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1月21日は杉田久女の忌日です。


    足袋つぐやノラともならず教師妻      杉田久女 



杉田久女(1890—1946)の代表作とされるこの句、
発表当時はずいぶんと批判をうけたようです。

戯曲『人形の家』の主人公ノラは、夫から一人の人間、
人格を持った一個人と認めてもらいたく、家を出ます。
そんなノラへの憧憬を、三段切の悪手を敢行してでも
訴える久女の胸の裡は、いかほどに烈しかったか。
大正十一年の作。女性は家庭に、という声の強かった時代です。


    久女忌を真直ぐにはやる紅き絲    梨鱗


久女は嫁ぎ先の小倉から、俳句の師である高浜虚子に
手紙をしたためました。
恋文ともとれ兼ねない文章は、
虚子主宰の俳誌『ホトトギス』に掲載されます。
1936年、久女は『ホトトギス』の同人から突然の除名。
理由は明らかにされていませんが、
虚子は「久女狂女説」を流布したとか。

虚子の門人・水原秋桜子は、虚子と訣別後『馬酔木』に
久女を誘いますが、彼女は頑なに断りました。

『人形の家』のノラは、夫の心に奇跡の起こることを
絶望しながらも期待します。秋桜子を断った久女にも、
久女なりの〝待つもの〟があったのでしょうか。
それが虚子を超えた、もっと大きなものに変化していたにせよ。


   雪中をぬくむまで立つれがノラ






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