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たんぼLOVE「5月」


  レバー引き泥きらきらと代掻機     梨鱗

冬のなごりのような寒い日も、4月まで。
5月になれば、さらりとした汗をかく季節です。
そんな変化に合わせるように、
田んぼもにわかに忙しくなりました。

田打ちの後、ずっとほうっておかれた田んぼに
とうとう今月、水が引き込まれました。
代掻きの始まりです。
(きたー!)

代掻き機を進めて、水と土を混ぜ合わせます。
じつにのろのろとしたスピードですが、
よく混ぜ合わせることで良い稲が育つのだとか。
代掻き機は、田打ちで活躍したトラクターの後ろに
電気で回転するすきを着けているらしいのですが、
素人なのでよく分かりません。
でも、運転手さんがレバーをひいて
ガチャッと鍬の歯が持ち上がると、
まぶしい泥が滴り落ちるのは分かります。

代掻き機のすすむ傍らで、畔の補修をする人もいます。
泥と水を混ぜ合わせ、畔に載せては長靴でとんとん踏みます。
疎水は田に引き込まれるまでは透明ですが、
田を出るとさらさらとした泥水です。
いい仕事をした後のきれいな顔のような泥水です。

代掻きを終えた田んぼは、なみなみと水をたたえます。
代田といいます。
夜にもなると、満足げにまどろんでいる表情に見えます。
早速たくさんの蛙がやって来て、鳴き囃しているではないですか。
それをねらって鷺が慎重に脚をはこびます。
水の真ん中には、置き物にでもなったような鴨のシルエットが。
ようやく田んぼにも、にぎやかな季節がやって来ました。

  
  水張る夜ああまんぷくと田のこゑが

  代田の灯ささめきあへば星までも


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