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広州市、各町内に総合高齢者福祉センター開設を推進

《福福の知りたい広州!vol.19》

【 広州市、各町内に総合高齢者福祉センター開設を推進 】

急速に高齢化が進む中国。
今日は、広州市の高齢者福祉関連の記事をとりあげてみました。

『廣州日報』2021年9月7日
「广州推动每个街镇建设至少1个综合养老服务中心」より

昨年10月、広州市は総合高齢者福祉センターの設置に関する行動計画を発表し、各地域で高齢者福祉を提供する多機能集約施設「颐康中心」の設置を推進している。

広州市増城区新塘镇に開設した「新塘镇颐康中心」は、増城区で最初のモデル施設であり、政府の出資で建設され、上海の有限会社が運営している。
この施設には、地域密着型サービス(デイケア、介護ステーション、高齢者食堂)、居宅サービス(居宅福祉サービスプラットフォーム、家事代行等)など多様な高齢者向けサービス機能が集約されている。

増城区新塘镇は、農村と都市にまたがる重要な区域に位置しており、この地で新たな高齢者福祉モデルを模索することは大きな意義がある。
「新塘镇颐康中心」は、町内の全ての高齢者に福祉サービスが行き届くよう、きめ細やかな「15分生活圏内での高齢者福祉」モデルを積極的に構築している。

次に、高齢者福祉にボランティア活動をより効果的に結びつけるにはどうすればよいか?

瑶田颐康サービスステーションでは、より多くのボランティアが高齢者福祉に関与できるよう、「時間銀行」の活用を通し、「高齢者福祉+ボランティア活動」という広州式循環モデルを打ち出している。

サービスステーションの時間銀行においては、ボランティアが公益活動に参加して仮想時間コインを取得すると、コイン取得者はコインを使ってサービスを受けることができる。ボランティアは、サービス提供者であり、同時に将来のサービス受益者でもあるのだ。

このような取り組みをとおして参加者の積極性を引き出し、より多くの人々が高齢者福祉を理解し、活動に関与することを促している。

【 福福より 】

高齢者福祉とボランティアを結びつける「時間銀行」を活用した取り組みを、興味深く感じました。

「時間銀行」とは、ボランティアとして高齢者にサービスを提供した時間が蓄積され、将来自らが高齢者となりサービスが必要となった時に、蓄積分の時間を他人から助けてもらう仕組みとのこと。高齢化が進む中、相互扶助の考え方に基づき、現在中国で導入が進んでいるとのことです。

広州でライチ局長が、高齢者福祉関連で興味深いと感じた施策や仕組みなどはありますでしょうか?

【 ライチ局長より 】

福福さん、今回は広州の高齢者施策についてですね。

ご存知のように、中国は長年に渡る一人っ子政策の影響で、今後、少子高齢化が急速に進みます。高齢者問題は、環境問題に並び、中国でも重視されている社会課題の一つです。

当然、広州市政府も、高齢者施策の充実に乗り出しておりまして、今回取り上げてもらった「総合高齢者福祉センター」などもその一環になります。

私の理解では、少し前まで、こうした高齢者向けのサービスというのは不動産開発の面で注目されていました。というのも、不動産開発のプロジェクトを立ち上げる際に、高齢者向けの事業計画が入っていると評価が高かったり、新たなマンション建設の際にも「介護医療完備」という謳い文句が目を引いたからです。

しかしながら、これは日本でも同じですが、様々なサービスを付加すると、その分価格の上昇を招きます。こうした物件に住める人や高度なサービスを享受できる人は国民の一握りということになり、行政的な課題を解決するには至りませんでした。

そこで、中国では、現在、在宅介護を中心に据え、公共によるサービスの充実を図っています。その際、広州市政府は、地域の高齢者サービスの拠点になる施設として「総合高齢者福祉センター」を各町内に設置している、という流れになります。

記事にも出ているように、こうした施設では、「公建民営(政府が設置し、民間が運営する)」という方式が取られていることが多いようです。

これは、富裕層向けの高齢者サービス以外の高齢者サービスでは、収益化が難しく、通常のビジネスよりも資金の回収に時間がかかるため、多くの民間事業者がゼロから事業に参入することを躊躇っていたという背景があります。

そこで、施設の設置コストを政府が負うことで民間事業者が負うコストを削減し、更に補助などの優遇策を加えることで事業環境を整え、民間事業者によるサービス向上を期待したものです。

こうした方式は、全国各地で広がっておりまして、チェーン店のような形で、省を跨いだ大規模展開を行う運営事業者も現れているということです。

なお、中国では、一部の大都市で、介護保険の導入は検討されておりますが、現状、広州では始まっていません。こうしたハード面の整備に加えて、サービスの標準化や、それに伴う介護士の人材育成、彼らのサービスの質をはかる資格制度、更に、介護士のその後のキャリアパス創設など、高齢者サービスを支えるソフト面での整備も進めています。

中国政府当局も、当然、高齢化社会先進国である日本の現状はベンチマークしているはずですから、日本で上手くいっている事例、上手くいっていない事例、こうしたことを踏まえて制度設計をしているものと思います。

ただ、こうして高齢者向けサービスをめぐる施策が安定してくるなら、今後、日本の事業者が豊富な経験を活かして参入してこれる余地が生まれてくるのではないか、という気がしています。

他にも「時間銀行」とか、色々とキーワードが出してもらっていますけど、今回はそこまで行き着けませんでした…。すみません!

でも、高齢者施策は、大きな話なので、きっとまた取り上げることがあるでしょう!


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