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「断食?絶食?」⑨たんぱく質を消化する「胃」編

胃の役割

「胃」はたんぱく質に特化した消化器官であり、「胃」は食べ物の貯蔵庫の役割もあります。
その他の三大栄養素の「糖質」や「脂質」、「食物繊維」は分解しません。 ただ、咀嚼しているとき唾液から「糖質分解酵素アミラーゼ」が分泌されるので、唾液のまとわりついた「ご飯やパン、野菜や乳製品の糖質部分」は「胃の貯蔵庫の役割」の時間内で一次消化が行われます。
※「唾液」については④「味覚」編と⑧「からだ」の中へ編をご覧ください。

消化の準備と胃の保護

胃は膨らむと最大で1.5リットルを貯蔵できます。 胃に食べ物が何もない状態では、水分が通る「100㏄」程度の細さになっています。 この水分だけを通す細さになっていなければ、胃自体が休まっていないことになります。 味の無い水などは、胃の内側を数秒から十数秒で通り抜け、十二指腸へ入り大腸までの間に吸収されます。
舌で味覚を感じると胃では「粘液」の分泌が始まり、胃での消化の準備が始まります(④「味覚」編 参照)。 胃は筋肉(たんぱく質)でできていますから、「粘液」の分泌が無ければ、その後、「壁細胞」から分泌される「塩酸」に、胃自体が耐えられず傷ついてしまいます。
その後の「ペプシノゲン」と「塩酸」の化合物「ペプシン」がたんぱく質分解酵素となり分解するわけです。
味覚を感じることは胃の表面の粘膜に保護液「粘液」を満たすためにも大切なことなのです。

味のある飲み物

・お茶は「苦味・甘味」
・コーヒーや紅茶は「苦味・甘味」
・味噌汁は「塩味・甘味」
・アルコールは「甘味・酸味・苦味」
・海水は「塩味・苦味」
・飲む酢は「酸味・甘味」
・果物・野菜ジュースとスムージーは「酸味・甘味・苦味」
など、嗜好品や栄養素たっぷりの飲み物があります。
テレビなどで栄養素になる良い食べ物や飲み物についてはよく聞かれます。 しかし、それはあくまでも「食べ物や飲み物」そのままの栄養です。 「からだ」に吸収される前に計測された栄養価です。 実際、どれだけ消化の段階で栄養素が分解され、栄養となり吸収するかはわかりません。
先人たちが食べてきた「食べ物や飲み物」は、彼らの冒険心と経験により選ばれ伝えられています。 スーパーで売っている「食べ物や飲み物」は、検査がされ安心して買うことができます。 当然、普段から慣れている「味」のものは、何も考えず手軽に飲んでも違和感を感じないでしょう。
味覚の「塩・酸・苦・甘」を感じず、胃の中に入るということはどういうことなのか、本来、「からだ」の中に入る食べ物は「咀嚼」され「唾液」の分泌を受け、「胃」の準備ができた後、「胃」に入り「消化や貯蔵」されることになっています。 
準備のできていない「胃」に「味のある飲み物」が入ることは特に気を付けたいものです。
昔と比べて「食材」の栄養や「薬」の開発、「医療技術」の進歩などがあり、「からだ」に対しての環境は格段に良くなっているはずです。
しかし、症状や病気は増えています。
「からだ」の臓器はすべて沈黙の臓器です。 限界を超えると症状が出てきます。 夜の食事を終え、睡眠までに最低でも胃の中を空にする必要があります。 「からだ」がリラックスできる時間を作るためには、⑦「寝るため準備」もかかせません。 そして、睡眠に入り「基礎代謝」によって「臓器の修復と調整」がおこなわれます。
「からだ」の機能を、私たち「人間」は当たり前に酷使しています。 「からだ」のことを知り、最低限必要な「基礎代謝」による「修復と調整」ができる環境を「からだ」につくってあげる生活をしたいものです。

ヘリコバクター・ピロリ菌と常在菌

「ヘリコバクター・ピロリ菌」は人間の「胃」に住んでいる「菌」です。
もともと「ピロリ菌」は土壌に住んでいたものが「からだ」に住むようになったのです。 最近の若い人たちの「胃」には「ピロリ菌」が住んでいない人も多くなってきました。 それは土壌や水の環境の変化です。 近代化が進みアスファルト、コンクリート、改良された農地、住む場所の都市化などが原因と考えられます。
そのほか「口」、「十二指腸」、「小腸」、「大腸」、「肛門」、「皮膚」に共存し住んでいる「常在菌」たちの数は「1億種類、100兆菌」ともいわれといます。 なぜ、「からだ」に「菌」たちが「共存」し住めるのでしょう。 「菌」たちとの関係は、良好でお互いに助け合っているということです。 よく「善玉」と「悪玉」に分けられる「菌」たちですが、「からだ」に住んでいる「常在菌」たちに「悪玉菌」なんていません。
なぜ、「菌」が悪さをするかのように言われるかというと、「臓器」に住んでいる「菌」にとって、「臓器」が元気であれば住み心地が「良い」し、元気がなく傷つき出血や炎症などあると住み心地が「悪い」くなります。 「常在菌」のなかでも「悪玉菌や日和見菌」と呼ばれる「菌」たちは、傷つき出血している場所や炎症部分にいたずらをしてしまうのです。 いたずらされる「臓器」にしたのは私たちの「生活」です。 「菌」のせいにするのは簡単ですが、「菌」には「菌」の役割あるから「からだ」に住むことができるのです。 特に「大腸の常在菌」には助けてもらっています。 「大腸」の「常在菌」は大切にするけど、ほかの「臓器」に住んでいる「菌」は除菌するなんて「馬鹿げた話し」です。

胃の消化と水の関係

胃の消化機能を十分に発揮するためには、自身を保護する「粘液」の分泌と食べ物の消化のための「酵素」の分泌がとても重要です。
そこで問題なのは食べ物を食べているときに、「水」や「飲み物」を「ごくごく飲む」ことです。
⑧「からだの中へ」編でもお話ししましたが、少し詳しくお話しします。
食事中に大量の「水や飲み物」を摂取すると保護液の「粘液」が薄まります。 そこに消毒や消化のために塩酸が分泌すると胃の粘膜が荒れてしまいます。 荒れた「胃」は食べ物の入っていない「食間」に「修復と調整」をします。 「胃」は食べ物が食道を通り、胃に入ると胃の上部が変形し食べ物を留めます。 最初から胃はきれいな湾曲をしていません。 粘液の分泌後、上部に食べ物を留めながら「塩素による消毒、酵素で分解、筋肉の蠕動運動でもまれ」少しずつ粥状にして胃の下部へ移動していきます。 そこに「ゴクゴクと水が大量」に入ってくると上部に留まっているはずの食べ物が下部へ落ちてしまいます。 胃は上部の「胃底部」で最大の消毒と分解をします。 上部の「胃底部」から塩素が出て消毒をする理由は「からだ」にとって毒となる食べ物を入れないようにするためです。 同じく上部の「胃底部」から酵素が出る理由は食べ物にまとわりつかせ、酵素の力と蠕動運動によって分解させるためです。 それが大量の水や飲み物により、食べ物は粥状になる前に下部に落ち、「塩素も酵素」も薄まり分解に長い時間を要し「胃自体」にかかる負担が増大していきます。
さらに3食を食べる生活をしているとすると、朝7時にご飯を食べ粥状になり十二指腸へ移動するのは11時ころ、12時に昼ご飯を食べ粥状になり移動するのは16時ころ、18時ころご飯を食べ移動するのは22時ころと、「胃」にとっては過密スケジュールが待っています。 残念ながらこの食間では思うような「修復と調整」はできないでしょう。 これを毎日続けているわけですから、「胃の粘膜」の傷みも治りきらず蓄積し、限界に達して「症状」が現れるのも納得できますし、「胃」に負担をかけるのは当たり前です。 
「水分」=「ビタミン・ミネラル」はとても大切です。 ただ、食事中は必要以上に「水」や「飲み物」を摂取する必要はありません。 

胃の形の変化と消化時間

上部が変形し食べ物を留めているうちに、消化酵素と胃の筋肉の蠕動運動によって、食べ物は少しずつ形を変えていきます。 この時の消化液は「胃底部」から分泌されますが、「胃底部」といっても、胃の底ではありません。 一番上部から分泌されています。 「胃の上部」が「胃底部」なのです。 噴門括約筋より上部であるところを、「胃底部」と付けた意味を考えてみると、この「胃」の仕組みを最初に分かった人は、良くこの名称を付けたなと考えてしまします。 
消化液の酸性度(水素イオン濃度)はpH1~pH2.5、そのうち塩酸の割合は0.2~0.5%で食べ物の消毒とたんぱく質を柔らかくします。 その後、主細胞からペプシノゲンが分泌され、塩酸と合成されることで「たんぱく質分解酵素ペプシン」になり「たんぱく質」を変性させます。
胃は蠕動運動を繰り返し、糖質は2、3時間、たんぱく質は3~5時間で粥状態になり、少しずつ胃の下部に貯められます。 粥状になった食べ物は1~10ml程度ずつ、幽門括約筋を通り十二指腸へ送られます。 十二指腸は消化器官の中で最大の分解能力をもち、最終の消化器官でもあります。 ここで胆嚢から胆汁、膵臓から消化酵素やホルモンの分泌を受けるとともに、胃の消化液によって酸性になっている粥状の食べ物を「からだ」に吸収させるため、膵液の緩衝作用により中性~弱アルカリ性に戻します。 
このあと十二指腸から小腸の間で吸収されて、門脈を通り肝臓へ運ばれ「からだ」に必要な物質に生まれ変わるのです。 脂質の一部はミセル(水に溶けやすい小さな油の粒)状態になり、リンパ管を通り乳ビ層で貯蔵されます。

リンパ学

「リンパ」については一番の得意分野です。 リンパ器官は名称を変え「からだ」の全てに関わっています。 例えば、臓器の外側には「リンパ節」が必ずあり、リンパ節内の「免疫細胞」によって「臓器」は守られています。 リンパの役割としては「免疫細胞としてからだを守る」「抗体の産生」「がん細胞のろ過」「脂質の貯蔵」「免疫細胞の育成」「間質液からの物質を輸送」など様々です。 今後もリンパ学に触れながら「からだ」の知識と「関節を使う」調整系の体操を一緒にお伝えしていこうと考えています。

次回は
「断食?絶食?」⑩「大腸」編です。

「からだ」には「肝臓、膵臓、腎臓、小腸、肺、心臓、脾臓、脳、神経細胞、脊髄、筋肉、骨、生殖器、乳房、眼球、鼻腔、口腔、耳腔、皮膚、血液、リンパ液、間質液、免疫細胞」などがあり、これらの器官や臓器と「生活」との関わりをたくさん知ってほしいと考えています。

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