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「この世へと生まれたことが出発だ」

世界が大きく変わろうとしている今、3年前にダイアログ・イン・ザ・ダーク東京の外苑前会場がクローズしたときのことが思い出されます。
あの日のことが鮮やかによみがえるのは、あの日を歌という砂糖漬けにしたからでしょう。

  慣れ親しんだ大切な場を離れる時が来た
「出発」

そこは真っ暗な大海原
さぁ、旅に出よう!
コンパスの針は読めない
導かれる星もみえない
月の満ち欠けも知らない

でも、ほら!声が聞こえる
力強い励ましとそのぬくもり
勇気を出して進もう!
みえない新しい星を見つけるまで
失うということは悲しみではありますが、終わりと始まりは隣り合わせ。私どもは、今回のキャッチコピーと同じように新たなチャレンジがきたと捉え直し、スタッフ一同力を合わせ次の場に向かう旅立ちの準備をしています。

先が見えない今の日本。明るい希望が持てないと感じる人も多くいることを肌で感じています。そこで今回、外苑前会場最後となるコンテンツテーマは「出発」としました。

今の私たちに必要なのは対話と思い込みからの解放と一歩踏み出す勇気。そして「ありがとう!」の言葉と「助けて」と言える勇気と「助けるよ!」と声をかけることのできる思いやり。

3年前の歌を、いま、なつかしく、せつなく、祈りを籠めて仕上げました。

*  *  *  *  *

アイスティーの氷のようなドアチャイム鳴らしてドアはひとを容れたり

風を待つこころに友を待つロビー ソファの赤に浅く座りぬ

シーリングファンが織りなす影模様うつろうひかりにさやぐこころは

立待人、居待人いて出立(しゅったつ)を控えるロビーは月のしづけさ

視覚には頼らず暮らす案内人「暗闇のエキスパート」と呼ばる

九十分呼びあうための名を決める サザエ、波平、わたくしはフネ

笹の葉の匂いの濃さを頼りつつ笹の尖りをよけてゆきたし

櫂として白杖いっぽん携える闇に漕ぎ出すからだは舟で

「ああ、右も左もわからない」という声をめざしぬ星の代わりに

踏まぬよう踏まれぬようにかける声、フネ進みます、フネしゃがみます

山小屋の地図をさわれば折目ありこの山道を行きし先人

山小屋に端居して聴くあざやかに向こう岸から寄せるひとの声

寝転べばきこえるくらやみの呼吸 まなうらに見るまぼろしの星

外国へ帰る波平、引っ越したばかりのサザエ、だれもが旅人

沈黙に身をあそばせてこんなにもゆたかな星をひととき生きる

「この世へと生まれたことが出発だ」八歳が言う闇を出るまえ


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