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団地ロマン

なぞなぞです。
 
大きな四角の中に、ちいさな四角が入って
それぞれの小さな四角の中に、さらに小さな四角が入って
その中では人が恋したり、泥棒したりしています。
なーんだ?
 
答えは、団地の各お住まいの中のテレビ。
なんて冗談はさておき。
 
団地のならぶ一帯を散策するのは
ちょっとした冒険気分です。
小さな四角に区切られた箱の中に住む人は
ドールハウスの住人のようです。
あるいは化粧箱の中で
それぞれの仕切りに納まったお菓子のようでもあります。
さながら分厚いビスケットや
金口から絞り出したラングドシャのように
澄まし顔で暮らすのです。
 
そんな団地ファンのぼくにこの秋、事件がありました。
ある一棟の団地が、取り壊されることになったのです。
残念に思いつつも、解体ファンでもあるぼくは
その様子を数日に分けて見に行きましたよ。
 
現場には鉄板の囲いがあるのですが、一部が透明になっています。
瓦礫が積まれていく様子が、そこからうかがえます。
もと前庭だったあたりには、野放図に生い茂った草花。
それらもついには土へと均されました。
 
川の近くの団地なので、一棟なくなると川原の景色が広々と開けます。
一仕事終えた人のすっきりとした顔に似ていなくもありません。
少し歩くと、すでに更地となった団地が他にもありました。
再開発の計画があるのだとか。
 
どんな建物が建つのでしょう。
また化粧箱のような背の低い団地だったら、いいのですが。
幾つものタワーマンションが立ち並ぶのは、いただけません。
川風はどこへ行ったらいいのでしょう。
夏から秋にかけて、川からの涼しい風が
この辺り一帯に心地よい夜を贈ってくれるのですから。
 
 
 団地と団地の建て替えにまつわるひととせを、俳句にしました。
 
 
     春
 
     マーガレット団地におやつ時の鐘     梨鱗
 
 
     夏
 
     立ち退けり青水無月の美しき日に
 
 
     秋
 
      黄花コスモス地をぶきように撃つドリル
 
 
     冬
 
     鉄をうつ天の響きや返り花
 
 
 
 



 
 
 
 

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