群衆が喝采を送る」

雪岱は鏡花の幻想的な言葉や作品に惹かれていたということもあり、鏡花の海王星が雪岱の金星と合であることも面白いですが、ここでは太陽と水星の「牡羊座2度」にフォーカスしたいと思います。

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◆牡羊座2度

●サビアン

モノマネ芸人が友人たちを笑わせている
(A comedian entertaining a group.)

●対抗サビアン
天秤座2度:第六の人類の光が第七へと姿を変えた
(The light of the sixth race transmuted to the seventh.)

●鏡像(対)サビアン
牡羊座29度:天の聖歌隊が宇宙的ハーモニーを歌い上げる
(A celestial choir singing.)

●ドデカテモリー
牡羊座

【この度数のポイント】
・生まれたばかりの赤ちゃんの最初の模倣
・目の前にあるものの特徴を捉えて引き出すことによって対象を理解する(モノマネ)
・言語を獲得する前に、身体性を介して生きている

小村雪岱は東京美術学校で下村観山に学び、卒業後に入社した國華社では古画の模写に従事しています。この「模写(模倣)」という動作を繰り返すことで名画の良さや特徴を理解して、自分のスタイルに昇華していったのではないかと思いました。

そして、最大の謎。
どこが「牡羊座」っぽいんだろうと考えたときに、彼の作風の特徴の一つでもある「直線」に、私は牡羊座らしさを感じました。

例えば、小村雪岱の「おせん 縁側」(上)という作品は、鈴木春信の「夜更け」(下)という作品の構図や作風を参考にしたと言われていますが、2作品の与える印象は似て非なるものかと思います。

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小村雪岱の作品からは無駄な描写が一切排除され、余白を生かした構図がこちらの視線を誘導するような潔さがあります。そして、この粋な雰囲気を醸し出しているものこそが、シャープで迷いのない「直線」に表れているのではないかと思うのです。

その直線の美しさを感じるものに、「雨」というモチーフも忘れてはいけません。

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不思議と雪岱の雨には、じめっとした湿り気を感じません。きっと蟹座や蠍座なら、もっと水が下に溜まってぬかるんだ描写をするかもしれない。

「雨」の描写一つを取っても、サインらしさがでるものなのかもと思いました。

最後に、この辺りの季語に「春雨」を選び、同タイトルがついた小村雪岱の作品をご紹介して締めるとします。

春雨(はるさめ)
春に降る雨の中でも
細やかに降り続く雨のこと。
一雨ごとに木の芽や花の芽がふくらみ
生き物たちが活発に動き出す。

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(小村雪岱/春雨)


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