「付き合う」っていう関係性



「付き合おう」

この問いかけに対して、「はい」と言った瞬間、わたしと彼は、(形式的には)恋人同士になる。わたしには「彼氏」という存在がいることになって、わたしは彼の「彼女」という存在になる。


このよくわからない関係の曖昧さを感じた話を書こうと思う。


以前、マッチングアプリで出会った男性に、初対面で「付き合って」と言われたことがある。彼はとても話しやすいしいい人そうだな、と思ったけれど、特別好きだとは思わなかったので、それを伝えて、またあう約束だけをした。2回目に会ったときには手も繋いだしキスもした。2人で手を繋いで映画を観た。誰もが想像するようなデートだなと思った。そして彼は私にこう言った。

「これって付き合ってるってことじゃないの?」

この問いかけに対して、私はかなり困惑した。たしかに形式的には、付き合っている、カップルと呼ばれるような間柄の2人がするのと同じようなことをした。すれ違う人はみんな、私たちは付き合っていると認識していたかもしれない。しかし私は、彼と付き合っている、と認識した瞬間は一瞬もなかった。私は、あくまでも彼が手を繋いできたから手を繋いだと思っていたし、キスをしてきたから私もキスをした。それだけのことだと思っていた。彼のことが好きだからそんなことをしたわけではなくて、彼がそうしたがっていたから嫌と言わなかった、本当にそれだけだと思っていた。

形式的には「付き合っている」と同様のことをしていて、彼が私のことを特別だと思っていたとしても、私は彼のことを特別だとは思わなかった。いくら手を繋いでも、キスをしても、その先をしたとしても、それらをしたからといって彼のことを特別だとは思わなかったのである。

彼の好意を拒まない時点で受け入れてるのと同じことと認識する人もいるかもしれない。というかきっと彼自身が一番そう思っていたと思う。だけど私は、そういう表面的な行為なんて正直どうでもよかった。彼と付き合ってるとは一瞬も思っていなかったし、本当に特別でもなんでもないと思った。

結局なにが言いたかったかというと、彼と私には「付き合う」ということに対する認識の大きな違いがあったのだ、ということだ。彼は手を繋ぐとか、キスをするとか、そういうことをする、その行為自体が特別だと思っていたように思う。もちろん私のことを好きであるということもたくさん伝えてくれていたし、それは大前提でもあった。しかし私は、その行為なんてものは後付けでしかなくて、お互いのお互いに対する気持ちの特別さこそが、特別だと感じているのである。どちらか一方がどれだけ相手のことを特別だと思っていても、もう片方がそう思わなかったら付き合ってはいけないと思うのだ。片方の想いが強くて、付き合って、結果的にお互いに特別だと思い合える関係がこの世に存在することは知っている。しかし、わたしは、付き合うということはお互いがお互いにとって特別であることが一番大切だと思うので、そういうあやふやな関係のまま「付き合う」という関係性になるのは納得ができないのだ。


結局その彼と私は付き合うことはなかったが、わたしは本当に相手のことを誰も代わりになんてなれないような特別なひと、とお互い思えるような相手と「付き合う」をしたいと思った。 


















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