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シャンデリアの本質

 店にいて様々なお客さんと話すことは本当に素晴らしい経験です。自分が行動する範囲外のひとと、それもたくさんのひととゆっくりと話しをする機会なんて、普通の人々にはなかなか訪れないものです。
 先日、70歳代のお客様とお話しする機会があって、それはそれはとても興味深いものでした。

「あなた、私がシャンデリアのどこを見るか分かるかね?」

その方は私にそう質問しました。

私どもの店にはいわゆるシャンデリアが飾られています。最近の東京では様々なショップで見られます。シャンデリアは云わば、憧れ、非日常、手に入れたいキラキラ光るものの象徴、といったところでしょうか?
そのシャンデリアを見ながら質問したのです。

「そうですね。。どこでしょうか。。。」

私が答えに窮していると、

「ホヤだよ。」

その方はそうおっしゃいました。

「ホヤですか!? 材質、クリスタルとかですか?」

と、感心したように応える私の言葉をさえぎるように、

「違う違う。ホコリだよ。ホヤのホコリ。」

ハッとした私の顔が見る見るうちに赤くなっていくのを見たその方は優しく微笑み、こう言った。

「最近では偽物ばかりが増えて、しかも厄介なことに偽物ほど本物に見える。本来、シャンデリアは毎日ひとつひとつのホヤを掃除できる召使を雇えるものが持つものだ。それが出来ないでホコリをかぶったシャンデリアのいかに多いことか。。」

とても含蓄のあるお話しでした。

というわけで今日もお店のホヤをすべてきれいに掃除したのでした。

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