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増加する心理的虐待~面前DV~

こんにちは、ヨウです。

今回は、心理的虐待についてについて、関係資料をもとに、児童福祉司としての意見を書き記していきたいと思います。



心理的虐待とは?

心理的虐待は、児童虐待の防止等に関する法律で、以下の様に定義されています。

四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

要点をまとめると

・児童に対する暴言

・児童に対する拒絶的な対応(無視など)

・夫婦間のDVの目撃

・その他心理的外傷を与える言動

こういったものが、心理的虐待といわれます。この、心理的虐待の通告が増えている現状が、近年の「虐待相談件数の増加」に繋がっているとも言えます。




児童相談所が「心理的虐待」で、子どもを一時保護する基準

児童相談所は、みなさんご存知の通り、一時保護をする機能があります。これは、児童を「家庭に帰すこと、心身に危険が及ぶ可能性が高い」という前提があります。

この前提は、かなり曖昧なもののように感じられるかもしれません。当然、心理的外傷というものは、目には見えません。だから、児童相談所は、ある程度基準を持っておかないといけません。

私が働いていた児童相談所で基準にしていたのは、「子どもの発言」です。子ども自身が「家に帰りたくない」と明確に答えれば、保護せざるを得ません。児童相談所は、子どもを守る機関ですので、子どもが帰宅を拒否しているのに「家に帰りなさい」と突っぱねることは出来ません。(一部、走いう拒否的な対応をしてしまった児相もあるみたいですが…)


ただ、幼い子ども(特に小学校低学年くらいまで)は、どんなひどい暴言暴力を受けていたとしても、親と離れることを嫌うため、心理的虐待で一時保護することはほとんどありません。親から、どんなにひどいことを言われたとしても、子どもが「家に帰りたい。」と言うので、児相としては「何かひどいことがあったら、学校や児相に伝えてね」と言って、次の通告を待つ他ないのです。

子どもの意志を尊重することは、子どもの判断能力に依存することに等しいので、この点が、幼い子どもが虐待死に追い込まれてしまう根源なのか、と感じています。



心理的虐待の裏に、その他の虐待が隠れている

子どもが、家庭に対して拒否的な反応を示しているとき、多くの場合、別の虐待が陰に隠れている可能性が高いのです。

児相の対応ケースで言えば、子どもが「家に帰りたくない」と言い、一時保護したのち、心理士と面談を繰り返すと、実は実親や養親から暴力や性被害を受けていた、というパターンが多いのです。(あくまで経験則ですが)

そういう実態を踏まえると、身体的虐待や性的虐待が、子どもの心にダメージを与えてしまうことは、言わずもがなわかっていることでしょう。




「面前DV」という虐待

また、最近では、「夫婦間の暴力暴言等のDVを、子どもが目撃すること」も心理的虐待に当たり、このことを「面前DV」と言います。


警視庁のリンクには、面前DVが子どもに与える影響として、以下の例を挙げています。

親や兄弟姉妹にも暴力をふるう
友達とうまく遊べない
ケンカが多くなる
学校や保育園に行きたがらない
自分なんて必要がないと思う
だんだんと良好な人間関係がもてなくなる社会参加がしにくくなる


面前DVによって、学校での他害行為や不登校、引きこもりなどが起きる可能性が高くなるのです。



面前DVの増加で、逼迫する児相業務

DVは持っての他ですが、夫婦喧嘩を目撃することも、面前DVに当たります。

児童相談所には、「面前DV」として、警察から通告を受けることが増えてきています。虐待相談対応件数が近年増加傾向にあることの裏に、「面前DVの通告の増加」が、深くかかわっています。

夫婦喧嘩が白熱して、夫婦間で暴力暴言をしてしまい、警察の通報に

特に、警察が通報を受けて、その場に子どもがいた場合、「面前DV」として、通告が上がってきます。しかし、大抵の場合、喧嘩をした夫婦のどちらかに連絡をして指導するのみ、と処理される場合が多いため、正しい対応が出来ているかというと、疑問が残るかもしれません。


しかし、児相は、それ以外にも案件を多数抱えており、面前DVの指導に時間をかけられないのも、現状でしょう。夫婦間の困りごと等を児相が解決することが難しい(DV自体は、児相管轄ではない)ため、面前DVは繰り返される可能性が高いのとも言えます。

私は、気になる家庭として、面前DVが起きた家庭について、役所の母子支援部門に連絡することが何度かありましたが、「わかりました。連絡が来たら、対応します。」ぐらいの返答しかもらえないこともありました。こうなると、面前DVは、「夫婦間の問題」として、児相が関わることができなくなってしまいます。関わりたくても、関わりを終了させないといけないこともありました。難しいところですね。



夫婦喧嘩になっても、子どもの前では、喧嘩しないことが大切

面前DVを起こしてしまわないようにするためには、親自身が、「子どもの前で喧嘩をしない」と決める必要があります。そうすることで、カッとなった気持ちを抑えて、お互い落ち着いて、子どもが寝た後に、しっかりと話し合うことができます。

しかし、これは理想論かもしれません。これができる夫婦は、日本ではまだまだ少数派かもしれません。夫が実権を握り、家父長制度的な文化が根強い日本ですから、おそらくこの話し合い自体が開催されない家庭も多いのではないのでしょうか。

夫婦で「二人で子どもを育てよう」としっかり話し合うことは、子どもの健全な成長のために必要なことですから、是非、結婚する前、又は子どもが生まれる前に、しっかりと話し合っていただきたいと思います。



終わりに~私の経験~

私の父は、母に対してDVをしていました。大人になってから聞いた話だと、母にも落ち度はあるようですが、暴力で従えようとしていた父の行動は、間違っていると思っています。

また、力の強い父が怒り、母を攻撃する場面を目撃し続けた私は、暴力に対する拒否反応がひどく強かったのです。友達同士で喧嘩になっても、私は相手と戦う前に泣いて塞ぎこんでいました。そして、友達と上手くコミュニケーションが取れず、いじめられっ子になったのです。それだけが原因とは言い切れませんが、そういう影響も、少なからずありました。

少なくとも、面前DVによる影響を受けた人間がここにいますから、今、子どもを育てている親御さんには、「夫婦喧嘩は、子どもに見えないところで」という事を、しっかりと伝えたいと思います。




併せて読みたい

↓ 児童虐待に関する文献研究 -子どもの虹情報研修センター


↓ DVの与える影響について

↓ 日本の虐待増加について


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